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中高で経験した日本一には一歩届かず。新潟医療福祉大のYS横浜内定DF二階堂正哉が実感した4年間の意味とこれからへの希望

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新潟医療福祉大のキャプテン、DF二階堂正哉

[1.1 インカレ決勝 新潟医療福祉大 2-3 桐蔭横浜大 国立]

 それはもちろん日本一になりたかったけれど、このチームでここまで来ることができたことに、何よりも感謝したいと思っている。縁もゆかりもなかった土地で勝負することを決断した自分が、最高の仲間とスタッフに恵まれ、最後の試合をこんな素晴らしい舞台で戦うことができたのだから。

「1年生の頃からこの大会では悔しい想いをしてきて、『今年こそは結果を残そう』と強い気持ちで臨んだ大会でした。初戦から厳しい戦いが多い中で、チーム一丸となって戦って来ましたし、ここまで来られたのもチームメイト、監督、支えてくれている方たちのおかげです。今日の決勝ではうまく行かないことも多くて、逆転負けという形にはなりましたが、最後に素晴らしいスタジアムで、このチームで試合ができたことを凄く嬉しく思っています」。

 新潟医療福祉大(北信越1)の最終ラインを4年間に渡って支え続けた不動のキャプテン。DF二階堂正哉(4年=青森山田高)は新潟の地で得たかけがえのない日々の思い出を胸に、新たなサッカーキャリアへと足を踏み入れていく。

 大学最後の大会となった今回のインカレでは、二階堂にとって2つの嬉しい“再会”があった。まずは初戦。八戸学院大(東北2)とぶつかった試合では、青森山田の同級生に当たるDF北上龍哉(4年)がスタメンで登場してきたのだ。

 高校時代はトップチームのレギュラーとして活躍する二階堂に対して、北上は県2部リーグを戦うカテゴリーでプレーしていた。「中学校の時のトレセンでは一緒にやっていたんですけど、高校ではまったく違うチームで、あまり一緒にサッカーできなかったんです。大学の最後で対戦できるとは思わなかったので、同期としては嬉しかったですね」。試合は新潟医療福祉大が3-1で勝利したが、かつてのチームメイトと同じピッチに立てたことが、何より嬉しかった。

 準決勝の国士舘大(関東6)戦では、ファイナル進出を懸けて“盟友”と対峙する。青森山田高時代に鉄壁の堅陣をともに築き、全国制覇の歓喜を共有したGK飯田雅浩(4年)がその人だ。「今までも何回か国士舘とやれそうな機会があったんですけど、その前で負けてしまうようなことが多かったので、『やっとできるな』というワクワク感と、『絶対負けたくない』という気持ちがありました」。

 試合前にはキャプテン同士のコイントスで向かい合う一幕も。キックオフすると以前は自分の後ろに頼もしくそびえていた飯田が、常に視界に入ってくる。「なんか不思議な感じでしたね。普段試合をするキーパーよりもメッチャ注目して見ていました(笑)」。

 前半のうちに二階堂のフィードが起点になって先制点を奪った新潟医療福祉大は、そのまま1-0で逃げ切り、総理大臣杯との二冠を狙った国士舘大を撃破してしまう。「いざ試合をしてみて、『やっぱり良い選手だな』と思いましたし、試合が終わった後にはLINEをして、『ここでできて良かったな』とはお互いに言っていましたね。高校時代は良い時も悪い時も一緒に過ごしてきたので、同じ舞台に立ってマサの成長を見られたのは個人的に凄く嬉しかったです」。敵味方に分かれての“再会”を経て、どうしても日本一になりたい理由が、もう1つ増えた。

 桐蔭横浜大(関東4)と激突した決勝は、常にリードを奪う展開に。前半23分に高校の後輩、FW田中翔太(3年)が先制点をマーク。いったんは追い付かれたものの、31分にはDF神田悠成(3年)のロングスローにDF秋元琉星(2年)が競り勝つと、二階堂のボレーがゴールネットを揺らす。

「高校の時も結構ロングスローは強みだったので、秋元が逸らした後に相手の前に入る位置やタイミングはわかっていましたし、セカンドボールは絶対に隙が生まれたり、反応しにくい部分があるので、そこは狙い通りだったなと思います」。青森山田の2人の“後輩”が繋いだチャンスを、“先輩”がきっちり仕留め、新潟医療福祉大は再び1点のアドバンテージを手にする。

 最後は劇的な決勝弾に沈む。2-2で迎えた後半アディショナルタイム。目の前を走っていった相手のシュートがゴールネットに突き刺さると、二階堂は思わず天を仰ぐ。もう一度反撃するだけの時間は残っていない。直後にタイムアップのホイッスルが鳴り響き、白いユニフォームがバタバタとピッチに倒れ込む。青森山田中でも、青森山田高でも経験した日本一には、あと一歩で届かなかった。

「最後の失点もそうですけど、相手のフォワードにしっかりやられたなと。悪い時間帯が後半は続く中で、それを変えられなかったのは自分にも責任があるなと思います。今日の試合だけを見れば、相手がかなりレベル的にも上回っていたなという感想です」。冷静に試合を振り返った二階堂は、改めて新潟医療福祉大で過ごした4年間の意味をこう語っている。

「今回決勝まで来て、最後に勝ち切れなかったところは自分たちの弱さが出てしまったのかなと思いますけど、中学、高校と最後に良い結果で終わった中で、大学でもここまで来られるとは思っていなかったというのが正直な気持ちでした。ここまで来られたというのは1年生から4年間、日々のトレーニングを厳しくやってきた証ですし、自信を持ってやってきたことが正しかったと言えるのかなって」。

「確かに関東の大学が地方の大学よりもレベルが高いのは確かですし、『見てくれる人が多いのはうらやましいな』と率直に思いますけど、実際にどこにいても自分次第というか、自分が何をするかでいろいろなことが変わるのは、このチームで4年間やってみて感じました。地方だと目立つ機会がこのインカレと総理大臣杯に絞られてくるので、その2つの全国大会に懸ける気持ちは強いですし、それを目指して日々のトレーニングに長い期間を掛けて取り組んでこれたので、自分も新潟の大学に来て良かったなと思います」。

 この春からはY.S.C.C.横浜でJリーガーとしてのキャリアをスタートさせる。東京ヴェルディに入団する飯田はもちろん、既にプロの世界へ飛び込んでいる檀崎竜孔(ブリスベン・ロアー)や三國ケネディエブス(福岡)、天笠泰輝(群馬)、バスケス・バイロン(東京V)といった青森山田の同級生も、ここからは今まで以上に意識すべきライバルだ。

「この大学の卒業生として、Jリーグで活躍することは後輩たちの目標にも刺激にもなると思っているので、今年から新しいステージで戦うことになりますが、試合に出ることは大事なことだと考えています。ただ、正直に言って『今日のプレーでは上で戦っていけないな』と感じたので、そこはもう始動の日から自分の成長のために、これまでよりも真摯に取り組んでいかないといけないなと思いました」。

 この国立競技場に、今度はプロサッカー選手として戻ってくる日を夢見て。二階堂の新たな挑戦は、多くの人の期待と大きな希望に彩られている。



(取材・文 土屋雅史)
●第71回全日本大学選手権(インカレ)特集

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