beacon

[MOM757]びわこ成蹊スポーツ大MF佐藤昴(4年)_PKとFKで2発、自信のキックに悪天候は関係ない

このエントリーをはてなブックマークに追加

びわこ成蹊スポーツ大MF佐藤昴(4年)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.8 全日本大学選手権1回戦 びわこ成蹊スポーツ大 4-1 札幌大 中台]

 4年間培ってきたキックの精度は、雨だろうが晴れだろうが関係ない。「自分の中で自信を持って蹴れたっていうのはあります」。びわこ成蹊スポーツ大MF佐藤昴(4年=神戸U-18)はPKとFKで2得点を挙げ、チームの逆転勝利に大きく貢献した。

 望月聡監督も「どっちが強いとか関係なしに、全国大会の1回戦は独特の雰囲気がある」と語るように、大雨の中で開幕した全日本大学サッカー選手権(インカレ)で、守備にも自信を誇るびわこ大は前半13分にCKから失点。佐藤は「焦りはあった」と認めつつ、「まだ取り返す時間は十分あったので、そこは焦らずやろうとチームで話しました」とすぐに気持ちを整える。

 すると、前半24分にMF泉柊椰(3年=神戸U-18)が敵陣PA内でファウルを受け、PKを獲得する。キッカーは佐藤。「仲間が取ってくれたPK。信頼されてPKを任されているんで、緊張はあった」。ボールをセットすると、なかなか蹴ることができない。理由は悪天候による強風。「ボールがずっと動いていて、止まるのを待っていたんですけど、待っててもずっとボールが動き続けていた。もういいやと思って蹴りました。決めれてよかったです」。この同点ゴールが、びわこ大に勢いをもたらした。

 1-1で迎えた前半アディショナルタイムには、再びPKを獲得。しかし「2回目は緊張するので任せました(笑)」(佐藤)。今度はDF藤松航矢(4年=鳥栖U-18)がキッカーを務め、逆転に成功。前半を2-1で折り返した。そして後半5分、試合を決定づけるゴールを佐藤が決めてみせる。

 びわこ大はPA右手前でFKを得る。キッカーは佐藤。相変わらず雨は降りしきり、ピッチコンディションは最悪。距離のあるFKを直接狙うとは、会場の誰もが思っていなかった。だが「狙っていました」(佐藤)。右足で蹴り上げたボールは、一度ゴール右外に外れるかと思いきや、急激にカーブ。ゴール前へのクロスを想定していた相手GKの意表を突き、綺麗な放物線を描きながら、ゴールネットに刺さった。

 キックは努力を裏切らない。「止まっているボールもそうですし、今日の試合はそんなに出す場面はなかったんですけど、試合中のロングキックやスルーパスだったりとか、キックは自信があります」。4年間ずっと練習してきたというプレースキック。PKもCKもFKも、すべて佐藤がその役を担った。

 全国大会の初戦は、今季のびわこ大にとって悔しさが残る。夏の総理大臣杯では、山梨学院大に1-2で敗れていた。望月監督も「相手が素晴らしいチームだったんですけど、1回戦で負けるというのは選手からしたら屈辱。みんな屈辱の1回戦という思いだった」と振り返る。佐藤も「僕もチームも悔しい思いがあった」と語る。雨のインカレ初戦で、その悔しさを断ち切った。

 今年が大学サッカーの集大成となる佐藤。卒業後の進路はまだ未定だが「あまり意識していなくて、進路は考えていないです」。いま頭にあるのはチームの優勝。目の前の試合を一つひとつ勝っていくこと。「進路は諦め半分。吹っ切れたというか、チームのために頑張ろうっていう気持ちで、僕はいます」。無欲な高精度キッカーは、その武器を淡々と見せつけていく。

(取材・文 石川祐介)
●第70回全日本大学選手権(インカレ)特集

TOP