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[選手権]「埼玉県予選は本当に難しい」全3試合で苦戦も乗り越えた昌平、武南を後半AT弾で破って2年ぶりの全国へ!!

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昌平が埼玉制覇!!

[11.16 選手権埼玉県予選決勝 昌平 1-0 武南 埼スタ]

 昨年に痛いほど知らされた県予選の怖さを懸命に乗り越えた。昌平高は16日、第104回全国高校サッカー選手権埼玉県予選決勝で武南高と対戦。埼玉スタジアム2002に1万1174人が集まった注目の一戦はMF長璃喜(3年)が後半アディショナルタイムに決勝点を奪い、昌平が1-0で制して2大会ぶり7回目の全国切符を獲得した。

 プレミアリーグEASTを戦う昌平は昨夏の全国高校総体(インターハイ)で日本一に輝いたが、冬の選手権ではまさかの県予選8強敗退。聖望学園高に3-4で敗れた試合では現3年生のうちDF安藤愛斗(3年)、長、MF山口豪太(3年/湘南内定)の3人が先発出場しており、他の選手もベンチやスタンドから衝撃的な敗戦の悔しさを感じていた。

 それだけにより気を引き締めて臨んだ今予選だったが、初戦となった準々決勝の浦和学院高戦はPK戦にもつれ込むと、準決勝の成徳深谷高戦も延長に及ぶ戦いを3-1で制しての勝ち上がりと苦戦。主将のDF伊藤隆寛(3年)が「埼玉県予選は本当に難しいと感じる」と話せば、市立長野高(長野)監督時代に選手権を経験し、今年度から指揮を執る芦田徹監督も「埼玉県全体が本当にレベルが高いと私自身も痛感した」と述べる中、いずれの試合も最終的には勝ち切って決勝に駒を進めた。

 決勝は19年ぶりの全国を目指す武南と激突。武南にとっては予選決勝進出も14年ぶりの快挙だった。県リーグ1部を戦う武南はリーグカテゴリーでは昌平の3つ下ではあるものの、立ち上がりから引けを取らない戦い。前半7分にはMF有川達琉(3年)がミドルレンジから思いきりよく左足を振り抜いてゴールを狙った。

 一方の昌平は前半8分、中盤でボールを受けた長が右の山口へ展開し、山口が縦に仕掛けてCKに繋げる。同13分には長がスルーパスに反応してペナルティエリア左からカットイン。右足で放った強烈なシュートはGK金昶銖(2年)の好セーブに阻まれたが、個の能力が高いアタッカー陣がゴールに迫っていった。

 もっとも武南は長などのキーマンに複数人で対応する組織的な守備を見せるだけでなく、中盤のMF小山一絆(2年)を筆頭に1対1の争いでも互角に渡り合って簡単にはチャンスを作らせない。昌平の芦田監督は右サイドハーフに山口、トップ下に長、左サイドハーフにMF飯島碧大(2年)としていた並びについて「どうしても停滞感があったというところが大きかったし、まだまだ止まるシーンが多かった。配置を変えながら人だけじゃなくボールが循環したりというボールにも動きがほしかった」との狙いで、前半20分ごろより右から飯島、山口、長に変更して打開を試みた。

 それでも武南が前半23分にチャンスを作った。DF田中理月(3年)の浮き球でMF関口海龍(3年)が右サイド深くを取ってペナルティエリア右に走り込むMF平野琉斗(3年)へパス。平野のシュートは大きく浮いたが、流れを引き寄せた。

 すると武南が前半38分に決定機を迎えた。敵陣で横パスをカットした関口が有川とのワンツーでペナルティエリア左に侵入し、折り返しは相手にブロックされたもののこぼれ球を自ら拾って同エリア中央の有川へパス。有川のシュートが当たり損ねたところをゴール前のFW藤森隼叶(3年)が収めてボレーで狙うも、果敢に飛び出してきたGK小野寺太郎(3年)のビッグセーブに遭った。さらにこのこぼれ球を有川がゴールエリアに入るところからダイレクトで押し込みにいったが、シュートは枠の上に浮いてしまった。

GK小野寺太郎(3年)が勇気ある飛び出し

 なおも武南は前半40分、藤森のポストプレーから小山がゴール前に侵入するも再びGK小野寺に死守されて先制には至らない。押し込まれ気味の昌平はFW立野京弥(1年)や山口らをターゲットにしたロングボールも使って主導権を奪おうとするも、攻め手を欠いたまま0-0で前半を終了した。

 芦田監督は「長いボールが多すぎた」と前半を総括し、ハーフタイムに後方の選手による前への持ち運びや細かいパスでの前進、サイドでのドリブルといった積み上げてきたスタイルで優位な試合運びを狙っていくように指示。ただ「後半も正直良さが出なかった」と振り返るような苦戦が続く。

 後半の立ち上がりは昌平の出足も良くなって1年生ストライカーの立野にこの試合ファーストシュートが生まれたが、後半11分には有川にカットインから際どいシュートを放たれてヒヤリとするシーン。反対に同12分、前線への配球を繰り返していたDF古川雄規(2年)の絶妙なスルーパスで山口がGKと1対1になりかけたが、DF倉本健二(3年)の懸命なカバーリングでスコアは動かなかった。

 昌平は決して劣勢の展開ではないものの流れには乗りきれず、以降はゴールに迫られる場面が続いた。まずは後半14分、武南が小山のボール奪取から速攻を仕掛けて有川のシュートまで持っていく。直後には有川が前線の藤森へ縦パスを差し込むと、トラップが流れたところにMF渡辺悠(2年)が走り込んで決定機になりかけたが、間合いを詰めたGK小野寺が先にボールに触れてファウルを誘った。同27分には武南のDF八百川尚輝(2年)が期待感のあるミドルシュートを見せた。

 そうした展開で昌平は長、山口、立野といった攻撃陣がゴール前での切り返しやドリブルでシュートコースを巧みに作るようなプレーも見せたが、武南守備陣を攻略するには至らない。最後のところで体を張ったシュートブロックやスライディングでのパスカットに阻まれた。

 武南は後半アディショナルタイム手前の40分、MF鞭馬小太朗(2年)のミドルシュートが相手に当たってペナルティエリア内に跳ね上がると、ゴール正面でフリーのMF安藤大翔(3年)が頭で合わせた。しかしやや下がりながらで体勢を崩しながら放ったボールは枠の上に飛び、0-0のまま後半アディショナルタイムに入った。

 延長戦も視野に入る時間帯。それでも昌平が底力で上回った。後半40+3分、長が自陣ハーフウェーライン手前で左サイドに張って左SBの古川からボールを受ける。長はトラップでプレスに来た相手をかわして左サイドをスプリント。そのまま追いかけてくる相手選手を寄せつけないスピードでペナルティエリアに侵入すると、縦に持ち出して左足一閃。グラウンダーのボールはGKの手を弾いてゴール右隅へ吸い込まれ、劇的な先制点になった。

思わずユニフォームを脱いだMF長璃喜(3年)

 長は得点直後にユニフォームを脱いで喜びを爆発させ、名誉のイエローカード。その後は武南にロングスローのチャンスがあったものの昌平が無失点を維持してタイムアップを迎え、2年ぶりとなる冬の全国行きを決めた。

タイムアップにベンチメンバーも歓喜

 芦田監督は決勝を終えて「非常に苦しいゲームだった」と一息つく。主将の伊藤も武南に映像で確認した以上の強さや質の高さを感じたという。公式記録では昌平のシュートが8本だったことに対し、武南は15本と倍近くを記録。昌平は今予選で初めて80分間で決着をつけることができたものの、得点の時間帯やシュート数、内容を踏まえれば全試合で苦しみながらの予選突破になった。

 ただ、一発勝負の舞台で粘り強く勝ち抜いたとも受け取れる。伊藤は予選を終えて「ビハインドからゲームに入ることが多かった(準々決勝、準決勝は先に失点)と思うけど、ブレずに昌平のサッカーをできる力がこの1年を通してついてきた」と手応えを口にする。ピッチ上の11人だけでなくスタッフ、ベンチメンバー、応援を交えた団結力を感じており、「失点しても明るくゲームを進められる」ことも強みだとした。

 今季の昌平は2年連続でインターハイに出場した一方、プレミアリーグEASTでは前半戦を4連敗で終える苦しい時期もあって現在10位で残留争いの最中。そうした状況で迎えた選手権予選で埼玉制覇を果たし、「簡単なゲームはない中でしっかり結果に繋げたことは子どもたちの成長を感じる」と指揮官。就任1年目での夏冬県制覇に「子どもたちが活躍できる舞台に道を繋げることがどの大会でも大事だと思うし、そういった意味ではホッとしている」と安堵の表情を浮かべた。

 翌週からはプレミアリーグEASTが再開する。再開初戦は5連勝中でインターハイ予選敗退の雪辱も果たした青森山田高との対戦だ。指揮官は「カップ戦と一緒。残留争いをしているので一試合一試合負けない戦いを、1点でも勝ち点を取っていくことの積み重ねしかない」と勝負にこだわっていく姿勢を改めて示すとともに、「先を見ている場合ではないのですぐに来週の山田戦に向けて準備していく」ともコメント。全国で勝ち抜くための準備も進めていくことになるが、まずは粘り強く制した県予選での自信と主導権を握りきれなかった決勝の反省も踏まえながら、早い段階で残留を確定させることに集中する構えだ。

(取材・文 加藤直岐)

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加藤直岐
Text by 加藤直岐

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