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[選手権]インハイ予選決勝のPK失敗は「これからも忘れることはない」。青森山田MF杉山大起は覚悟の決勝で積極的に仕掛け続けてリベンジ達成!:青森

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青森山田高の切り込み隊長、MF杉山大起(3年=RIP ACE FC出身)

[11.2 選手権青森県予選決勝 八戸学院野辺地西高 1-2 青森山田高 カクスタ]

 ボールが来たら、果敢に勝負すること。苦しい時こそ、声を出すこと。そして、全身から発するエネルギーで、仲間にパワーをもたらすこと。自分にできることは、自分が一番よくわかっている。このチームを代表してピッチに立つからには、いつだって120パーセントの力を出し尽くすだけだ。

「自分は上手いプレーヤーじゃないことはわかっていますし、足元の技術で沸かせることは考えていなくて、どれだけ声を出せるかだったり、どれだけ『オレは行ってやるぞ』という姿勢を見せられるかだったり、どれだけクロスやコーナーを獲って終われるかを、いつも意識してプレーしています」。

 アグレッシブな全力疾走に強い想いを乗せる、青森山田高(青森)の切り込み隊長。MF杉山大起(3年=RIP ACE FC出身)はインターハイでの悔しい経験を糧に、チームの勝敗を左右するだけの存在感を、日に日に強く纏いつつある。


「終わったことは仕方がないですけど、インターハイで負けてしまったという事実は確かにあるので、自分がここでチームを引っ張るぐらいのプレーをして、しっかり結果を出したいなって。それは得点とかではなくて、チームに貢献できるプレーをしようと思って挑みました」。

 全国切符を懸けた一戦への決意を、杉山はそう口にする。11月2日。第104回全国高校サッカー選手権青森県予選決勝。県29連覇の懸かった青森山田は、6月のインターハイ予選決勝で苦杯を嘗めた八戸学院野辺地西高とのリターンマッチを迎えていた。

 前回対戦での敗戦は、チームにとっても絶対に忘れることのできない経験だったが、杉山にとっては個人的にもリベンジを果たしたい理由があった。もつれ込んだPK戦。相手の2人目のキックをキャプテンのGK松田駿(3年/岡山内定)がストップしたものの、4人目で登場した杉山のキックは枠を外れてしまう。最後は7人目で決着がつき、青森山田は県内での公式戦連勝が418でストップ。25年にわたって手にし続けてきた夏の全国切符を獲り逃す。

 松田は杉山の変化をはっきりと感じてきたという。「あの負けからかもしれないですけど、杉山は前線からの守備もそうですし、最近では自分でチャンスメイクするシーンが増えてきたので、自分で突破するという意志が強くなったなと感じています」。5か月の時を経て、巡ってきた名誉挽回のチャンス。並々ならぬ意欲を携え、ファイナルの舞台へ歩みを進めていく。

 前半3分。DF菱田一清(3年)からパスを受けた杉山は、右サイドから中央へ積極的に仕掛け、そのままフィニッシュ。DFのブロックに遭った軌道は枠を外れるも、チームにとってのファーストシュートに、この試合への強い気持ちを滲ませる。

 ただ、前半10分に先制点を挙げたのは八戸学院野辺地西。1点を追い掛ける青森山田は、なかなか中盤でセカンドボールを拾い切れず、アタックの回数も増えてこない。最初の40分間はリードを許したまま、ハーフタイムへと折り返す。

 インターハイ予選と同じ展開に、嫌な記憶が甦らなかったわけがない。だが、同じ相手に2度も負けるわけにはいかない。「相手のディフェンダーが『縦を切れ』『縦を切れ』と言われていて、自分が警戒されていることはわかっていたんですけど、それでも縦に行きたかったですし、正木さん(正木昌宣監督)からも『コーナーを獲れれば十分チームは行けるし、クロスを上げても、ファウルでフリーキックをもらっても行けるぞ』と言われたので、縦を切られていても、とにかく自分は行こうと思っていました」。後半は杉山がさらなるアクセルを踏み込む。



 8分。MF斉藤雅人(2年)のパスから右サイドを駆け上がり、丁寧なクロスに飛び込んだFW深瀬幹太(3年)のヘディングはDFにブロックされるも、ようやく得点の匂いが漂うサイドアタックを。10分。今度は右サイドからアーリークロスを送り込み、斉藤のシュートは相手GKのファインセーブに阻まれたものの、2つの異なる質のクロスで、杉山がチャンスを演出してみせる。

 突破の質、クロスの質を使い分けることは、ここまで開幕から全試合に出場しているプレミアリーグでの日常から、意識してきたことだ。「パスやクロス、ドリブルも含めた判断のところには練習から取り組んできましたし、プレミアでいろいろなサイドバックと対戦して、そこで『このサイドバックだったらテンポを変えよう』とか考えられるようになってきました。今日のサイドバックは左利きだったので、カットインを見せながら、テンポをずらすことは意識していました」。

 19分。今度は右サイドをゴールライン際までえぐり切り、マイナスの折り返しからFW桑原唯斗(3年)が放ったシュートはGK正面。21分。一度は縦を切られつつ、それでも再び縦に持ち出し、上げ切ったクロスに深瀬が合わせたヘディングはGKを破るも、相手DFがスーパークリア。得点には至らなかったが、背番号16のチャンスメイクが確実にチームへ希望の灯をともす。

 青森山田の執念は実る。26分、菱田。34分、深瀬。2つのゴールで鮮やかに逆転。常に右サイドを上下動し続け、全力を出し切った杉山は37分に交代で下がると、笑顔の正木監督に迎えられ、残りの時間はベンチから勝利を祈り、ピッチを見つめ続ける。

 3分間のアディショナルタイムが過ぎ去ると、優勝を告げるホイッスルが鳴り響く。「インターハイで自分がPKを外して負けてしまったことを忘れたことはありませんでしたし、これからも忘れることはないんですけど、そのおかげでここまで粘り強くサッカーができているのかなと思っています。今はホッとしていますね」。自分たちの代で掴んだ青森制覇。スタンドのチームメイトと歓喜を分かち合う杉山の表情にも、最高の笑顔が弾けた。



 主力としての地位を手繰り寄せ、シビアなゲームを戦ってきたからこそ、伝統のエンブレムがあしらわれたこの緑のユニフォームに袖を通す意味を、より痛感している。「OBの人たちがここまで歴史を創ってくれて、正直言えばエンブレムは重いですけど、先輩たちもやっぱり気持ちで戦っていたと思うので、自分もそれに負けないように、少しでもチームに貢献できればと思って、気持ちでプレーしています」。

 昨年度のキャプテンを務めていた小沼蒼珠(明治大)を彷彿とさせる坊主頭は、ちょうど1年前の新人戦から続けているという五厘刈り。「別に大きな理由はなくて、やる気を見せようと思ってこうなりました(笑)」とは本人だが、常に全力で戦う姿勢とその風貌も相まって、ピッチ上でのインパクトも抜群だ。

 夢にまで見た冬の全国大会。大阪出身の杉山は旧友との再会も含めて、晴れ舞台への期待をこう口にする。「大阪も興国が勝ったということで、RIP ACEの仲間たちがメッチャいるのは刺激になりますし、選手権でも自分の縦突破が通用すると信じて、1つ1つ練習から頑張っていきたいと思います。ここからチーム一丸となって、より成長していきたいですね」。

 どんな相手に立ちはだかられても、絶対に縦へと仕掛け、とにかく行けることころまで行き切ってやる。青森山田の右サイドをホットゾーンへと昇華させる、チームきっての元気印。杉山大起はどれだけ跳ね返されても、どれだけ倒されても、そのたびにさらなるパワーを充満させて、何度でも、何度でも、逞しく起き上がる。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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