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PK失敗、仲間との別れに涙。柏内定の日体大柏FWオウイエ・ウイリアムは結果で恩返しする

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日体大柏高の柏内定FWオウイエ・ウイリアム。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.4 全国高校選手権準々決勝 東山高 0-0(PK4-3)日体大柏高 駒場]

 切磋琢磨してきた仲間たちとの別れ。ピッチ、ロッカールームで流し切ったはずの涙が、取材エリアで再び溢れ出ていた。チームメートの存在についての質問を受けた日体大柏高(千葉)FWオウイエ・ウイリアム(3年)は、「……とても苦しい時期もあったんですけれども、みんなと言い合って、とても…色々な面で成長できたし、日体大柏を……選んで…良かったなと思えるメンバーでした」。190cmFWは最高学年になってブレイクし、柏内定、そして初の選手権で8強。可能性を秘めた大器は大きな成長を遂げ、貴重な経験も積んだ3年間を涙で終えた。

 もっともっと成長しなければならない。その必要性を感じるラストゲームだった。前半7分、右クロスに大外で反応したオウイエは190cmの長身と跳躍力を最大限に活かしたヘッド。圧巻の高さで頭に当てたが、ボールはヒットせずに左へ外れた。

 上手く試合に入れなかったことも影響したか、どこか熱くなってしまうシーンもしばしば。そのスピード、高さ、技術力によって前線でボールを収めて起点となり、キック精度の高さを活かしてチャンスメークするオウイエだが、この日はなかなか良さを表現することができない。

 チームは主導権を握る展開。だが、1点が遠い。その中でオウイエは後半3分にカウンターからチャンスを迎え、続く15分には右サイドを一気に抜け出してゴール方向へドリブル。PAへ侵入すると、最後は左足へ持ち替えてファーのゴールネットを狙う。

 だが、シュートは精度を欠いて左外へ。30分には浮き球を巧みに胸で落としてFW吉田眞翔(3年)のシュートを演出するシーンがあったほか、38分にはPAでの間接FKから左足を振り抜く。

 だが、シュートは東山DFの執念のブロックにあい、PK戦へ。「自分は5番目で試合を決めたいと思っていた」とキッカーを志願した背番号15の左足PKは、止められてしまう。その直後に東山5人目のシュートが決まり、敗退が決まった。

「真ん中に蹴っていれば絶対に決まっていた。もっと自信を持って蹴れば良かったなと思います」とオウイエ。エース、そしてプロ内定のストライカーとして決意を持ってPKスポットに立ったが、チームを勝たせることはできなかった。

 川崎F U-15時代は主に左SB。怪我もあってU-18チーム昇格を逃したオウイエは指導者同士の繋がりなどがあり、「凄く良いサッカーをするチーム、自分のプレースタイルにも合うんじゃないか」と日体大柏への進学を決断した。

「日体大柏で頑張ってプロになろう」という思いを抱いて入学したが、「1、2年で全然出れなくて悔しくて……」という2年間。それでも2年時冬のFWコンバート、J3クラブへの練習参加で得た自信をきっかけに才能が開花した。日体大柏と相互支援契約を結んでいる柏の評価を勝ち取り、9月に新加入内定。そして、「自分が全試合決めて、チームを全国に連れて行きたい」という強い気持ちを表現し、5試合中4試合でゴールを決めて日体大柏初の選手権出場へ導いた。

 今大会は3回戦でインターセプトから素晴らしい決勝ゴールを決めるなど、インパクトも残した。一方でこの日の敗戦、悔しさはさらなる進化の糧に。元柏DFの根引謙介監督は「彼は次、プロの舞台に立って勝負していかないといけないと思うので、彼だけじゃないですけれども今日経験できたことが次のステージへの財産になりますし、それを次のステージでそれぞれが頑張ってもらえればと思います」とオウイエや3年生たちにエールを送っていた。

 エンジンの大きさは間違いない。だが、本人は技術力も人間力の部分ももっと成長しなければならないことを自覚している。プロのステージへ向けて「まだまだ足りない部分が多いんで覚悟を持ってやっていきたいです。自分の得点で救えるような選手になりたいですし、今日も一本のチャンスで仕留められていれば勝った訳で、もっと引っ張っていける選手になっていきたいです」。同時に誓った日体大柏や柏への恩返し。「強い覚悟を持って、結果で今後恩返ししていきたい」。柏で活躍する姿を必ず恩師や仲間たちに見せる。

(取材・文 吉田太郎)
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