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5月の大分デビュー直後に大怪我…宮崎産経大FW宇津元伸弥が“人生初の試練”乗り越えプロへ「1年目からゴールという結果に」

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[12.11 インカレ2回戦 明治大3-0宮崎産業経営大 夢の島]

 大学ラストマッチの終了を告げるホイッスルを聞いたFW宇津元伸弥(4年=鵬翔高/大分内定)の目に涙はなかった。逆にどこか達成感を漂わせた。「明治さんの強さを改めて実感して、自分たちの実力はこんなもんなんだなと改めて感じさせられました。やり切った感は凄くありました」。

 だだ唯一、悔いが残した場面があった。1点ビハインドの前半43分、宮崎産業経営大はFW田辺涼成(3年=鵬翔高)のスルーパスに斜めに走り込んだFW宇津元伸弥(4年=鵬翔高/大分内定)がゴール前に抜け出すと、左足で強烈なシュートを狙う。しかし枠右へと外してしまった。

 数少ないチャンスを決めきってこそエース。「決まっていれば流れも変わっていたかもしれない」。そう言って唇を噛んだ宇津元は「あれを決めきれる選手にならないといけないなと思いました」と更なる飛躍を誓った。

「4年間通してJリーグの内定を貰えたことは評価しています。チームとして目標としていた全国優勝に届かなかったことについては悔いが残りますが、みんなの悔しさをJリーグの舞台でぶつけて、Jリーグで活躍できる選手になりたいと思います」

 宇津元は今年2月に大分トリニータへの入団内定を発表。浦和レッズやヴィッセル神戸といったビッグクラブも関心を寄せる中で、いち早く獲得オファーを出してくれた大分に入団することを決めた。

 特別指定選手登録を済ませて迎えた今季は、5月5日のルヴァンカップの徳島戦で後半40分から途中出場してデビュー。「拍手しか声援が送れない状況でしたが、大分サポーターの拍手だけで緊張が解けた。5分間でしたが、幸せな時間でした」と振り返るかけがえのない瞬間になった。

 しかし直後に宇津元に試練が襲った。大分の練習に参加していた際に左足内側靭帯を損傷。人生初だという大怪我を負った。翌6月にメスを入れ、全治半年と言われたリハビリ期間に入ることになった。プロ入り前に「集大成で伝えたいこと」があったという笛真人監督は、最後の仕上げができなかったことを悔やむ。

 ただ幸いにもというべきか、今季もコロナ禍の影響でリーグ戦の開催は困難を極めた。9月に予定していたリーグ戦の再開も叶わなかったことで、10月に上位6チームと8チームによる順位決定戦を実施。上位3チームにインカレ出場権を与える特例方式を執ることになった。

 全治半年の診断を受けた宇津元だが、経過が順調だったこともあり、10月の特例大会に間に合わせるように準備をすることになった。結果的に4試合を戦った同大会で、最初の2試合を途中出場、ラスト2試合は先発出場し、3大会ぶりとなるインカレ出場へと導いた。

「トレーナーさんと相談しながらリハビリをして、最後に間に合わせた感じです。全国大会に合わせていたのでコンディションは戻った感じはするけど、アジリティがまだ戻っていない。これからキャンプもあるし、開幕に向けてコンディションを上げていきたいです」

 “人生初の試練”を乗り越えた宇津元の顔は、一段と逞しさを増した。

 来春からは正式に大分の一員として大分の地でプロキャリアをスタートさせることになる。一番の武器であるスピードに磨きをかけて、1年目から勝負をかけたいと力強く意気込む。「監督が変わるのでどうなるか分からないけど、ポジションはトップかシャドーになると思う。自分もシャドーが一番やりやすい。あとはとにかく1年目からゴールという結果にこだわりたい。2桁は取りたいと思っています」。

 そして“ライバル”との再戦も心待ちにする。同学年で湘南ベルマーレに入団する鹿屋体育大FW根本凌は、これからも意識していきたい存在だと話す。「根本も自分をライバルと言ってくれるし、自分もライバルだと思っている。1年でJ1に上がって対戦したいと思います」。残念ながらJ2降格の憂き目に遭ったが、天皇杯で決勝に進出するなど、今後の可能性を示す大分。そこにスピードスターが加わる化学反応を今から楽しみにしたい。
 
(取材・文 児玉幸洋)
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