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「師王が優勝すると言ってくれた」試合後に数秒間の抱擁…青森山田が神村学園に託した王者のプライド

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青森山田を牽引したFW小湊絆(3年)

[1.4 選手権準々決勝 青森山田 1-2 神村学園 等々力]

 真っ向勝負の末、青森山田高神村学園高に敗れた。試合後、両選手たちが思いを交わす。FW小湊絆(3年)は一番最後にFW福田師王(3年/ボルシアMG内定)に近寄り、数秒間の抱擁。「神村が、師王が、優勝するからと言ってくれた」(小湊)。前回王者はその誇りを託し、大会を去った。

 白熱の一戦となった。青森山田が前半34分に先制。小湊がボールを奪い切り、敵陣内に入り込む。折り返しをMF中山竜之介(3年)がゴールに決め切った。「ゴール前で仕事をするということはずっと言われていた。あの時間帯で出せたのは本当によかった」(中山)。前半終盤の先制ゴールという最高の形で後半に折り返した。

 しかし、神村学園の勢いに圧される。後半16分にFW西丸道人(2年)に同点ゴールを決められると、同20分には福田に試合をひっくり返された。主将のDF多久島良紀(3年)は「率直に実力不足でした」と肩を落とす。1-2で5年連続のベスト4進出を逃した。

 多久島は全国3冠を果たした昨年度のレギュラーだった。しかし、選手権予選後に長期離脱の負傷。選手権の全国制覇はピッチ外で見守った。今年6月に復帰したが、夏に再び負傷。怪我とともに歩んだ高校サッカーだった。「一年間キャプテンとしてピッチで戦えなかったことが本当に申し訳ない。後輩たちには優勝で、笑顔で終わってほしい。無失点で終えられなかった自分自身に原因がある。次のステージで生かしたい」。涙ながらに言葉を絞り出した。

 試合終了後、王者・青森山田の選手たちは神村学園の選手に思いを託した。各々がその場を離れたとき、最後に抱擁したのは小湊と福田。「おれらの2連覇という目標はここで途絶えました。だけど神村が、師王が、優勝するからと言ってくれた。神村が優勝してくれれば、自分たちがここまで一年間戦ってきたものが少しは報われる。そういう意味で、神村にこの先の勝利を託しました」(小湊)。

 小湊は自身の力不足を認める。「FWの差で負けた。福田師王選手はワンチャンスをものにしました。だけど、おれは2回も3回も外した。結局そこの差で負けたと自分は思っている。試合を決定づけられるFWに、一人いるだけでチームの勝敗が左右されるような、そんな選手になりたいです」。王者の血を引く選手たちは敗れてもなお、さらなる成長を誓った。

(取材・文 石川祐介)
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