[12.12 全日本大学選手権(インカレ)準々決勝 筑波大2-1関西大 浦安市運動公園陸上競技場]

　0-2で迎えた後半アディショナルタイム3分。落ち着いていられる方が難しい状況だが、関西大(関西4)のFW竹下玲王(3年=磐田U-18)は自分がやるべき仕事に集中していた。

　右サイドのMF布施周士(4年=東京Vユース)が送ったクロスにニアで反応した竹下。体をひねるようにして放ったヘディングシュートがファーサイドへ吸い込まれた。終了直前に決まった見事なゴールが、会場のどよめきを生んだ。

「ニアがめっちゃ空いてたので、(布施)周士くんもいいボールを上げてくれたし、それを流し込むだけでした。そのままヘディングしたら入って良かったです」

　竹下にとっては待望の筑波大(関東2)戦だった。相手チームには磐田U-18時代に2トップを組んだFW中野誠也(3年=磐田U-18)が在籍。10日に行われた筑波大の2回戦もスタンドから観戦し、この日のピッチ上での再会を心待ちにしていた。

「やっぱ高校時代と変わらず上手いし速いし、さすがっていう場面も何回も見えたし、目標じゃないですけど、いいライバルというか、切磋琢磨し合える相手だなっていうのを改めて感じました」

　竹下がそう語る筑波大の中野は、3ゴール1アシストを記録した2回戦の勢いそのままに、この試合でも後半37分にMF三笘薫(1年=川崎F U-18)の先制点を演出すると、同42分には自らゴール。これまでの2試合で逆転勝利を飾っている関西大とはいえ、終盤の2失点は重くのしかかった。

　しかし、竹下は「(2失点で)厳しくなったっていうのはそうなんですけど」と前置きし、「それに落胆していても意味がないし、やっぱサッカーは野球と違って1点ずつしか返せないので、その1点1点を取りに行くっていう気持ちでした。そんなに(心境に)変化はなかったです」と冷静に振り返る。

　そして生まれた終了間際の鮮やかな一撃。試合は惜しくも1-2で終了し、関西大はここで敗退となったため、4回生の布施のアシストから3回生の竹下が挙げたこの1点が、今年のチームの“ラストゴール”となった。

「今年の関大はスタンドもベンチも一体感があっていいチームだったし、そういう部分ではどの大学よりも頭1つ出ていた」と終戦を惜しんだ竹下は、4回生の存在にも感謝する。

「4回生同士でまとまっていたし、下のことも気にかけてくれた。そういう面が『4回生のために頑張ろう』とか『チームのために頑張ろう』っていうのにつながったので、来年も(自分たちが)やっていきたいなと思います」。今年最後のゴールとともに、4回生からのバトンは竹下ら次の年代にしっかりと受け継がれた。

(取材・文　阿部哲也)

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●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集