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仲間を信じてリハビリ…今春に大怪我負った阪南大の背番号14江口稜馬がインカレで8か月半ぶりピッチ

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後半17分までプレーしたMF江口稜馬(4年=野洲高)

[12.14 インカレ3回戦 福岡大1-1(PK2-4)阪南大 前橋陸]

 阪南大の背番号14が、最後の最後でスタメンに戻ってきた。11日の関西学院大戦に1-0で勝利した阪南大は、中2日で迎えた福岡大戦に先発4人を変更。須佐徹太郎副顧問は「両サイドの裏。この間の試合を見ても、意外と弱かった」と分析したことで、「裏パスが上手い」というMF江口稜馬(4年=野洲高)の起用を決断した。

 江口は1年生のころから阪南大のエースナンバーである14番を託される期待の選手。コロナ禍で変則開催となった昨年もリーグ戦の全10試合に出場。今春には関西選抜の背番号10としてデンソーカップチャレンジに出場するなど、今年の大学生を代表する選手の一人だ。

 しかし今年3月、江口を悲劇が襲った。天皇杯予選となる大阪サッカー選手権大会大学予選の大阪経済大戦で、左膝の前十字靭帯を断裂。人生初の大怪我で、シーズン絶望の危機に陥った。将来を決定づける大事なシーズンと意気込んでいただけに、目の前が真っ暗になった。

 ただすぐに気持ちを切り替えた。チームのために何が出来るか。試合前の準備などチームサポートも率先してこなした。「(怪我は)悔やんでも悔やみきれないですが、なった以上はしょうがないので」。仲間を信じて、復活の時を目指した。

 そんな江口の想いに応えようと、イレブンも奮起した。コロナ禍で活動休止を余儀なくされる難しいシーズン。リーグ終盤は過密日程となったが、阪南大は序盤の出遅れを取り戻すべく、怒涛の追い上げをみせて、最後にインカレ出場ラインぎりぎりの4位に浮上。江口に復帰の舞台を用意した。

 10月になってようやくボールを蹴り始めた江口も、「インカレに間に合えばベストだと思ってリハビリをやってきた」。もちろんすぐにコンディションをベストに戻すことが難しいことは分かっていたが、「こういう舞台に連れてきてくれた仲間への感謝」を示すため、「自分が今持っている力を最大限出して頑張ろう」と試みた。

 そして出番は左膝にメスを入れてから次の日でちょうど8か月となる14日の福岡大戦でやってきた。スタメンは前日に言われたが、何となくその前から予感はあったという。「僕にとっては復帰戦でしたが、サッカー部にとっては公式戦の1試合」。チームの勝利だけを考えて全力でプレーした。

 キャプテンマークを巻いて出場した江口は後半17分までプレー。あとはベンチで仲間の勝利を信じて応援し続けた。結果チームはPK戦勝ち。4大会ぶりとなるベスト4に進出した。

 18日の準決勝の相手は関東王者の流通経済大に決まった。江口も「流経さんが強いのは分かっているけど、僕らは気持ちで負けないように自信を持って戦いたい」と意識を十分にする。勝って決勝に進んでも相手は駒澤大か明治大となる。「関東の方がレベル自体は高い。でもいつまでも関東が上というわけにはいかない」。―ここでしっかりと叩きたい―。復活した阪南の背番号14が大学生活の集大成を飾るべく、悲願の関東狩りに挑む。

(取材・文 児玉幸洋)
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