[MOM5318]前橋育英MF柴野快仁(3年)_「チームに対する責任感」を強める今治内定のプレーメイカーが「予感的中」のヘディングで決勝弾!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.16 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 前橋商高 正田醤油スタジアム群馬]
不思議と点が獲れそうなイメージは、試合前から自分の中にはっきりと膨らんでいた。それはコーナーキックの直前に、より強くなったという。最高のボールが入ってくる。ニアに飛び込む。頭に当てる。ネットが揺れる。予感的中。やっぱり、ゴールって最高だ。
「(山田耕介)監督からも『セットプレーが決まればもっと強いチームになれる』というのは言われていて、キッカー陣を中心に凄く練習してきた中で、キツい時間帯にセットプレー1本で点を獲れるとチームも楽になりますし、チーム全体としても今までやってきたことが間違っていなかったんだという証明にもなったと思うので、凄く良い時間帯に決められたと思っています」
前橋育英高の中盤に君臨する世代有数のプレーメイカー。MF柴野快仁(3年=ウイングスSC出身/今治内定)の本人も驚くヘディングでのゴールが、選手権連覇を目指すチームの全国切符獲得を、力強く手繰り寄せた。
「あまり自分たちのサッカーができていない時間帯は多くあったと思います」。柴野は前半の40分間を、そう振り返る。第104回全国高校サッカー選手権群馬県予選決勝。前橋商高と対峙する『群馬クラシコ』に臨んだ前橋育英は、相手のブロックをなかなか崩し切れず、攻撃の手数を繰り出せない。
キャプテンのMF竹ノ谷優駕(3年)とドイスボランチを組んだ柴野も、ボールには積極的に関与するものの、得意の3列目からの飛び出しも鳴りを潜め、チーム自体も得点の香りを漂わせられないまま、時間ばかりが経過していく。
前半も終了間際になった40+1分。前半2本目のCK。「前商はニアの前に誰も人がいないので、そこを狙えるなという話をしていました」と口にする柴野の担当はニアゾーン。その位置に走り込むと、DF瀧口眞大(3年)が蹴り込んだキックがドンピシャで届く。
「眞大から良いボールが来て、しっかり合わせられて凄く良かったなと思います」。背番号13が完璧なヘディングで叩いたボールは、ゴールネットへ吸い込まれる。1-0で辛勝した準決勝の健大高崎高戦に続く、2試合連続での先制点。チームメイトもすぐさま祝福に駆け寄ってくる。






「今日も点を決められそうだなという雰囲気はあったので、結構そういう勘は当たったりしますね。コーナーが蹴られる前にも『来そうだな』という予感は本当にあって、そういうのはだいたい当たります。ちょっと持ってますよね」。本人が『持っている』と口にするのには、これまた理由があった。
「自分は通常の練習が終わった後は、ロングボールを蹴ったりとか、そっち系の練習をしていた中で、キッカーとセンターバック2枚はずっとセットプレーの練習をしていて、僕はニアに入るということだけ決まっていたので、練習ではあまりうまく行っていなかったのに、本番だけうまく行ったのは運が良かったなと思います(笑)」。思わぬ伏兵のヘディング弾。最高の時間帯でスコアが動く。
結果的にこの1点が、ウノゼロで勝利を収めたこの一戦の決勝点に。本人は「ゴール以外は結構マークされていて、ロストする部分も凄くあったので、まだまだだなと。対策されていても輝ける選手にならないとというのは、今後の課題だと思いますし、あまり自分が勝たせたというイメージはなくて、みんなで掴んだ勝利だなと思っています」と話したものの、自身も今までほとんど決めた記憶がないという、セットプレーからのヘディングで叩き出した柴野の一撃が、チームを全国に力強く導いた。


2年生だった昨シーズンからレギュラーを掴み取っていたが、最高学年となった今季は一段階プレーレベルが上がった印象も。とりわけ3列目から果敢に持ち運ぶ推進力は、高校年代のタレントが居並ぶプレミアリーグでも有数のレベル。ゆえに今回の予選では相手に対策を練られていたことも実感したという。
「ボールを持ってフリーになれる瞬間が本当になくて、ドリブルしても相手が食い付いてこないなって。飛び込まないようにされていることは凄く感じましたし、本当にやりづらかったです」。ただ、それでも仕事を果たさなくてはいけないことも理解している。なぜなら、このチームを自分が引っ張っていくという覚悟を、もうとっくに定めているからだ。
「去年から一番成長した部分は、チームに対する責任感です。3年生でも試合に出れていない選手もたくさんいる中で、育英の代表として自分が出させてもらっている以上は軽率なプレーはできないですし、そういう1つ1つのプレーに対する責任は、今年はより凄く感じるようになりましたね。今は自分が結果を出すとかではなくて、チームが一番良い結果を出せるようなプレーをし続けたいなと思っています」。
10月23日には、今季からJ2に昇格したFC今治への加入内定が発表された。「ずっと夢見ていたプロサッカー選手のキャリアをスタートできる嬉しさはあるんですけど、ドリブルやパスセンスにもっと磨きを掛けて、もっと上のレベルで誰が相手でも通用するような選手になりたいなと考えていますし、1年目からメンバーに食い込めるようにやっていきたいと思います」。
「育英は本当にみんな上手ですし、足元もあって、背後も使えて、3枚目の動きも全員ができるので、そういうプレーを自分も選手権で出していって、それが今治のサポーターの方にも届いたら、自分の期待値も上がると思うので、変にプレッシャーには感じすぎず、自分の良いプレーを見てもらえるように頑張りたいです」。今治のサポーターへ一足早く、最高の形で“自己紹介”するための準備を、着々と整えていく。


自分たちだけに許されている全国連覇の権利。高校3年間の集大成。昨年度の選手権決勝ではゴールを挙げたうえに、優勝を決めるPKキッカーも務めるなど、大舞台での“持っている”星は実証済み。最後の冬も1つ1つ丁寧に戦って、必ずあの景色をもう一度手繰り寄せてやる。
「自分たちはチャレンジャーだと監督からも言われていますし、あくまでも日本一を成し遂げたのは去年の選手なので、自分たちの代でもう一度あの国立の舞台に戻って、またあの結果を出したいなとは凄く感じていますけど、まだ優勝は考えていないですし、本当に1試合1試合地道にやっていきたいなと思っています」。
飄々と、堂々と。冷静に、情熱的に。多面的な魅力を内包する、前橋育英の才気あふれるプレーメイカー。柴野快仁は国立競技場へと帰還するイメージを膨らませながら、地道に、真摯に、いつものグラウンドで、今日のトレーニングと向き合い続けていく。


(取材・文 土屋雅史)
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[11.16 選手権群馬県予選決勝 前橋育英高 1-0 前橋商高 正田醤油スタジアム群馬]
不思議と点が獲れそうなイメージは、試合前から自分の中にはっきりと膨らんでいた。それはコーナーキックの直前に、より強くなったという。最高のボールが入ってくる。ニアに飛び込む。頭に当てる。ネットが揺れる。予感的中。やっぱり、ゴールって最高だ。
「(山田耕介)監督からも『セットプレーが決まればもっと強いチームになれる』というのは言われていて、キッカー陣を中心に凄く練習してきた中で、キツい時間帯にセットプレー1本で点を獲れるとチームも楽になりますし、チーム全体としても今までやってきたことが間違っていなかったんだという証明にもなったと思うので、凄く良い時間帯に決められたと思っています」
前橋育英高の中盤に君臨する世代有数のプレーメイカー。MF柴野快仁(3年=ウイングスSC出身/今治内定)の本人も驚くヘディングでのゴールが、選手権連覇を目指すチームの全国切符獲得を、力強く手繰り寄せた。
「あまり自分たちのサッカーができていない時間帯は多くあったと思います」。柴野は前半の40分間を、そう振り返る。第104回全国高校サッカー選手権群馬県予選決勝。前橋商高と対峙する『群馬クラシコ』に臨んだ前橋育英は、相手のブロックをなかなか崩し切れず、攻撃の手数を繰り出せない。
キャプテンのMF竹ノ谷優駕(3年)とドイスボランチを組んだ柴野も、ボールには積極的に関与するものの、得意の3列目からの飛び出しも鳴りを潜め、チーム自体も得点の香りを漂わせられないまま、時間ばかりが経過していく。
前半も終了間際になった40+1分。前半2本目のCK。「前商はニアの前に誰も人がいないので、そこを狙えるなという話をしていました」と口にする柴野の担当はニアゾーン。その位置に走り込むと、DF瀧口眞大(3年)が蹴り込んだキックがドンピシャで届く。
「眞大から良いボールが来て、しっかり合わせられて凄く良かったなと思います」。背番号13が完璧なヘディングで叩いたボールは、ゴールネットへ吸い込まれる。1-0で辛勝した準決勝の健大高崎高戦に続く、2試合連続での先制点。チームメイトもすぐさま祝福に駆け寄ってくる。






「今日も点を決められそうだなという雰囲気はあったので、結構そういう勘は当たったりしますね。コーナーが蹴られる前にも『来そうだな』という予感は本当にあって、そういうのはだいたい当たります。ちょっと持ってますよね」。本人が『持っている』と口にするのには、これまた理由があった。
「自分は通常の練習が終わった後は、ロングボールを蹴ったりとか、そっち系の練習をしていた中で、キッカーとセンターバック2枚はずっとセットプレーの練習をしていて、僕はニアに入るということだけ決まっていたので、練習ではあまりうまく行っていなかったのに、本番だけうまく行ったのは運が良かったなと思います(笑)」。思わぬ伏兵のヘディング弾。最高の時間帯でスコアが動く。
結果的にこの1点が、ウノゼロで勝利を収めたこの一戦の決勝点に。本人は「ゴール以外は結構マークされていて、ロストする部分も凄くあったので、まだまだだなと。対策されていても輝ける選手にならないとというのは、今後の課題だと思いますし、あまり自分が勝たせたというイメージはなくて、みんなで掴んだ勝利だなと思っています」と話したものの、自身も今までほとんど決めた記憶がないという、セットプレーからのヘディングで叩き出した柴野の一撃が、チームを全国に力強く導いた。


2年生だった昨シーズンからレギュラーを掴み取っていたが、最高学年となった今季は一段階プレーレベルが上がった印象も。とりわけ3列目から果敢に持ち運ぶ推進力は、高校年代のタレントが居並ぶプレミアリーグでも有数のレベル。ゆえに今回の予選では相手に対策を練られていたことも実感したという。
「ボールを持ってフリーになれる瞬間が本当になくて、ドリブルしても相手が食い付いてこないなって。飛び込まないようにされていることは凄く感じましたし、本当にやりづらかったです」。ただ、それでも仕事を果たさなくてはいけないことも理解している。なぜなら、このチームを自分が引っ張っていくという覚悟を、もうとっくに定めているからだ。
「去年から一番成長した部分は、チームに対する責任感です。3年生でも試合に出れていない選手もたくさんいる中で、育英の代表として自分が出させてもらっている以上は軽率なプレーはできないですし、そういう1つ1つのプレーに対する責任は、今年はより凄く感じるようになりましたね。今は自分が結果を出すとかではなくて、チームが一番良い結果を出せるようなプレーをし続けたいなと思っています」。
10月23日には、今季からJ2に昇格したFC今治への加入内定が発表された。「ずっと夢見ていたプロサッカー選手のキャリアをスタートできる嬉しさはあるんですけど、ドリブルやパスセンスにもっと磨きを掛けて、もっと上のレベルで誰が相手でも通用するような選手になりたいなと考えていますし、1年目からメンバーに食い込めるようにやっていきたいと思います」。
「育英は本当にみんな上手ですし、足元もあって、背後も使えて、3枚目の動きも全員ができるので、そういうプレーを自分も選手権で出していって、それが今治のサポーターの方にも届いたら、自分の期待値も上がると思うので、変にプレッシャーには感じすぎず、自分の良いプレーを見てもらえるように頑張りたいです」。今治のサポーターへ一足早く、最高の形で“自己紹介”するための準備を、着々と整えていく。


自分たちだけに許されている全国連覇の権利。高校3年間の集大成。昨年度の選手権決勝ではゴールを挙げたうえに、優勝を決めるPKキッカーも務めるなど、大舞台での“持っている”星は実証済み。最後の冬も1つ1つ丁寧に戦って、必ずあの景色をもう一度手繰り寄せてやる。
「自分たちはチャレンジャーだと監督からも言われていますし、あくまでも日本一を成し遂げたのは去年の選手なので、自分たちの代でもう一度あの国立の舞台に戻って、またあの結果を出したいなとは凄く感じていますけど、まだ優勝は考えていないですし、本当に1試合1試合地道にやっていきたいなと思っています」。
飄々と、堂々と。冷静に、情熱的に。多面的な魅力を内包する、前橋育英の才気あふれるプレーメイカー。柴野快仁は国立競技場へと帰還するイメージを膨らませながら、地道に、真摯に、いつものグラウンドで、今日のトレーニングと向き合い続けていく。


(取材・文 土屋雅史)
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