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[大学選手権]8年ぶり出場の愛知学院大が前回準優勝福岡大を撃破

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[12.15 全日本大学選手権1回戦 福岡大1-2愛知学院大 味スタ西]

 第62回全日本大学サッカー選手権は15日、1回戦を行い、愛知学院大(東海3)は福岡大(九州3)と対戦し、2-1で勝利した。8年ぶりのインカレで、14年連続出場の福岡大を破った愛知学院大は、18日の2回戦で流通経済大(総理大臣杯優勝)と対戦する。

 8年ぶりのインカレ出場を果たした愛知学院大だったが、初戦から彼らの動きが固くなることはなかった。「まず落ち着いて、いつものサッカーができるような雰囲気づくりを、まずしてきました。みんなリラックスしてやっていましたし、前半の途中にスリッピーなグラウンドにも対応している様子を見て『いけるな』という感じを得ていました」と、境田雅章監督は話す。

 その言葉通り、立ち上がりから試合を優勢に進めたのは愛知学院大だった。左サイドで切れのあるドリブルを見せたMF水谷侑暉(2年=暁高)を中心に、福岡大ゴールへ迫っていく。前半15分には相手のパスをカットしたMF岩崎慎平(3年=藤枝東高)からボールを受けたMF西中寿明(3年=東邦高)がミドルシュートを放ったが、GK藤島栄介(4年=大津高)の正面を突いた。

 序盤、相手の勢いに押されていた福岡大も、前半15分にはビッグチャンスを得る。PA内にボールを運ぶと、ドリブルを仕掛けたFW平田拳一郎(4年=高川学園高)がDFに倒されてPKを獲得する。このPKをMF田村友(九国大付高=3年)がゴール左に蹴ったが、GK山下渉(3年=四中工高)にコースを読まれて阻まれてしまう。

「山下がPKを止めてくれて、さらに勢いに乗りました」と、MF鈴木貴也(4年=磐田ユース)は振り返り、「相手がロングボールを多用してくることは予想していたので、ボランチとサイドでセカンドボールを拾うことができました」と続けた。DF大武峻(3年=筑陽学園高)のロングスローからの空中戦をはじめ、体格差を生かした攻撃を仕掛けてくる福岡大に対し、愛知学院大はボール回収率で上回り、主導権を握った。前半39分にはゴール正面で西中がフリーになり、決定的な場面を迎えた。しかし、シュートを枠の左に外してしまい、前半はスコアレスで折り返す。

 試合が動いたのは、後半11分だった。水谷からのスルーパスを受けた西中が、GK藤嶋との1対1を制して先制点を決める。前半終了間際に決定機を逃していたが、その後の彼の表情を見た境田監督には、予感があったという。「外した後に『しまったぁ』という顔をして、下を向いていたんですよ。でも、『2回目は大丈夫だよね』と声を掛けたら、彼はニッコリと笑ってね。それで決めてくれたんです」。

 昨年、決勝まで勝ち進んだ福岡大は、2人の選手交代に加え、布陣も3-4-3に変更するが、なかなかチャンスをつくり出せない。後半36分には最後の交代枠で前ギラヴァンツ北九州のFW加部未蘭(1年=山梨学院大附高)を投入する。187センチのストライカーは、前線に送られてくるロングボールの競り合いを、ほとんど制した。同39分には左サイドからDF弓崎恭平(3年=東海大五高)がゴール前に入れたボールを加部がヘッドで後方に送る。ゴールエリア右サイドに浮いたボールをMF山道淳司(2年=東海大五高)が折り返すと、ゴール前に詰めていたFW薗田卓馬(2年=鹿児島城西高)がゴールに押し込み、試合を振り出しに戻した。

 交代出場の3選手による、残り5分を切ってからの同点ゴール。盛り上がる福岡大は、俄然攻勢に出る。しかし、そこに落とし穴があった。同点ゴールから3分、愛知学院大の水谷からロングボールが送られる。前掛かりになってスペースが出来ていた福岡大陣内に走り込んだFW安東大介(4年=藤枝明誠高)が、PA内でGK藤嶋と接触して倒れる。上村篤史主審はPKスポットを指さした。このPKを「絶対の自信があったから、まったく不安にならなかった」と言う鈴木が、確実に決めて愛知学院大が勝ち越した。

 再び勝ち越しを許した福岡大は大武と加部を最前線に張らせて、パワープレーに望みを賭ける。しかし、同点に追い付くことはできずにタイムアップ。「同点になったあと、相当前掛かったバランスでピッチに立っていた。これが、うちのチームが九州で3位に終わった要因でもありますが、バランスが崩れて、効率が悪い試合運びをした」と、乾真寛監督はシーズンの最後まで、チームが課題を克服できなかったことを敗因に挙げ、さらに「FWの山崎(凌吾)がいなければいけないのに、直前の調整試合でケガをして、攻めの最後の所で一個足らなかった。愛知学院さんは久しぶりの全国大会ということを前向きなエネルギーに変えた。一方、こっちはベストメンバーがそろわなくて『気持ちの面で受けないように』と声をかけたのですが…」と、エースの不在を嘆いた。

 前年の準優勝チームに勝った愛知学院大の境田監督は、流通経済大の待つ2回戦に向けて「天狗にならなければいいけど」と冗談を口にし、「そこまで横綱サッカーをしたわけじゃないから、天狗になる選手はいないと思うし、むしろ流経さんは強い印象があるから固くならずにリラックスして、同じように平常心で戦えたらいいなと思います」と、この日の勝因である『いつもどおり』で臨むことを強調した。

(取材・文 河合拓)

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