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鳥栖アカデミーから福岡大までともに過ごした12年…倉員宏人と阿部海斗、ピッチでの再会を夢見て

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MF倉員宏人(左)とDF阿部海斗

[12.14 インカレ3回戦 福岡大1-1(PK2-4)阪南大 前橋陸]

 勢いを継続させるためにも、福岡大は1回戦から3戦連続でメンバーを変えずに臨んだ。序盤から運動量を武器にハイプレスで相手にプレッシャーをかけると、前半38分に獲得したPKをFW北條真汰(2年=鹿児島城西高)が沈めて先制する。

 直後に与えたCKからオウンゴールで同点とされた福岡大だったが、ロングスローやセットプレー、サイド攻撃などでチャンスを作り続ける。しかし延長後半にあったビッグチャンス、DF阿部海斗(4年=鳥栖U-18/熊本内定)が右サイドを仕掛けて出したマイナスパスをFW山口隆希(3年=鳥栖U-18)が狙ったが、ゴールネットが揺れることはなかった。

 PK戦では主将DF田中純平(4年=長崎総科大附高)ら2人目までが失敗。GK菅沼一晃(2年=浜松開誠館高)が1人をストップする奮闘をみせたが、勝ち上がりには届かなかった。乾真寛監督は「結果論ですが、得点直後の失点と、1-1のあとの勝ち越し点を決めないといけなかった」と悔やむも、「目標だった4強は取り逃したが、歴史に残る素晴らしい戦いをした選手たちを誇らしく思う」とコロナ禍で活動休止も経験した1年の最後に激闘を演じたイレブンを称えていた。

■鳥栖U-18出身の4年生

 口ひげを蓄えた厳つい風貌がひときわ目を引いた。しかしピッチを離れれば、気の優しい22歳の青年だ。「ちゃんと受け答え出来てました?こういうの慣れていなくて」。PK戦の惜敗後だったが、MF倉員宏人(4年=鳥栖U-18)は気丈に対応してくれた。

 近年の活躍が目覚ましいサガン鳥栖のアカデミー出身。倉員は初めてプリンスリーグを戦った2017シーズンを高校3年生で過ごした一員だった。ただ一学年上のFW田川亨介(FC東京)やMF石川啓人(山口)、一学年下のFW石井快征(愛媛)、その下にMF松岡大起(清水)やMF本田風智ら多くの高卒トップ昇格がいた中で、倉員らの世代は誰一人としてトップ昇格を勝ち取ることが出来なかった。

 倉員は阿部海斗と一緒に福岡大の門を叩いた。小学校5年生の時から鳥栖のアカデミーで切磋琢磨してきた仲。当然、トップ昇格を勝ち取ることが出来なかった悔しさも共有していた。「大学に入った時から2人で鳥栖に戻るという意識でやっていました」。特に倉員は1年生の時から出場機会を勝ち取り、ルーキーイヤーのインカレでも3試合連続でスタメン出場を果たすなど、存在感をみせていた。

 2年生になってから阿部もレギュラーを獲得。「倉員からのパスで生きるというか、自分の存在が生かされる存在。あいつが持ったら必ず裏に動き出すことを意識していました」。10年に及ぶ2人のコンビネーションは、その後も福岡大の大きな武器となった。

 しかし大学4年間の成長で先に評価を得たのは阿部だった。特長である動き出しや前への推進力、セットプレーのキッカーを任されるほどのキック精度。すべての面でレベルを上げた阿部は、ロアッソ熊本からのオファーを快諾。先にプロサッカー選手になるという夢の切符を掴んだ。

「海斗が先に決まったので焦りはあった」と倉員は心境を吐露するが、もちろんまだ、プロになるという自身の夢をあきらめたわけではない。現時点でJFLクラブから話は来ているようだが、今大会は最後のアピールの場として強い気持ちを持って臨んでいた。口ひげも「球際のところとかでも第一印象が大事」と少しでもアピールに繋がればという思いがあったという。ツイッターなどでは「ちょっと老けた」という指摘があったと笑うが、気にすることなく意思を貫いた。

 鳥栖の下部組織での8年間、福岡大での4年間。今までの人生の半分以上となる時間をともに過ごした2人は、いよいよ別々の道を歩むことになる。阿部は「個人として成長して、J1で戦える選手になりたい」と強く意気込む。そして2人はピッチでの再会という新たな夢を立てる。何より次のステージでも2人で培った経験を糧にサッカーと向き合っていくつもりだ。

(取材・文 児玉幸洋)
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