ゴールライン際で壁になった司令塔MF徳永涼「今年の筑波は最後のところで絶対にやらせない」”早期プロ”多数輩出も関東制覇→日本一王手、強さの理由は
MF
[12.24 インカレ準決勝 日本体育大 0-3 筑波大 カンセキ]
筑波大が誇る司令塔が、まるで熟練ディフェンダーのような「壁」となってチームを救った。
1-0で迎えた後半立ち上がり、筑波大は日本体育大の猛攻に晒されるなか、自陣ゴール前で強さを見せた。なかでも勝負を分けたのは後半6分のシーン。波状攻撃から繰り出されたFW天野悠斗(1年)の決定的なシュートをMF徳永涼(3年=前橋育英高)がゴールライン上でブロックしたことで、失点モノのピンチを脱した。
ボランチで巧みに試合を支配する徳永だが、持ち前の状況判断力はこの場面でも活きていた様子。コンマ数秒の遅れが致命的になりかねない緊迫の場面だったが、徳永は次のように淡々と振り返った。
「GKの(佐藤)瑠星くんが出られない範囲のカバーというポジショニングをしていて、相手のそらしがペナルティマーク付近に落ちた時、相手が左足だったので自分の右側に来るよりは左足で巻いて外側に狙ってくるというのは相手の蹴る瞬間のモーションで分かったので、そっちにちょっと身体を運びながらボールだけを見て……という形でやっていたら身体に当たったという感じですね」
そして止める瞬間は頼れるチームメートの姿が自らに重なっていた。
身体を傾けずに相手と正対し、腕を畳んだまま受け止める完璧なブロック姿勢はDF小川遼也(3年)やDF池谷銀姿郎(3年)から日々学び取ったもの。「日頃から筑波では小川とギンが『壁になる』というのを言ってるんですが、彼らのプレーを見ていたのでそのイメージでいきました(笑)」。屈強なフィジカルと賢い駆け引きを兼ね備えるCB陣との日常がチームを危機から救う原動力となった。
またチーム全体で見れば、劣勢の中でも焦れることなく、守備に徹する意思統一が見事だった。徳永によると、この守備こそが今季の筑波の特色なのだという。
「まず今年の筑波というのは本当に守備が堅いし、全員でハードワークして最後のところで絶対にやらせないというチームだと思っている。誰かがというわけじゃなく、全員がそういう意識でプレーしているし、『最後はやらせない』というのをチームの認識として作り上げてきたなかで、あの時間帯もみんなが割り切って『今は耐える時間だ』となっていたと思う。自分の中でもあの展開の中で、相手はうまくシャドーの2人が斜めに降りてきて、自分たち(ボランチ)が出て行ったらワンタッチで中を使われてみたいな構図があったので、その中でも自分の外側、あるいは前でプレーさせて、自分の後ろにボールが運ばれないようにというのは意識していた」
その意識が統一できるのも、熾烈な関東大学リーグを制した今も慢心とは無縁にあるからだ。徳永は次のようにチームのメンタリティーを分析する。
「たぶん自分たちを強いとは思っていなくて、その基盤には全員でゴールを守れるというのがあるから自分たちはギリギリのゲームを勝ち上がっているという謙虚さがチームにあると思う。それは僕自身もある。決してビッグプレーヤーがいるから頼りになるというのではなく、今年の筑波らしい謙虚さ、したたかさがこういう展開でも失点しない流れにつながっているのかなと思います」
こうして一人一人がチームのための役割に徹することで、約20分間にわたる劣勢を無失点で切り抜けた結果、後半25分に一発のカウンターをMF山崎太新(4年)が仕留めて追加点を奪取。さらに後半アディショナルタイムにはFW小林俊瑛(3年)のダメ押しゴールも決まり、「したたか」という言葉がふさわしい3-0の完勝でインカレ決勝への切符を掴んだ。
決勝戦の相手は関東2位の国士舘大。リーグ戦で頂点を競いながらも、2戦2勝と相性の良いライバルだ。しかし、カップ戦では9年ぶりの決勝進出とあり、日本一に飢える筑波に楽観的な向きはない。
「自分たちはトーナメントで言ったら圧倒的チャレンジャーなので。昨年はベスト8、その前は準決勝で負けて、その時の『何かが足りなかった』という主将たちの言葉からスタートした今年のチームなので、まずはチャレンジャーであるという認識。国士舘とは2回やっていてどういうチームかは分かるけど、筑波のサッカーをすれば先手に回ることができると思うので、うまくゲームを運んで後は総合力で勝ちたいなと思います」
過去の経験で味わった一発勝負の怖さと、関東大学リーグを通じて積み重ねてきた自信。その両方を持って決戦に挑んでいく構えだ。
■早期プロ入りが相次ぐ中で…
今季の筑波大は現4年生世代のMF加藤玄(名古屋)、DF安藤寿岐(鳥栖)、DF諏訪間幸成(横浜FM)がシーズン開幕前までにプロ入りし、夏にはFW内野航太郎(ブレンビー)も退部して欧州挑戦を開始。これほど多くの大学トップ選手を欠きながら好成績を残しているという点でも、大学サッカー界に大きなインパクトを与えている。
そうした中、大学サッカーで戦い続ける選手たちにも「残された側」といったようなネガティブな印象はない様子だ。徳永は今大会グループリーグ第2節・東海大戦(◯4-0)の結果を例に挙げ、相次ぐ“早期プロ入り”について前向きな印象を語った。
「抜ける人がいてもスタッフ含めた全員がしっかりと日常で準備をしているのが筑波の強いところ。実際にグループステージ第2戦で東海大相手にゴールを決めたり、アシストした選手というのは1戦目に出ていない選手で、もし今の4年生の3人や内野がいたら出番が回らなかったかもしれない。そこは1年生も、自分たちも含めて常に準備をしていたからこそ、怖いものはない。逆にどんどん送り出してあげられる組織だし、抜けるという判断をした選手に『行ってこいよ』と言えるのが筑波の強みかなと思います」
東海大戦では初戦・常葉大戦(◯1-0)から先発メンバー5人を入れ替え、FW小林俊瑛(3年=大津高)が2ゴール、FW小松悠太(3年=市立浦和高)が1ゴール1アシストの活躍。グループリーグを通じて1年生のMF矢田龍之介(清水ユース)、DF布施克真(日大藤沢高)、FW大谷湊斗(昌平高)、FW山下景司(大津高)、DF五嶋夏生(同)が揃って先発出場したことも含め、選手層の厚みを示したことに価値を置いているようだ。
一方、こうした動きが続くのであれば、次は現在の3年生が早期プロ入り対象。高校卒業時にもJクラブの関心を集めており、プロ入りの選択肢もある中で進学した筑波大で1年時から主力を担う徳永の動向には当然、注目が集まるところだ。
それでも徳永は早急に答えを出すつもりはない。「もちろん大学で成長できることもあるし、プロじゃないと見えない景色もある。そこは自分が目標にしている2030年のW杯に出るということからの逆算で動きたいと思っている。ただ、それがどこになるかというのはまずインカレが終わってからいろいろと決めていきたいなと思います」。いまは目の前のインカレに全ての力を注ぐ構えだ。
(取材・文 竹内達也)
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筑波大が誇る司令塔が、まるで熟練ディフェンダーのような「壁」となってチームを救った。
1-0で迎えた後半立ち上がり、筑波大は日本体育大の猛攻に晒されるなか、自陣ゴール前で強さを見せた。なかでも勝負を分けたのは後半6分のシーン。波状攻撃から繰り出されたFW天野悠斗(1年)の決定的なシュートをMF徳永涼(3年=前橋育英高)がゴールライン上でブロックしたことで、失点モノのピンチを脱した。
ボランチで巧みに試合を支配する徳永だが、持ち前の状況判断力はこの場面でも活きていた様子。コンマ数秒の遅れが致命的になりかねない緊迫の場面だったが、徳永は次のように淡々と振り返った。
「GKの(佐藤)瑠星くんが出られない範囲のカバーというポジショニングをしていて、相手のそらしがペナルティマーク付近に落ちた時、相手が左足だったので自分の右側に来るよりは左足で巻いて外側に狙ってくるというのは相手の蹴る瞬間のモーションで分かったので、そっちにちょっと身体を運びながらボールだけを見て……という形でやっていたら身体に当たったという感じですね」
そして止める瞬間は頼れるチームメートの姿が自らに重なっていた。
身体を傾けずに相手と正対し、腕を畳んだまま受け止める完璧なブロック姿勢はDF小川遼也(3年)やDF池谷銀姿郎(3年)から日々学び取ったもの。「日頃から筑波では小川とギンが『壁になる』というのを言ってるんですが、彼らのプレーを見ていたのでそのイメージでいきました(笑)」。屈強なフィジカルと賢い駆け引きを兼ね備えるCB陣との日常がチームを危機から救う原動力となった。
またチーム全体で見れば、劣勢の中でも焦れることなく、守備に徹する意思統一が見事だった。徳永によると、この守備こそが今季の筑波の特色なのだという。
「まず今年の筑波というのは本当に守備が堅いし、全員でハードワークして最後のところで絶対にやらせないというチームだと思っている。誰かがというわけじゃなく、全員がそういう意識でプレーしているし、『最後はやらせない』というのをチームの認識として作り上げてきたなかで、あの時間帯もみんなが割り切って『今は耐える時間だ』となっていたと思う。自分の中でもあの展開の中で、相手はうまくシャドーの2人が斜めに降りてきて、自分たち(ボランチ)が出て行ったらワンタッチで中を使われてみたいな構図があったので、その中でも自分の外側、あるいは前でプレーさせて、自分の後ろにボールが運ばれないようにというのは意識していた」
その意識が統一できるのも、熾烈な関東大学リーグを制した今も慢心とは無縁にあるからだ。徳永は次のようにチームのメンタリティーを分析する。
「たぶん自分たちを強いとは思っていなくて、その基盤には全員でゴールを守れるというのがあるから自分たちはギリギリのゲームを勝ち上がっているという謙虚さがチームにあると思う。それは僕自身もある。決してビッグプレーヤーがいるから頼りになるというのではなく、今年の筑波らしい謙虚さ、したたかさがこういう展開でも失点しない流れにつながっているのかなと思います」
こうして一人一人がチームのための役割に徹することで、約20分間にわたる劣勢を無失点で切り抜けた結果、後半25分に一発のカウンターをMF山崎太新(4年)が仕留めて追加点を奪取。さらに後半アディショナルタイムにはFW小林俊瑛(3年)のダメ押しゴールも決まり、「したたか」という言葉がふさわしい3-0の完勝でインカレ決勝への切符を掴んだ。
決勝戦の相手は関東2位の国士舘大。リーグ戦で頂点を競いながらも、2戦2勝と相性の良いライバルだ。しかし、カップ戦では9年ぶりの決勝進出とあり、日本一に飢える筑波に楽観的な向きはない。
「自分たちはトーナメントで言ったら圧倒的チャレンジャーなので。昨年はベスト8、その前は準決勝で負けて、その時の『何かが足りなかった』という主将たちの言葉からスタートした今年のチームなので、まずはチャレンジャーであるという認識。国士舘とは2回やっていてどういうチームかは分かるけど、筑波のサッカーをすれば先手に回ることができると思うので、うまくゲームを運んで後は総合力で勝ちたいなと思います」
過去の経験で味わった一発勝負の怖さと、関東大学リーグを通じて積み重ねてきた自信。その両方を持って決戦に挑んでいく構えだ。
■早期プロ入りが相次ぐ中で…
今季の筑波大は現4年生世代のMF加藤玄(名古屋)、DF安藤寿岐(鳥栖)、DF諏訪間幸成(横浜FM)がシーズン開幕前までにプロ入りし、夏にはFW内野航太郎(ブレンビー)も退部して欧州挑戦を開始。これほど多くの大学トップ選手を欠きながら好成績を残しているという点でも、大学サッカー界に大きなインパクトを与えている。
そうした中、大学サッカーで戦い続ける選手たちにも「残された側」といったようなネガティブな印象はない様子だ。徳永は今大会グループリーグ第2節・東海大戦(◯4-0)の結果を例に挙げ、相次ぐ“早期プロ入り”について前向きな印象を語った。
「抜ける人がいてもスタッフ含めた全員がしっかりと日常で準備をしているのが筑波の強いところ。実際にグループステージ第2戦で東海大相手にゴールを決めたり、アシストした選手というのは1戦目に出ていない選手で、もし今の4年生の3人や内野がいたら出番が回らなかったかもしれない。そこは1年生も、自分たちも含めて常に準備をしていたからこそ、怖いものはない。逆にどんどん送り出してあげられる組織だし、抜けるという判断をした選手に『行ってこいよ』と言えるのが筑波の強みかなと思います」
東海大戦では初戦・常葉大戦(◯1-0)から先発メンバー5人を入れ替え、FW小林俊瑛(3年=大津高)が2ゴール、FW小松悠太(3年=市立浦和高)が1ゴール1アシストの活躍。グループリーグを通じて1年生のMF矢田龍之介(清水ユース)、DF布施克真(日大藤沢高)、FW大谷湊斗(昌平高)、FW山下景司(大津高)、DF五嶋夏生(同)が揃って先発出場したことも含め、選手層の厚みを示したことに価値を置いているようだ。
一方、こうした動きが続くのであれば、次は現在の3年生が早期プロ入り対象。高校卒業時にもJクラブの関心を集めており、プロ入りの選択肢もある中で進学した筑波大で1年時から主力を担う徳永の動向には当然、注目が集まるところだ。
それでも徳永は早急に答えを出すつもりはない。「もちろん大学で成長できることもあるし、プロじゃないと見えない景色もある。そこは自分が目標にしている2030年のW杯に出るということからの逆算で動きたいと思っている。ただ、それがどこになるかというのはまずインカレが終わってからいろいろと決めていきたいなと思います」。いまは目の前のインカレに全ての力を注ぐ構えだ。
(取材・文 竹内達也)
●第74回全日本大学選手権(インカレ)特集
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