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佐野日大6年越し“桜色旋風”再現ならず…苦難続いた主将に海老沼監督が涙「18歳の子どもにとってすごくつらい経験をした」

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立ち尽くす佐野日大高MF江沢匠映主将

[1.4 選手権準々決勝 佐野日大 0-4 岡山学芸館 等々力]

 激闘に次ぐ激闘を制してのベスト4入りで“桜色旋風”と呼ばれた2016年度以来、6年ぶりの全国挑戦を果たし、再びベスト8まで歩みを進めた佐野日大高だったが、6年前の再現は果たせなかった。試合後、取材エリアに立った海老沼秀樹監督は苦難を乗り越えた主将に想いを寄せ、涙ながらに「一生懸命にやってくれた」と努力の跡を称えた。

 今大会の佐野日大は初戦となった2回戦で奈良育英高を1-0で破り、3回戦では優勝候補の一角と目された履正社高を1-1で迎えたPK戦の末に撃破。履正社戦はロングスローからのシュート1本で先制点を奪い切り、5-4-1の守備ブロックで強力攻撃陣を抑えており、そのスタイルはMF野澤陸(甲府)らを擁して4強入りを果たした前回出場時の躍進も彷彿とさせた。

 しかし、その成績にはあと一歩届かなかった。岡山学芸館高との準々決勝は立ち上がりから防戦一方で時間が進み、前半12分に二次攻撃からミドルシュートを食らって失点。「力のあるチームなので0-1は仕方ない。後半新たに仕切り直していこうとやっていた」(海老沼監督)というが、後半13分に鮮やかなトリックセットプレーから失点し、事実上の決着がついた。

「セットプレーの練習はしていたけどやられてしまった。2点取られてしまったので点を取りに行こうということで、そんなに悪くなかったので前から圧をかけていった」。そうしてリスクをかけた結果、終わってみれば0-4の大敗。指揮官は「0-1でも残り20分で勝負を仕掛けていこうという考えでいた。2点目が少し残念な形で取られてしまった」と2失点目を悔やんだ。

 追い上げの時間帯ではベンチスタートのMF江沢匠映主将(3年=クマガヤSSC)を投入し、ロングスローから戦況を打開しにかかった。江沢は夏のインターハイを新型コロナウイルスの影響で欠場し、選手権は右膝半月板損傷の影響で満足なプレーができず、大きな苦難を乗り越えての全国舞台だった。

 試合後取材の終盤、江沢の起用について言及しようとした指揮官は「彼は……」と言葉を詰まらせ、涙ながらに努力を称えた。

「彼は関東大会まで一生懸命やってくれていた中、インターハイでコロナがあって出られなくて、選手権で怪我をしてしまって県大会も思うようなプレーができなくて、彼自身も心が折れたこともあったけど、キャプテンとして最後にこの舞台に戻ってきてくれた」

「私たち大人が考える以上に18歳の子どもにとってすごくつらい経験をしたと思う。それでも最後、チームのために出てくれた。まだ0-2だったので彼が入ってチームを活性化することによって勝機が見出せると思って送り出した。ただ勝負の世界は甘いものじゃないけど、一生懸命にやってくれたと思う」

 そんな指揮官の言葉に江沢は「海老沼監督にはありがたいという思いしかない。県予選でも今日でも他の選手を使ったらもっと得点の香りがするかもしれないのに自分を使ってくださった。3年間厳しくしてくださって、最後に寄り添ってくれる良い監督だった。期待に応えられなかったけど、海老沼先生が一番自分の気持ちを理解くださっていた。ありがたいという気持ちでいっぱい」と真っ赤な目で感謝を語った。

(取材・文 竹内達也)
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