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[大学選手権]FW浅野拓磨の弟・雄也が意地のゴールも大体大は敗戦、「タクの背中はつかめない」

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[12.13 全日本大学選手権準々決勝 阪南大3-2(延長2-2)大阪体育大 西が丘]

 大阪体育大(関西5)は常に先攻される展開になりながらも必死に阪南大(関西2)に食らいつくと、10人で2-2に追いついた。その後に失点し、2-3で敗退となったが、ルーキーFW浅野雄也(1年=四日市四郷高)の決めた同点ゴールは今後への光明となった。

 1-1で迎えた後半25分、退場者を出して10人になった大阪体育大は浅野を投入する。坂本康博監督は「ひたすら前でボールを追いかけ、ボールを持ったときにはゴールに向かってシュートしろ」と指示をしたという。これを受けた浅野は果敢にチャレンジ。「自分の武器は一人で打開できる力だと思っているので」という心意気で4-4-0-1の1トップに入ると、必死にボールを追った。

 90分間で決着はつかずに迎えた延長戦では、途中出場したFW大田賢生(1年=星稜高)が1トップに回り、浅野は右サイドへ回った。「浅野は守備が得意ではないから、サイドに置いた方が力は出せる」。指揮官の狙いは的中する。

 延長前半終了間際の15分、右サイドでボールを奪ってのカウンター。ハーフウェーライン付近からドリブルで駆け上がった浅野はスライディングに来たDF松下佳貴(4年=松山工高)を浮かしてかわすと、鮮やかな左足ループシュートを決めた。チームはその後に失点し、2人目の退場者を出すと敗れたが、浅野は左足でのキックや突破力でインパクトを残した。

 サンフレッチェ広島に所属するFW浅野拓磨の実弟である雄也。2歳上の兄・拓磨は四日市中央工高での活躍が記憶に新しいが、弟は四日市四郷高の出身だ。「タクが四中工に行っていたから、一緒っていうのは何か嫌やし、高1や高2から(兄は)騒がれていたので違うところにいって、四中工を倒したいという思いがあった」と言う。そして3年間の高校生活を経て、今春には大阪体育大に進学。1年目ながらトップチームに定着して出場機会を得ると、ゴールも記録するなど順調に経験を重ねている。

 背番号は兄と同じ29番。しかし、これは監督が番号を決めた際に起きた“偶然”だったようで「渡されたら偶然にも兄ちゃんと一緒でした」と笑う。同じ番号で嬉しいのかと思いきや、「俺は嫌なんですよ。周りからしたら(俺が兄の番号に)合わせにいってるなとみられるのが……」と苦笑した。

 ルーキーイヤーの活躍に加え、U-22日本代表FWの兄を持つこともあり、今後も浅野雄には注目が集まることが予想されるが、坂本監督は「あまり注目して欲しくないですね。まだまだやることがあるので」と言い、「覚えは悪いんですが気持ちがしっかりしている。技術の取得は時間がかかるんですけど、本当に必死になってやってくれる。これから大怪我がないような状況で育てていきたい」と“親心”をのぞかせた。

 全国の晴れ舞台で鮮やかなゴールを決めた浅野。個人技で奪った一撃に「自分の武器は出せたかな」とは言うものの、「勝ちにこだわっていたので悔しい。まだまだ、もう1点が欲しかった。どんな形でもFWは点を取るのが全てなので」と唇を噛む。

 今後を見据えたFWは「兄ちゃんを目指しているので」と口を開くと、「まだまだタクの背中はつかめない」と悔しそうにつぶやいた。全国8強止まりとなったが、ルーキーイヤーながら全国の舞台で爪あとを残したのは確かだ。常に前を走り続ける兄の背中を弟・雄也は必死に追う。

(取材・文 片岡涼)
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