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[選手権]常にさらされる「選手権王者」というプレッシャーの重みと価値。前橋育英は前橋商との「群馬クラシコ」を制して全国連覇への挑戦権を獲得!:群馬

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前橋育英高は「群馬クラシコ」を制して全国連覇への挑戦権を獲得!

[11.16 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 前橋商高 正田醤油スタジアム群馬]

 日本一のチームを倒そうと立ち向かってくる相手の高いモチベーションは、この1年で嫌というほど味わってきた。それでも、負けるわけにはいかない。このタイガーカラーのユニフォームへ袖を通した選手たちに課せられるのは、どんな試合でも勝利一択。再び国立競技場の表彰台でカップを掲げる日を見据えて、1つずつ結果を積み重ねていくだけだ。

「今年も全国に出るということは、まず前橋育英として絶対に成し遂げないといけないことでしたし、去年の先輩たちにも優勝してもらったので、みんなで優勝旗を返しに行くという意味でも、ここでその責任を持って、しっかり全国に繋げられたのは良かったです」(前橋育英高・竹ノ谷優駕)

 慌てず、騒がず、ウノゼロ勝利で県5連覇!16日、第104回全国高校サッカー選手権群馬県予選決勝が行われ、前年度の全国王者・前橋育英高と5年ぶりの全国を狙う前橋商高が対峙した『群馬クラシコ』は、前半40+1分にMF柴野快仁(3年/今治内定)が挙げた先制ゴールがそのまま決勝点となり、前橋育英が1-0で勝利。全国連覇への挑戦権を手に入れた。


 試合の構図は早々にはっきりする。「前商さんも守備が持ち味なので、前半はたぶん集中した守備が続くというところで、自分たちはマイボールの時間を多くして、慌てずに攻めていこうということを話していました」とキャプテンのMF竹ノ谷優駕(3年/山形内定)が話した前橋育英がボールを動かし、前橋商がブロックを敷きながらカウンターを狙う展開が、序盤から繰り広げられる。

 前橋育英はビルドアップにも工夫が見られ、右サイドバックのDF瀧口眞大(3年)と、センターバックコンビのDF久保遥夢(3年)とDF市川劉星(3年)が3枚で動かすときには、左サイドバックのDF牧野奨(3年)がボランチに近い位置に潜るシーンも。11分にはMF平林尊琉(3年)が左へ振り分け、ここは外に開いた牧野のクロスから、MF瀬間飛結(2年)が枠へ収めたシュートは前橋商GK蜂巣煌英(3年)がキャッチ。20分には瀧口の左CKを久保が頭で叩くも、ここも蜂巣が丁寧にキャッチ。先制には至らない。

 一方、「いいところで奪えたりしていたので、あとはシュートまで行けたらなというところはありました」とキャプテンのMF工藤大翔(3年)も口にした前橋商は右からDF今井大河(3年)、DF知久弥詩(3年)、DF星野叶樹(3年)、DF石井蒼泰(2年)で組んだ4バックが集中力高く相手の攻撃に対抗し、ドイスボランチの工藤とMF平石岬暉(2年)も前向きにボール奪取する局面もあったが、流れの中からチャンスは作り切れず。23分にはMF丸田成海(3年)の仕掛けから左FKを獲得するも、FW飯島颯斗(2年)のキックは、前橋育英GK蝦名理音(3年)がパンチングで回避する。

センターバックで奮闘した前橋商DF知久弥詩


 やや膠着した状態の中で、スコアを動かしたのはセットプレー。40+1分。前橋育英の左CK。瀧口が蹴った正確なキックから、ニアに飛び込んだ柴野のヘディングはゴールネットを鮮やかに揺らす。「自分がニアに行く役割だったので、眞大から良いボールが来て、しっかり合わせられて凄く良かったなと思います」と笑った背番号13の先制弾が飛び出し、前半は前橋育英が1点のアドバンテージを握って、40分間が終了した。




 後半も攻勢に出たのは前橋育英。「前半は相手の出方を探りながらだったので、正直キツかったというのが本音なんですけど、後半は自分もチームも良いプレーができたなという感覚だったので、楽しかったですね」とはセンターバックのDF久保遥夢(3年/名古屋内定)。11分には高い位置でMF平林尊琉(3年)が相手ボールを奪い、そのまま放ったシュートは果敢に飛び出した蜂巣がビッグセーブ。さらに18分にも牧野の左クロスがファーへ流れると、積極的なプレスでボールを奪ったMF白井誠也(3年)がマイナスへ。FW関蒼葉(2年)がフリーで打ったシュートは、しかしクロスバーの上へ。なかなか追加点は奪えない。

 20分を過ぎると、ようやく前橋商に攻撃のリズムが。22分には前を向いた丸田のパスに、DF登録のFW田口空河(2年)が抜け出し、ここは竹ノ谷の巧みなカバーリングに阻まれるも好トライ。以降も右のMF手呂内勇輔(2年)、左の飯島と両サイドハーフもドリブルでのチャレンジが増加。「ハーフタイムのロッカーの雰囲気は前向きで、『まだ1点だから獲り返せばいいだろ』とチーム全体で声を掛け合っていました」と工藤も明かした勝利への強い想いを、ピッチ上で表現する。

前橋商の中盤を引き締めたキャプテン、MF工藤大翔


 とはいえ、タイガー軍団の最終ラインもとにかく堅い。「守備は粘り強くというスタンスで、『絶対に無失点で行こう』とみんなで言っていました」と市川が話せば、「自分たちの方がボールは持てていたので、体力的に相手の方が先にキツくなるんだろうなというマインドでずっとできていたと思います」とは柴野。前橋商のアタックをいなしながら、隙を見つければ素早く切り替えて取り切るフィニッシュ。30分には途中出場のFW大岡航未(3年)が、31分には竹ノ谷がシュートまで持ち込むなど、2点目を狙う姿勢も示し続ける。

 そして、5分間のアディショナルタイムが過ぎ去ると、主審のホイッスルが敷島の青空へ吸い込まれる。「始まる前からこの県予選が難しい戦いになることは、去年の経験からわかっていましたし、今日も1点勝負ということはわかっていたので、竹ノ谷を中心に入りから集中して、勝ち切れたことは良かったかなと思います」(久保)。ゼブラ軍団の奮闘、一歩及ばず。前橋育英が1-0で粘る前橋商を振り切って、5年連続での全国切符を引き寄せる結果となった。



 殊勲の決勝点を挙げた柴野も開口一番、「プレミアよりも県予選が一番難しいですね」と苦笑いを浮かべたように、昨年度の選手権日本一に輝いた前橋育英は、やはり今大会も県予選の厳しさを実感するような試合が続いた。

 準決勝の健大高崎戦は大学受験で白井と牧野を欠く中、相手の粘り強い戦いに苦しめられたものの、後半30分に柴野が決勝ゴールをマークし、1-0で辛勝。この日もインターハイ予選準決勝でPK戦の末に敗れたリベンジを期す前橋商の奮闘が際立ったうえに、久保が「会場全体の雰囲気が上がるのは凄くありがたいことですけど、やりにくい部分といろいろ混ざって難しかったですね」と振り返ったように、それこそワンプレーごとに白と黒の応援席から大きな歓声が響き渡るなど、さまざまな面で難しい80分間を強いられたことは間違いない。

 ただ、彼らにはシビアな局面を潜り抜けてきた経験値があった。「試合の流れをなかなか掴めないのが県の予選だと思うんですけど、それはインターハイの時にも経験していたので、みんな慣れてはいたと思います」(市川)「リーグ戦やいろいろな試合を通じても、自分たちが選手権王者ということで、相手も勢いを持って自分たちを倒しに来ていることは結構感じていましたし、さらに選手権予選になると、相手も全国に出たいという気持ちはある中で、その気持ちの部分で自分たちは絶対に負けるなというところは声掛けしていました」(竹ノ谷)。

前橋育英の最終ラインにそびえるDF市川劉星


 この1年は常に“選手権王者”という視線にさらされてきた中で、それでもそのプレッシャーに打ち勝って、きっちり結果を出すしか、今年のチームが認められる術はない。「多少は『育英なら勝つのは当たり前だろ』みたいな感覚がある中で、そう言われているなら、より結果で見せないとという想いがあったので、1-0ではありましたけど、勝てて良かったです」と語ったのは久保。ほとんどの試合が『勝つのは当たり前』というシチュエーションの中で戦い抜いてきた彼らは、いつの間にか昨年のチームに肉薄するような勝負強さを身に付けつつあると言っていいだろう。

 ここからはプレミアリーグの残り4試合を戦ったのち、改めて2年連続となる『冬の日本一』へのチャレンジが幕を開ける。昨年の国立決勝で、優勝を決めるPK戦のラストキッカーとなった柴野は、極めて冷静に選手権への抱負を、こう口にする。

「自分たちはチャレンジャーだと監督からも言われていますし、あくまでも日本一を成し遂げたのは去年の選手なので、自分たちの代でもう一度あの国立の舞台に戻って、またあの結果を出したいなとは凄く感じていますけど、まだ優勝は考えていないですし、本当に1試合1試合地道にやっていきたいなと思っています」。

 千里の道も一歩から。国立への道も、目の前の勝利から。全国連覇の可能性を唯一有している、上州のタイガー軍団の新たなる挑戦。2025年の前橋育英も、やはり強くて、逞しくて、面白いチームになってきた。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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