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徹底ハイプレス、山見にマンマーク…「相手に仕事をさせない」阪南大が準々決勝へ!! 関西王者・関西学院大が初戦で敗れる

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FW藤原雅弥(4年=瀬戸内高)が決勝点

[12.11 全日本大学選手権2回戦 阪南大 1-0 関西学院大 前橋総合]

 第70回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は11日、首都圏各地で2回戦を行い、前橋総合運動公園群馬電工陸上競技・サッカー場の第1試合は阪南大(関西4)が関西学院大(関西1)を1-0で破った。今季の関西学生リーグでは関西学院大が連勝していたが、シーズン最後のビッグマッチで阪南大が“三度目の正直”を達成。阪南大は14日の準々決勝で、福岡大(九州2)と対戦する。

 ともに関西を代表する強豪大学で、手の内を知り尽くした者同士の一戦。今季のリーグ戦では関西学院大が前期1-0、後期4-1と“シーズンダブル”を果たしていた中、この日はリベンジに燃える阪南大が立ち上がりから主導権を握った。

 阪南大が4-4-2のプレッシングで圧力をかけると、関西学院大は「生命線」(高橋宏次郎監督)のビルドアップが機能せず。前半11分には関西学院大DF山内舟征(3年=近江高)のクリアミスが阪南大MF松原大芽(3年=作陽高)に奪われ、たまらずエリア外でファウルしたGK松本龍典(4年=桐蔭学園高)にイエローカードが提示された。

 その後は一方的に阪南大ペース。前半15分、相手ゴールキックのインターセプトから松原のシュートに繋げると、同20分にはMF小田奏(1年=新潟U-18)のセットプレーを起点とする波状攻撃からDF野瀬翔也(1年=東邦高)がヘディングシュート。これは松本の好セーブに阻まれたが、跳ね返りを拾ったDF早川海瑠(3年=作陽高)の左足シュートも襲いかかった。

 さらに前半33分には右サイドで獲得したFKを早川がゴール前に送り込むと、野瀬が決定的なヘディングシュート。これはうまくミートしなかったが、同38分には前線でボールを奪って右サイドを崩し、果敢な攻め上がりを見せたMF原耕太郎(3年=西尾高)の右足シュートがゴール右をかすめた。

 そうして迎えた前半39分、阪南大がついに試合を動かした。MF工藤蒼生(3年=仙台ユース)の浮き球パスにFW藤原雅弥(4年=瀬戸内高)が反応すると、ループで狙ったシュートは松本に阻まれたが、浮き球を処理しようとしたDF山本祐也(3年=近大附高)が痛恨の空振り。このボールを拾った藤原が足を伸ばしてゴールに押し込み、先制点を奪った。直後、ハイプレスで早くも疲労が見えた藤原はFW池田修志(4年=神戸U-18)と交代。1回戦に続いてのゴールがこの日最後の大仕事となった。

 苦しくなった関西学院大は後半開始時、山本に代わってDF梅木絢都(4年=C大阪U-18)を右サイドバックに投入し、主将のDF本山遥(4年=神戸U-18/岡山内定)をセンターバックへ。するとビルドアップが落ち着きを見せ始め、後半10分には梅木の縦パスにMF濃野公人(2年=大津高)が抜け出し、ゴールにつながりそうなクロス攻撃に至った。

 そして後半16分、関西学院大は負傷明けのためベンチに控えていたFW山見大登(4年=大阪学院大高/G大阪内定)、MF安羅修雅(4年=履正社高)を投入。一気に勝負に出た。一方、阪南大は序盤から再三タメをつくっていたFW永井絢大(4年=九州国際大付高)に代わってMF津野ジュウリオ心(4年=豊川高)を起用。この采配が勝負を決める大きな鍵となった。

 津野は永井と同じ右サイドハーフのポジションに入ったが、役割は山見のマンマーク。実質指揮を執る須佐徹太郎副顧問(前監督)が繰り出したエース潰しの奇策だった。

「山見には何度もやられているんですよ。出てきた時にスピードの違いがあるし、ドリブルだけじゃない。クロスにも消えるところからピューって入ってくるからね。クリアするつもりが前に入られちゃう。それはスカウティングしても無理なので、いつマンツーでつかせるか」。身体能力の高い津野に全てを委ね、残りの10人対10人で逃げ切る作戦に打って出た。

 そこからは5バックで守る阪南大に、攻める関西学院大という構図。後半31分、関西学院大は波状攻撃からMF岡島温希(3年=浜松開誠館高)が豪快なボレーシュートを放つも、阪南大GK村田要(3年=熊本国府高)がスーパーセーブ。直後にもサイドを振った波状攻撃から山内のヘッドが阪南大ゴールを襲ったが、これも村田が神がかり的なセーブで救った。

 後半42分にはゴール正面からのFKを山見が狙うも、壁に直撃。アディショナルタイム6分にもFKのチャンスがあったが、MF渡邉英祐(4年=金光大阪高)のキックもゴールを破るには至らなかった。試合はそのままタイムアップ。阪南大が関西王者の関西学院大にリベンジを果たし、2016年度以来となる準々決勝に歩みを進めた。

「よくやってくれましたよ。勝利のためにいろんなことを我慢してやってくれた」。

 試合後、選手たちの奮闘を称えた阪南大の須佐副顧問は、“三度目の正直”として奏功した関西学院大対策のプレッシングに手応えを語った。

「相手に仕事をさせないための方策としてやる。リスクは負うけど、それをかけてでも相互カバーリングでやるしかない。それで負けたらもう負け。中途半端に様子を見て、相手につながれて後手を踏むなら、やらせないということで行こうと。それを嫌がる奴は出さない。全員ディフェンダーだと思ってやった」。

 一方の関西学院大は関西制覇でシードでこの大会に臨んだものの、悔しい初戦敗退。夏の総理大臣杯は出場できなかったため、全国未勝利でシーズンを終えた。

「阪南はいつもプレッシャーをかけてくるチームなので、いつもどおりかけてきているなという印象だった。来ているぶん空くところはあるので、突いていきたかったけど、なかなかそういう場面が出てこなかった」。そう反省点を語った高橋監督は「山見が出てきたらマンツーマンをつけてきたり、後ろを5枚にしてきたり、うちのことを研究もしていたと思うし、みんなから執念を感じた。そこでも上回られたと思う」と悔やんだ。

(取材・文 竹内達也)
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