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幾度の怪我を乗り越えた福岡大FW山下敬大、大学最後の試合で見せた不屈の2得点

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FW山下敬大が2得点を決めた

[12.18 全日本大学選手権準々決勝 福岡大2-3(延長)流通経済大 柏の葉]

 流通経済大が得点を奪えば福岡大が追いつくという展開が2度続き、延長後半終了間際までもつれた接戦。「点を取られても自分たちは諦めず、絶対チャンスは来るということを信じていた」と語るのは、2回のフィニッシュを決めたFW山下敬大(4年=九州国際大付高)だ。

 0-1で迎えた前半36分、DF石田皓大(3年=高川学園高)からパスを受けた山下が前方を確認して鋭い右足ミドルをゴールに突き刺した。「相手が下がってくれたので、迷わず思い切って狙った」というミドルシュートは大きな武器のひとつ。「試合前から相手のボランチの脇が空いているというのはわかっていた」と事前の情報を得ていた山下は、「自分でひとつ溜めをつくって、(中盤が空いたところを)パスかシュートの判断でシュートを選択しました」と狙い通りの得点だったことを明かした。

 延長前半2分に再び1-2とリードを許した福岡大。「厳しい展開もみんな本当に走ってくれていた。ここで諦めると追加点も取られるし、前線の僕たちが得点という形で結果を出さなきゃ」と山下は下を向かずにボールを追いかける。すると同11分、左サイドの石田のクロスからFW梅田魁人(2年=高川学園高)がPA内で競り合いボールがこぼれると、「思い通りに転がってきたので、もう押し込むだけ」と山下がゴール前から叩き込み、2-2の同点弾を決めてみせた。

 試合は延長後半終了間際にPKを獲得した流経大が冷静に決め、2-3で敗退。緊張続く中での唐突な終わりに「最後の最後まで、延長も含めて精一杯戦えた。ハンドを取られて悔しいのは悔しかったけど、仕方ない結果だと思います」と全力を出し切った末の結果を受け入れていた。

 4年間の大学サッカーを終え、山下は「怪我でピッチから離れている時間が本当に多かった」と振り返る。1年生の夏に股関節の手術を行って順調に回復を見せたものの、2年生のインカレ前に半月板を損傷。そのままリハビリを続けていたが3年生での復帰直前に軟骨の手術を行い、その一年は丸々サッカーから遠ざかっていた。

「本当に悔しかったんですけど、最後の一年を信じて。最後の一年間にすべてを捧げようと思いました」と決意を固めた山下。その山下に対し、乾真寛監督は主将に指名するという形で奮闘を促した。「苦労して我慢強くリハビリをして、この舞台に戻ってきた。立派な最後を見せてくれたので、山下の価値とか、力が際立っているということは評価されたと思う」と乾監督は4年間の取り組みを称えている。

 この試合の2得点により、山下は今大会3試合で5ゴールと準々決勝を終えた時点での大会トップスコアラーに。「4年生になって自分の体が良いコンディションに戻ってきて。自信がついてきている」と結果に結びついた大会となった。不屈のメンタルで勝ち得た自信は、山下に新たな目標を与えている。「次のステージで戦いたいっていうのはあります。プロの道にチャレンジしたい」。クラブからの声かけを待つその眼には、サッカーを続けたいという意欲が燃えていた。

(取材・文 石川祐介)
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