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[MOM4870]遊学館DF佐藤凜太郎(3年)_3バックの中央を任される163cmの主将…指揮官も「全てが完璧」と絶大な信頼

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遊学館高のキャプテンマークを託される佐藤凜太郎(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.26 高校選手権石川県予選準決勝 遊学館高 2-2(PK5-3) 鵬学園高 ゴースタ]

 ピッチ内外での存在感は絶大で、彼がいるのといないのではチームが大きく変わる。遊学館高の岸玲衣監督が「凜太郎は一緒に生活していたらわかるのですが、全てが完璧。自分を我慢できるというか、チームのために動ける」と評するのが、主将を務めるDF佐藤凜太郎(3年)だ。

 指揮官が一目置く理由も準決勝のプレーを見ればよく分かる。本職はボランチだが、選手権前からポゼッションスタイルに切り替えたチームに合わせて、3バックの中央でプレー。「いつも蹴ってしまう所でも1個繋ごうと意識していた。ボール回しで落ち着かすことができれば攻撃にも繋がると思ったので、簡単に相手にボールを渡さないよう心がけていました」。そう振り返る通り、試合序盤からビルドアップの起点として奮闘を続ける。

 身長は163cmと小柄ではあるが、CBの本業である守備でも大きな穴は見られない。「自分の長所は守備の予測。センターバックとしては小さいのですが、相手とぶつかる前に対応できていたので、守備に貢献できているのかなと思う」と胸を張ったようにパワフルなアタッカーが揃う鵬学園に対しても互角に渡り合った。

 前半は佐藤を中心にボールを動かして主導権を握り、後半7分には先制点をマークしたが、後半半ばに連続失点。試合の流れを鵬学園に持って行かれるも、「逆転されて“負けてしまうのでは”と思った瞬間もあった。でも、、みんなで声を掛け合って『俺らはやってきたから大丈夫』と言い合えていた」。

 追い掛ける展開を強いられてからも諦めずにチャンスを伺い続けると、38分には途中出場のMF大川怜太(1年)がPA内で倒され、PKを獲得。勝敗を大きく左右するキッカーを務めた佐藤は「PKを蹴るのは怖かったのですが、気持ちで押し込みました」ときっちり決めて同点に持ち込んだ。迎えたPK戦でもキッカーの1番手という重圧を跳ね除け、きっちり成功。大役を果たした佐藤は「近年、遊学館は決勝に行けていなかったので率直に凄く嬉しい。前回、鵬学園とインターハイで対戦した際はラストワンプレーでPKになって負けてしまったので、ラストまで気を引き締めていた。最後まで気を抜かないように全員で意識して声をかけていました」と笑みを浮かべた。

 今でこそチームを支えるキャプテンとして奮闘できているが、今年は苦しい時期が長かった。新チームが発足したばかりの1月に、練習で膝の半月板を損傷。インターハイ予選もプリンスリーグ北信越2部の前期も試合に出られなかった。キャプテンの座はチームメイトに託し、仲間がプレーしやすいように雑用を率先してこなしてきたが、怪我のブランクは大きい。

 プレーできない期間は筋トレを頑張っていたが、復帰後は体重が減少。8月には実戦復帰したものの、試合感覚はなかなか戻らず、9月以降はチームが勝てない時期が続いた。当時についてGK中村藍ノ介(3年)は「凜太郎が戻ってきた当初は試合勘がなくて、ミスが多く『なんでこいつが出ているんだろう』みたいな雰囲気もあった」と振り返る。

 ただ、本調子を取り戻せばこれほど心強い選手はいない。「試合勘が戻ってきたら、彼の声やさばきですごく助かるようになった。チームが落ち込んだ時や下を向いていた時に凜太郎の声でチームがもう1回前向きになれる。凄く頼りにしています」。そう話すのは中村だ。

 決勝で対戦する金沢学院大附高は「凄く上手いチーム」(佐藤)で準決勝同様に簡単な試合にはならないだろう。だからこそ、ピッチ内外での貢献度が高い佐藤の存在が鍵になるのは間違いない。「金沢学院は去年の3年生がインターハイで負けているので、その借りも返したい」との意気込みを果たせるか注目だ。

(取材・文 森田将義)

●第103回全国高校サッカー選手権特集
森田将義
Text by 森田将義

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