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[選手権]先制点を導くロングスローにスーパークリアも。八戸学院野辺地西DF山下海藍は涙を拭いてもう一度みんなと「新たな歴史」を創る!:青森

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青森山田の強力アタッカーに個でも十分対抗した八戸学院野辺地西高DF山下海藍(3年=トリアス七戸出身)

[11.2 選手権青森県予選決勝 八戸学院野辺地西高 1-2 青森山田高 カクスタ]

 すべての力を出し切った手応えは、自分の身体の中へ確かに残っている。最強のライバルを相手に戦い切った80分間。それはもちろん勝ちたかったし、悔しくなかったはずはないけれど、もう切り替えるしかない。ここからは、まだ少しだけ残っている高校サッカーを、最後までやり切ってみせる。

「こういう結果になったのは悔しいですし、試合が終わった時は泣いてしまったんですけど、全力でプレーできたと思っています。今日も自分は全部の力を出し切ったので、もうここで切り替えて、プリンス参入戦に向けてやっていきたいです」。

 夏の青森王者として今大会に臨んだ、八戸学院野辺地西高(青森)のディフェンスラインにそびえ立つセンターバック。DF山下海藍(3年=トリアス七戸出身)の気合あふれるパフォーマンスは、ファイナルの舞台でも相手の全国レベルのアタッカー陣を十分すぎるほどに苦しめた。


 全国切符を巡る第104回全国高校サッカー選手権青森県予選決勝。9年連続でこのステージへと勝ち上がってきた八戸学院野辺地西が対峙するのは、もちろん今年も青森山田高。だが、インターハイ予選ではとうとう絶対王者の牙城を崩し、悲願の青森制覇を果たしたため、相手が例年以上に気持ちを入れて向かってくることは、容易に想像できた。

「夏に全国に行ったので、『冬も全国にもう1回行って、本物になろう』と言いながらチームとしてやってきました」と山下。昨年度のプレミア王者・大津高と対戦した夏の全国が大きな経験になったことは言うまでもないが、冬の全国出場はまったくの別物。ここを目指して厳しい練習と向き合ってきただけに、オレンジの戦士たちは青森山田相手の“連勝”を目指して、県内最後の1試合のキックオフを迎える。

 立ち上がりは上々だった。前半10分に山下が右サイドから得意のロングスローを投げ入れると、そのこぼれ球をMF小向蓮翔(2年)がゴールネットへ叩き込む。まさに青森山田のお株を奪うような、背番号4の“一投”がチームに貴重な先制点を呼び込む。

 さらに、山下は本職でも圧巻のプレーを披露する。プレミアリーグでも存在感を示している深瀬幹太と桑原唯斗の青森山田2トップに対して、地上戦でも空中戦でも互角以上に対抗。本人も「前半は本当に自信を持ってピッチに入りましたし、9番(深瀬)も11番(桑原)も、身長もスピードもあって、プレミアでもやっているような選手でしたけど、『絶対やらせない』と思っていたので、気持ちでしっかり勝てたなと思います」と手応えを感じていたという。



 1点をリードして入った後半。「このまま追加点を獲って、40分後に必ず自分たちが優勝しようという声かけをしていました」。残された時間は40分間。相手がギアを上げてくることはわかっていた。それでもセンターバックでコンビを組むDF中野渡琉希(3年)と、守護神のGK喜村孝太朗(3年)と呼吸を合わせ、迫りくるアタックを1つずつ、丁寧に凌いでいく。

 スペシャルなプレーが飛び出したのは後半21分。左サイドからクロスを上げられ、桑原のヘディングは喜村を破り、誰もが同点ゴールを覚悟した瞬間、カバーに入っていた山下は間一髪のタイミングで掻き出すスーパークリア。場内からもどよめきが巻き起こる。



 ところが、25分にコーナーキックから同点弾を献上。そこからは「1回みんなで集まって、『0-0になっただけだから、切り替えていこう』と言っていたんですけど、追加点を獲れなくて、山田さんのゲームになってしまったなと思います」と山下も振り返ったように、徐々に相手の勢いに飲み込まれていく。

 34分に逆転ゴールを奪われると、懸命に反撃を試みたものの、ファイナルスコアは1-2。青森山田に夏のリベンジを果たされる格好で、悲願の選手権出場には一歩届かず。タイムアップの瞬間。4番のセンターバックはピッチに崩れ落ちた。

「いろいろな人に応援されて3年間やってきたので、申し訳ないという気持ちもありましたし、一番は勝ちたい気持ちがあったので、悔しくて涙が出てきました。全国に行けなくて本当に悔しいですね」。やり切った想いはある。でも、やっぱり勝ちたかった。悔しい。いろいろな人の顔が思い浮かんでくると、もう涙を止められなかった。




 ただ、激動の1年間はまだ終わっていない。八戸学院野辺地西は12月19日から開催される『プリンスリーグ東北プレーオフ』に出場することが決まっている。何度も跳ね返されてきたプリンス昇格の壁。もう山下の意識は、最後のチャレンジへと切り替わっている。

「チーム力は本当にこの1年で凄く伸びたなと思いますし、全員で1つのものに向かって全力を出すということをやってきたので、最後も全員で頑張りたいという想いが強いです」。

「自分としても最高な形で終わりたいと思っているので、プリンスリーグに絶対参入するという気持ちで、これからの残された時間を頑張っていきたいですし、自分はディフェンダーなので、無失点にこだわりながら、失点しないで勝ちたいなって。今のこのチームなら絶対に勝てると思っています」。

 まだ新たな歴史を創るチャンスは残されている。ならば、この最高の仲間と一緒にそれを掴み取るだけ。八戸学院野辺地西の守備陣を力強く牽引する、豪胆で屈強なセンターバック。山下海藍はみんなで笑顔のラストマッチを飾るため、今までのキャリアのすべてを懸けて、守るべきゴールに強固なカギを掛け続ける。




(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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