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選手たちを信じた指揮官「大丈夫、できるんだ」…遊学館が鵬学園をPK戦で下して決勝の舞台へ!!:石川

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PK戦を制した遊学館高が決勝進出

[10.26 選手権石川県予選準決勝 遊学館高 2-2(PK5-3) 鵬学園高 ゴースタ]

 第103回全国高校サッカー選手権石川県予選準決勝が26日に行われ、遊学館高鵬学園高が激突。2-2(PK5-3)で勝利した遊学館が11月2日に行われる決勝に駒を進めた。

 勝ち切れない試合が続いた今年の遊学館はプリンスリーグ北信越2部を7位で終え、県リーグ降格が決定。GK中村藍ノ介(3年)は「勝てない時期はチームの雰囲気も悪かった。練習中も雰囲気よくやろうと言っても、誰も声を出さない。声が出てもすぐ止まって良くなかった」と振り返る。

 だが、苦しんだ日々は決して無駄ではなかった。「日頃からプリンスリーグのレベルでやれるのと県リーグの強度やプレースピードでやるのでは成長が全く違う。自分たちが県リーグに落としてしまったので、せめて後輩たちには全国の舞台を経験させたかった。3年生で話し合った。3年生がまず変わろう、後輩たちが付いてきてくれるような3年生になろうって」。そう口にするのは中村で、選手権予選では逞しい姿を見せている。

 準決勝の鵬学園戦で見せた姿も勇敢だった。これまでは我慢強く守ってカウンターからゴールを狙う戦い方が遊学館の定番だったが、今大会は違う。「選手たちにとっては最後の大会なので思い切って自分たちを信じてやろう。守りだけで終わらせるのではなく、1点でも多く取りに行こうと話していました」(岸玲衣監督)。

 闇雲に長いボールを蹴るのではなく、DF佐藤凜太郎(3年)を中心とした3バックからビルドアップ。MF李孝樹(2年)やMF矢口倫道(3年)など中盤の選手が落ち着いて相手のプレスを剥がす場面も見られた。チームのベースとなる守備でも岸監督が「暗号」と評する約束事をチーム全体で徹底し、セカンドボールを相手に譲らない。

 ある程度、思い通りにゲームを進めながらも1点が奪えずに前半を終えたが、後半7分にはチャンスが訪れる。MF永盛太己(2年)からのパスを李がゴール前で受けると「いつもは無理やりパスを受けて取られる場面が多かったので、ちゃんと見えた山本唯吾(3年)にワンタッチで落とした」と素早くパスを選択。受けた山本はDFに阻まれたが、こぼれ球を李が冷静に決めて遊学館が先制した。

 先手を奪ってからは反撃に出た鵬学園の勢いに飲まれてしまう。29分にFW山田春斗(3年)にPKを決められて同点にされると、直後の30分にはMF猪谷悠太(3年)に得点を許し、一気に追い掛ける立場となった。それでも諦めずにチャンスを伺うと38分には途中出場のMF大川怜太(1年)が倒されてPKを獲得。このチャンスを佐藤が決めて追い付いた。

 2-2で迎えた延長戦でも決着がつかず、PK戦までもつれたものの、遊学館はキッカーの5人全員が成功。対する鵬学園は4人目のキックが枠を捉えることができず、勝敗が決まった。

 今年の遊学館は素直な選手が多いという。素直なゆえに自信を付ける時は一瞬で、自信をなくす時も一瞬。指導者にかけられた言葉を真に受けて、重く受け止めすぎる時期もあったという。プリンスリーグ北信越2部で勝てない時期も長く、システムや選手を変えて浮上のきっかけを探ったが、試合を重ねるうちに岸監督には気付いたことがあったという。「色んなことを変えてみたけど、大事なのはそうしたことより選手を信じることだった。私らが選手を信じなかったら、選手は動かない。大丈夫、できるんだという想いで声をかけていました」。

 この日も逆転されても選手なら勝てると信じていた。だから、勝った時の喜びは大きく岸監督は「しんどかったけど、この子たちの笑顔を見るとやってきて良かったと思えました」と笑みを浮かべる。決勝の舞台でも選手への信頼は揺らがない。岸監督は必ず選手が初めての選手権に連れていってくれると信じている。

(取材・文 森田将義)

●第103回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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