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プロ内定選手全員を帯同させず…関西3連覇の大阪体育大は初戦敗退、「チームの方針」松尾監督はコロナ禍での苦悩明かす

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大阪体育大を率いる松尾元太監督

[1.7 #atarimaeniCUP1回戦 桐蔭横浜大1-0大阪体育大]

 後期リーグのみとなった異例のシーズンでも力を発揮、関西1部リーグを3連覇して全国大会に乗り込んできた大阪体育大の挑戦は、今季は1回戦で終了した。

 6人のプロ内定組を帯同させないという強い覚悟を持って臨んでいた。「そもそも感染のリスクがある場所にチームを連れて行っていいのか」。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される社会情勢の中で、松尾元太監督は強く自問したという。

 当然、4年間、日本一を獲るためにやってきた選手たちにも思うことはあった。チームに首脳陣から説明があったのは約2週間前。主将DF有働周平(4年=広島皆実高)にも事前に相談はなく、決定事項として伝えられたという。「言われた時はもし、下級生に隙があったり、練習で手を抜くような選手がいたら内定組を連れて行ってくださいと伝えました」。

 ただそこでチームの根底が揺らぐことはなかった。居残りを言い渡された選手たちも練習の最後までチームの一員として過ごし、そして何より、遠征組の下級生が必死に出場メンバーに選ばれようと本気で取り組んでいたからだ。

 有働は「今日の試合でもいくつか表現しようとしてくれた」と“代役”とは呼ばせないパフォーマンスに感謝。それだけに後半20分、左サイドからエリア内に通されたボールを自身がクリアしきれなかったことが失点に繋がったシーンを何よりも悔やんだ。

「チームとして判断したこと、チームの方針です。プロ選手がすべてはないのは分かっているけど、いろんなリスクを考えるとこの形をとりました。なぜなのかというのは、複雑すぎて説明できない。一般的にサッカーをすることが難しいと思うし、大学サッカーとして、この状況下で大会をすることを否定するわけではないけど、本当に迷いました。

 最後の最後まで行くべきなのか、生命の危機になる可能性だってあるし、サッカー以上に命を守ることが大事。サッカーはやらせてあげたい。ただ目の前の学生だけじゃなく家族への影響もと考えると、いろんな指導者が迷いがあったんじゃないかなと思う。僕は少なくともすごく悩みました」(松尾監督)

 松尾監督の言う通り、コロナ禍が取り巻く状況は、現状、正解が見当たらない。周囲の環境、自身の立場などで判断する、様々な“正論”が混在しているからだ。今の感染者数の増加が問題視されている現状では、不安が広がるのは仕方のないことなのかもしれない。しかし一生懸命にプレーしている選手たちには何の非もない。一日も早く、状況が改善することを願うばかりだ。

■大阪体育大のJ内定者
▽GK
矢田貝壮貴(4年=京都橘高/長野内定)
▽DF
木出雄斗(4年=星稜高/鹿児島内定)
林尚輝(4年=立正大淞南高/鹿島内定)
大崎航詩(4年=東海大仰星高/水戸内定)
高橋秀典(4年=青森山田高/山口内定)
▽MF
疋田優人(4年=広島皆実高/岡山内定)

(取材・文 児玉幸洋)
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