[選手権]不足していた「心の準備」「感謝」。インハイ3位の尚志は帝京安積に苦戦も、延長勝利で福島決勝進出
[11.3 選手権福島県予選準決勝 尚志高 2-1(延長)帝京安積高 仙台大学サッカーフィールド郡山]
インターハイ全国3位の尚志が苦しみながらも5連覇に王手――。第104回全国高校サッカー選手権福島県予選準決勝が3日に郡山市の仙台大学サッカーフィールド郡山で開催され、尚志高が延長戦の末、帝京安積高に2-1で逆転勝ち。5大会連続の決勝進出を決めた。尚志は11月9日の決勝で学法石川高と戦う。
尚志は今夏のインターハイで最高成績タイとなる3位に入り、プリンスリーグ東北では首位を快走。選手権予選5連覇を目指すチームは今大会初戦を10-0で制している。この日の先発はGK赤根啓太(3年)、DF木村心貴(3年)、西村圭人主将(3年)、松澤琉真(3年)、榎本司(3年)、MF小曽納奏(3年)、阿部大翔(3年)、日比野修吾(3年)、村田柊真(3年)、FW臼井蒼悟(3年)、根木翔大(3年/U-17日本高校選抜候補)だった。


一方の帝京安積(福島県1部リーグ)は9大会連続の4強入りだが、過去7大会はこの準決勝で敗退。8大会ぶりの決勝進出をかけた一戦の先発はGK平山円生(3年)、DF今野晃大(2年)、宮崎理士(3年)、長埜凌介主将(3年)、MF千葉孝優(3年)、山本暖人(3年)、阿久津雄大(3年)、峠舘永愛(3年)、近悠磨(1年)、阿久津尚哉(2年)、FW佐藤恭亮(3年)の11人で構成された。


立ち上がりから尚志がボールを保持する展開。だが、帝京安積は最前線の佐藤や山本らが前から制限をかけることと、チーム全体で横へスライドしながら守ることを徹底する。尚志はその中でボールを繋いでみせるが横パス、バックパスが増えてしまうなど後ろにやや重くなってしまう。
それでも19分、根木がDFと入れ替わる形で右中間を抜け出して右足シュート。21分にも根木が右へ抜け出し、その横パスから臼井が右足を振り抜く。さらに23分には榎本の右クロスを村田が狙うも、帝京安積GK平山が連続セーブ。また、臼井がボールを大きく運んで右の日比野がカットインシュートを放つシーンや、守備でも利いていた阿部や木村がインターセプトから速攻を狙うようなシーンもあったが、ゴールを破れない時間が続いた。




仲村浩二監督からはバックパスではなく、斜め前方へのパスやドリブルを求める声が飛ぶ。だが、ミスも出て帝京安積を呑み込むことができない。対する帝京安積は奪ったボールを佐藤や近が収め、峠舘らが係わる形で攻め返す。
そして36分、学法石川は敵陣右サイドで佐藤がセカンドボールを拾うと、山本と近がポイントを作り、右SB長埜がロングクロス。すると、阿久津雄が左からGK前に走り込み、頭で合わせた。チームファーストシュートが決まり、1-0。尚志は40分、右の榎本から小曽納を経由する形でボールを動かす。最後は臼井が決定的な右足シュートを放ったが、これも帝京安積GK平山に阻まれ、1点ビハインドで前半を折り返した。




帝京安積は後半開始から阿久津尚をFW鈴木珀(2年)へスイッチ。対する尚志は榎本と日比野をDF中村快生(2年)とMF若林衣武希(2年)へ2枚替えする。さらに9分には村田とMF大熊瑠空(2年)を入れ替えた。
尚志は仲村監督が「ボール持ったら全部行ける。この大会はもうどんどん行けるから。点数取ってくれれば、どこかで化けてくれると思っているんです」と期待のMF大熊が鋭いドリブルを連発。右SB中村やMF若林の交代出場組も積極的に崩しに係わり、サイドを攻略してラストパスに持ち込むような回数を増やしていく。


全体的にシュート精度を欠いてしまう中、17分には根木のロングスローを解禁。ライナー性のボールをゴール前に連続で入れるなど、相手にプレッシャーをかける。すると22分、臼井が敵陣中央左寄りの位置でFKを獲得。これを小曽納がグラウンダーの右足FKで右隅に決め、同点に追いついた。




畳み掛ける尚志は26分、根木の右ロングスローを阿部が頭で狙うが、ゴールカバーの帝京安積FW鈴木がクリア。帝京安積は28分に近をMF高橋暖人(3年)へ、尚志も阿部をFW岡大輝(3年)と入れ替えて2点目を目指す。
帝京安積は左の阿久津雄がドリブルで仕掛けたほか、交代出場の高橋が右サイドからクロスへ持ち込む。だが、尚志はGK赤根や松澤、西村の両CBを中心に2本目のシュートを打たせない。一方の帝京安積もCB千葉を中心に中央で分厚い守り。勝ち越し点を許さず、延長戦に持ち込んだ。


尚志は延長前半7分、木村の左クロスを岡が頭で折り返し、中村が決定的なヘッド。だが、GK平山が至近距離からの一撃を弾き出し、ここでも尚志の前に立ちはだかる。それでも、尚志は8分、木村の右CKをニアの根木が頭で合わせて勝ち越しゴール。この試合初めてリードを奪った。




帝京安積の小田晃監督は「(全体的に)ラッキーな展開だったと思います」と振り返る。尚志が自分たちでリズムを崩していた部分もあったが、想定していた以上に相手の攻撃を弾くことや前線でボールを収めることができたことを認めていた。相手を十分に苦しめていたが、「選手の層とか、途中からもうちょっと上がるような選手が出てこないとなって、やっぱり思うので」。前に出てよく戦ったものの、チャンスの数を増やすことができず、セットプレーから2失点。延長後半、MF谷川翔哉(2年)とMF上杉拓未(2年)を同時投入して反撃を試みたが、2点目をもぎ取ることはできなかった。


勝った尚志の仲村監督は試合後、ロッカールームで普段は見せないような厳しい叱責。「選手権では初めて」というほどの熱量で「チームワークも何もない!」「心で戦わないから!」という言葉を選手たちにぶつけていた。
また、指揮官は「平常心でやるとかって言っても、もう全く平常心でできない」。選手たちは練習から指摘されていたことが、改善できず、苦しいゲームになってしまった。主将の西村は「ほんと監督の言う通りですし、やっぱり『心の準備』っていうのができてなかったかなと思います。この1週間ずっとそのことを言われていて、選手権のところで1人1人がちょっと浮ついたところだったりっていうのがあったのかなって思います」とコメント。試合ではチャレンジする姿勢を欠いたり、個人プレーが増えてしまう部分もあった。
そして、西村は「このピッチに立つ上で、『感謝』っていう言葉をテーマにしていたんですけど、やっぱ応援席で応援してる、メンバーに入れなかった選手だったり、このスタンドで応援してくれた保護者だったり、地域の皆さんっていうところの感謝のところがやっぱできていなかったかなと思います。(決勝へ向けて、)しっかり心を整えて、安定させて、しっかりこのピッチに立つっていうのはしっかりやっていきたいなと思います」と誓った。
チームは今夏のインターハイで優勝歴を持つ桐光学園高(神奈川)やプレミアリーグ勢の帝京長岡高(新潟)を破って6年ぶりの準決勝進出。優勝校の神村学園高(鹿児島)に逆転負けを喫したものの、攻守に層が厚く、選手権で夏冬通じて初の決勝進出、日本一を勝ち取る可能性もある世代だ。小曽納は「自分たちは、(2018年度選手権の)全国の舞台で染野(唯月)さんたちが3位を取った代に憧れて入学した人が多いと思うんで、自分たちも県の決勝でそういう人に影響を与えるような試合をして、それで全国でもそういう試合が何回もできるように、まず今週いい準備して、来週勝てればいいかなと思います」と宣言。自分たちの課題を見つめ直し、決勝では見る人に影響を与えるような試合をして5連覇を達成する。
(取材・文 吉田太郎)
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インターハイ全国3位の尚志が苦しみながらも5連覇に王手――。第104回全国高校サッカー選手権福島県予選準決勝が3日に郡山市の仙台大学サッカーフィールド郡山で開催され、尚志高が延長戦の末、帝京安積高に2-1で逆転勝ち。5大会連続の決勝進出を決めた。尚志は11月9日の決勝で学法石川高と戦う。
尚志は今夏のインターハイで最高成績タイとなる3位に入り、プリンスリーグ東北では首位を快走。選手権予選5連覇を目指すチームは今大会初戦を10-0で制している。この日の先発はGK赤根啓太(3年)、DF木村心貴(3年)、西村圭人主将(3年)、松澤琉真(3年)、榎本司(3年)、MF小曽納奏(3年)、阿部大翔(3年)、日比野修吾(3年)、村田柊真(3年)、FW臼井蒼悟(3年)、根木翔大(3年/U-17日本高校選抜候補)だった。


インターハイ全国3位の尚志
一方の帝京安積(福島県1部リーグ)は9大会連続の4強入りだが、過去7大会はこの準決勝で敗退。8大会ぶりの決勝進出をかけた一戦の先発はGK平山円生(3年)、DF今野晃大(2年)、宮崎理士(3年)、長埜凌介主将(3年)、MF千葉孝優(3年)、山本暖人(3年)、阿久津雄大(3年)、峠舘永愛(3年)、近悠磨(1年)、阿久津尚哉(2年)、FW佐藤恭亮(3年)の11人で構成された。


帝京安積は8大会ぶりの決勝進出を目指した
立ち上がりから尚志がボールを保持する展開。だが、帝京安積は最前線の佐藤や山本らが前から制限をかけることと、チーム全体で横へスライドしながら守ることを徹底する。尚志はその中でボールを繋いでみせるが横パス、バックパスが増えてしまうなど後ろにやや重くなってしまう。
それでも19分、根木がDFと入れ替わる形で右中間を抜け出して右足シュート。21分にも根木が右へ抜け出し、その横パスから臼井が右足を振り抜く。さらに23分には榎本の右クロスを村田が狙うも、帝京安積GK平山が連続セーブ。また、臼井がボールを大きく運んで右の日比野がカットインシュートを放つシーンや、守備でも利いていた阿部や木村がインターセプトから速攻を狙うようなシーンもあったが、ゴールを破れない時間が続いた。


尚志FW臼井蒼悟はこの試合、一人でシュート5本を放った


帝京安積GK平山円生はファインセーブを連発した
仲村浩二監督からはバックパスではなく、斜め前方へのパスやドリブルを求める声が飛ぶ。だが、ミスも出て帝京安積を呑み込むことができない。対する帝京安積は奪ったボールを佐藤や近が収め、峠舘らが係わる形で攻め返す。
そして36分、学法石川は敵陣右サイドで佐藤がセカンドボールを拾うと、山本と近がポイントを作り、右SB長埜がロングクロス。すると、阿久津雄が左からGK前に走り込み、頭で合わせた。チームファーストシュートが決まり、1-0。尚志は40分、右の榎本から小曽納を経由する形でボールを動かす。最後は臼井が決定的な右足シュートを放ったが、これも帝京安積GK平山に阻まれ、1点ビハインドで前半を折り返した。


前半36分、帝京安積MF阿久津雄大が先制ヘッド


チームのファーストシュートでリード。スタンドの仲間たちと喜ぶ
帝京安積は後半開始から阿久津尚をFW鈴木珀(2年)へスイッチ。対する尚志は榎本と日比野をDF中村快生(2年)とMF若林衣武希(2年)へ2枚替えする。さらに9分には村田とMF大熊瑠空(2年)を入れ替えた。
尚志は仲村監督が「ボール持ったら全部行ける。この大会はもうどんどん行けるから。点数取ってくれれば、どこかで化けてくれると思っているんです」と期待のMF大熊が鋭いドリブルを連発。右SB中村やMF若林の交代出場組も積極的に崩しに係わり、サイドを攻略してラストパスに持ち込むような回数を増やしていく。


尚志は2年生MF大熊瑠空のドリブルが利いていた
全体的にシュート精度を欠いてしまう中、17分には根木のロングスローを解禁。ライナー性のボールをゴール前に連続で入れるなど、相手にプレッシャーをかける。すると22分、臼井が敵陣中央左寄りの位置でFKを獲得。これを小曽納がグラウンダーの右足FKで右隅に決め、同点に追いついた。


後半22分、尚志はMF小曽納奏が直接FKを決めて同点


チームを救う一撃に喜びを爆発
畳み掛ける尚志は26分、根木の右ロングスローを阿部が頭で狙うが、ゴールカバーの帝京安積FW鈴木がクリア。帝京安積は28分に近をMF高橋暖人(3年)へ、尚志も阿部をFW岡大輝(3年)と入れ替えて2点目を目指す。
帝京安積は左の阿久津雄がドリブルで仕掛けたほか、交代出場の高橋が右サイドからクロスへ持ち込む。だが、尚志はGK赤根や松澤、西村の両CBを中心に2本目のシュートを打たせない。一方の帝京安積もCB千葉を中心に中央で分厚い守り。勝ち越し点を許さず、延長戦に持ち込んだ。


帝京安積CB千葉孝優(左)が粘り強い対応
尚志は延長前半7分、木村の左クロスを岡が頭で折り返し、中村が決定的なヘッド。だが、GK平山が至近距離からの一撃を弾き出し、ここでも尚志の前に立ちはだかる。それでも、尚志は8分、木村の右CKをニアの根木が頭で合わせて勝ち越しゴール。この試合初めてリードを奪った。


延長前半8分、尚志はFW根木翔大が決勝ヘッド


この1点が決勝点になった
帝京安積の小田晃監督は「(全体的に)ラッキーな展開だったと思います」と振り返る。尚志が自分たちでリズムを崩していた部分もあったが、想定していた以上に相手の攻撃を弾くことや前線でボールを収めることができたことを認めていた。相手を十分に苦しめていたが、「選手の層とか、途中からもうちょっと上がるような選手が出てこないとなって、やっぱり思うので」。前に出てよく戦ったものの、チャンスの数を増やすことができず、セットプレーから2失点。延長後半、MF谷川翔哉(2年)とMF上杉拓未(2年)を同時投入して反撃を試みたが、2点目をもぎ取ることはできなかった。


尚志が苦しみながらも決勝進出
勝った尚志の仲村監督は試合後、ロッカールームで普段は見せないような厳しい叱責。「選手権では初めて」というほどの熱量で「チームワークも何もない!」「心で戦わないから!」という言葉を選手たちにぶつけていた。
また、指揮官は「平常心でやるとかって言っても、もう全く平常心でできない」。選手たちは練習から指摘されていたことが、改善できず、苦しいゲームになってしまった。主将の西村は「ほんと監督の言う通りですし、やっぱり『心の準備』っていうのができてなかったかなと思います。この1週間ずっとそのことを言われていて、選手権のところで1人1人がちょっと浮ついたところだったりっていうのがあったのかなって思います」とコメント。試合ではチャレンジする姿勢を欠いたり、個人プレーが増えてしまう部分もあった。
そして、西村は「このピッチに立つ上で、『感謝』っていう言葉をテーマにしていたんですけど、やっぱ応援席で応援してる、メンバーに入れなかった選手だったり、このスタンドで応援してくれた保護者だったり、地域の皆さんっていうところの感謝のところがやっぱできていなかったかなと思います。(決勝へ向けて、)しっかり心を整えて、安定させて、しっかりこのピッチに立つっていうのはしっかりやっていきたいなと思います」と誓った。
チームは今夏のインターハイで優勝歴を持つ桐光学園高(神奈川)やプレミアリーグ勢の帝京長岡高(新潟)を破って6年ぶりの準決勝進出。優勝校の神村学園高(鹿児島)に逆転負けを喫したものの、攻守に層が厚く、選手権で夏冬通じて初の決勝進出、日本一を勝ち取る可能性もある世代だ。小曽納は「自分たちは、(2018年度選手権の)全国の舞台で染野(唯月)さんたちが3位を取った代に憧れて入学した人が多いと思うんで、自分たちも県の決勝でそういう人に影響を与えるような試合をして、それで全国でもそういう試合が何回もできるように、まず今週いい準備して、来週勝てればいいかなと思います」と宣言。自分たちの課題を見つめ直し、決勝では見る人に影響を与えるような試合をして5連覇を達成する。
(取材・文 吉田太郎)
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