W杯直前に異例の対外試合なし…完全非公開でU-19日本代表に“仮想W杯”託した森保監督「親善試合より良かった」
取材に応じた
北中米ワールドカップに臨む日本代表はメキシコ・モンテレイでの事前キャンプ最終日の7日、U-19日本代表とのトレーニングマッチを完全非公開で行った。日本サッカー協会の発表によると、DF鈴木淳之介(コペンハーゲン)とFW塩貝健人(NECナイメヘン)のゴールで2-1の勝利。終了後、報道陣の取材に応じた森保一監督は「普通に親善試合をやるよりも良かったと試合を終えてから思った」と大きな手応えを口にした。
日本代表は5月31日のキリンチャレンジカップ・アイスランド戦(◯1-0)後、今月2日に事前キャンプ地のモンテレイに到着。14日に北中米W杯グループリーグ初戦のオランダ戦を控えるなか、キャンプ中に一度も他国との対外試合を行わないという異例の調整法で本大会に臨もうとしている。
森保監督はアイスランド戦後の記者会見で、この調整法に次のように言及した。
「フィジカルコーチらコーチングスタッフのミーティングで何度もやり取りをしたが、フィジカルコーチからは『これまでのコンディションの作り方に、W杯に向けてU-19の選手たちとトレーニングをする機会をしっかり作れば、コンディション的に問題ない』ということで提案を受け、練習試合、親善試合をシニアのチームとはしないということで決めた。それがベストということで、何度も私も聞き返したし、議論したが、ベストの選択としてU-19とのゲームができれば良い状態でW杯に挑めるということで決めた」
これまでもメディカル領域、フィジカル領域においては専門知への信頼と責任をたびたび口にしてきた森保監督。W杯直前の準備という重要局面においても選手のコンディションを少しでも上げるべく、広島時代から共に戦ってきた松本良一フィジカルコーチを信じての決断だった。
そんな森保監督はU-19日本代表とのトレーニングマッチ終了後、自らの感覚で大きな手応えを語った。「U-19の選手がすごく良かった。みんな上手かったし、自分たちもどんどん時間を追うごとにやれるんだという自信が出てきて、W杯に向けて準備となるゲームができた」。さらに「自分たちのタイミングで試合ができ、相手のレベルが高いということで、普通に親善試合をやるよりも今日やったゲームのほうが良かった。試合を終えてから嘘偽りなくそう思った」とまで言い切った。
親善試合に比べて大きな手応えを得られた理由の一つは、親善試合だと対戦国とのさまざまな調整を迫られるのに対し、U-19日本代表との試合であればチームの都合に合わせて自由に形式を決められるということにあった。
森保監督によると、トレーニングマッチは蒸し暑さの残る午後4時キックオフで始まり、試合時間は35分×4本の変則マッチ。それも選手たちのコンディションに合わせ、3〜4本目の試合時間を変更することも念頭に入れて準備していたのだという。また2本目と4本目の終了後にはそれぞれPK戦を行ったとのこと。データがモノを言うPK戦は親善試合で準備しにくいが、情報が漏れない非公開試合で行えるのは大きなメリットだ。
「いろんな想定をしてトレーニングマッチをやる中で臨機応変にできるところは本当に大きなメリットがある。国際親善試合となれば4本やるということはなかなか難しいし、そこでPKを挟むのもU-19が相手だからこそで、代表ファミリーだからこそできること。W杯に向けていい準備になっていると思う」(森保監督)
さらに対戦相手のU-19日本代表には、W杯の戦いを想定した“仮想◯◯”を託していたという。
まずは初戦でオランダとの対決を控えているため、対オランダ想定で「どういう戦術で来るかは大会が始まってみないとわからないし、初戦の試合が始まってみないとわからないところもあるが、仮想という意味ではやってもらった」と森保監督。「その中でも仮想どおりだけじゃなく、U-19の選手が挑んでくるようにという部分でお願いしていた」といい、プレッシングなども対戦国の相手仕様に調整していたとみられる。
そんなU-19日本代表の尽力もあり、試合は拮抗した展開となり、1本目と2本目を無得点で終えたA代表。続く3本目にはMF鈴木唯人(フライブルク)の右CKで生んだ混戦から鈴木淳が押し込み、4本目にはDF冨安健洋(アヤックス)のロングフィードに抜け出した塩貝が得点を記録したというが、結果としては2-1の勝利にとどまった。
苦戦の背景には選手たちがあえて負荷をかけながらコンディションを調整していたこともあったようだ。森保監督は「1本目、2本目がすごく暑くて、3本目からは日が陰ってきたとはいえ、すごく暑い状態でプレーした。さらにU-19の選手たちが2日前、メキシコと対戦して、勝った自信もある中で我々A代表に挑んでくるという姿勢もあり、非常に強度の高い試合ができた」と前向きに振り返った。
試合中には明確な課題も出た。唯一の失点は191cmの長身ストライカーFW尾谷ディヴァインチネドゥ(FC東京)に決められたもの。森保監督は「彼が持っているフィジカルをターゲットとして、ラフなボールが来て、スクランブルになってDFが処理できず、シュートまで持ち込まれた。綺麗に崩された感じではないが、U-19側からするとタレントの良さを活かして、その特徴がよく出たと思う」と振り返り、次のように改善点を話した。
「多少は連係ミスがあったりとかもした。相手が綺麗に崩してくるだけとは限らないし、より一人ずつが局面で勝っていくということはこれまで通りにしっかりコンセプトとして選手たちにはプレーを考えてもらいながら、お互いチームとして水漏れがないように連係の部分は高めていかないといけない。綺麗に崩されるとか、個の突破・単独突破については対応できる部分がより明確になると思うが、ラフなボールがゴール前に送られてきた時には誰がボールにチャレンジするか、誰がカバーに行くのか等々、連係がうまくいかない可能性が出てくるところもある」
奇しくもこうした課題はグループリーグで対戦するオランダ、チュニジア、スウェーデンのいずれも警戒しなければならない要素。森保監督は「自分たちのミスでやられることがないように、ここからの合宿でさらに攻撃の仕掛けと連係を上げていきたい」と改善を誓い、攻撃面にも「フィジカル的にキツかった中、連係の部分で合わなかったり、ゴール前にいい形で攻撃してチャンスを作るという部分が少し少なかった。実際にシュートの本数も多くなかったし、暑いから少しゆっくりのテンポになったところはあったが、よりゴールに向かって迫力のある攻撃をしていければ」と伸びしろを見つめた。
とはいえ、本大会に向けての課題がここで明確に出たのはポジティブ要素。それどころかこの試合で新たなケガ人が出ることはなく、別調整が続くMF遠藤航以外の選手が全てピッチに立ったことで、本大会仕様のコンディション作りは順調の様子だ。
森保監督はベースキャンプも帯同するU-19日本代表の選手たちに「我々にとっても良い準備だし、代表ファミリー全体のレベルアップという意味でA代表の刺激、W杯の刺激をU-19の選手たちに身近に感じてもらえるのは彼らの成長にもすごくつながると思う」と期待を寄せつつ、充実の表情で最後の実戦を終えた。
(取材・文 竹内達也)
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日本代表は5月31日のキリンチャレンジカップ・アイスランド戦(◯1-0)後、今月2日に事前キャンプ地のモンテレイに到着。14日に北中米W杯グループリーグ初戦のオランダ戦を控えるなか、キャンプ中に一度も他国との対外試合を行わないという異例の調整法で本大会に臨もうとしている。
森保監督はアイスランド戦後の記者会見で、この調整法に次のように言及した。
「フィジカルコーチらコーチングスタッフのミーティングで何度もやり取りをしたが、フィジカルコーチからは『これまでのコンディションの作り方に、W杯に向けてU-19の選手たちとトレーニングをする機会をしっかり作れば、コンディション的に問題ない』ということで提案を受け、練習試合、親善試合をシニアのチームとはしないということで決めた。それがベストということで、何度も私も聞き返したし、議論したが、ベストの選択としてU-19とのゲームができれば良い状態でW杯に挑めるということで決めた」
これまでもメディカル領域、フィジカル領域においては専門知への信頼と責任をたびたび口にしてきた森保監督。W杯直前の準備という重要局面においても選手のコンディションを少しでも上げるべく、広島時代から共に戦ってきた松本良一フィジカルコーチを信じての決断だった。
そんな森保監督はU-19日本代表とのトレーニングマッチ終了後、自らの感覚で大きな手応えを語った。「U-19の選手がすごく良かった。みんな上手かったし、自分たちもどんどん時間を追うごとにやれるんだという自信が出てきて、W杯に向けて準備となるゲームができた」。さらに「自分たちのタイミングで試合ができ、相手のレベルが高いということで、普通に親善試合をやるよりも今日やったゲームのほうが良かった。試合を終えてから嘘偽りなくそう思った」とまで言い切った。
親善試合に比べて大きな手応えを得られた理由の一つは、親善試合だと対戦国とのさまざまな調整を迫られるのに対し、U-19日本代表との試合であればチームの都合に合わせて自由に形式を決められるということにあった。
森保監督によると、トレーニングマッチは蒸し暑さの残る午後4時キックオフで始まり、試合時間は35分×4本の変則マッチ。それも選手たちのコンディションに合わせ、3〜4本目の試合時間を変更することも念頭に入れて準備していたのだという。また2本目と4本目の終了後にはそれぞれPK戦を行ったとのこと。データがモノを言うPK戦は親善試合で準備しにくいが、情報が漏れない非公開試合で行えるのは大きなメリットだ。
「いろんな想定をしてトレーニングマッチをやる中で臨機応変にできるところは本当に大きなメリットがある。国際親善試合となれば4本やるということはなかなか難しいし、そこでPKを挟むのもU-19が相手だからこそで、代表ファミリーだからこそできること。W杯に向けていい準備になっていると思う」(森保監督)
さらに対戦相手のU-19日本代表には、W杯の戦いを想定した“仮想◯◯”を託していたという。
まずは初戦でオランダとの対決を控えているため、対オランダ想定で「どういう戦術で来るかは大会が始まってみないとわからないし、初戦の試合が始まってみないとわからないところもあるが、仮想という意味ではやってもらった」と森保監督。「その中でも仮想どおりだけじゃなく、U-19の選手が挑んでくるようにという部分でお願いしていた」といい、プレッシングなども対戦国の相手仕様に調整していたとみられる。
そんなU-19日本代表の尽力もあり、試合は拮抗した展開となり、1本目と2本目を無得点で終えたA代表。続く3本目にはMF鈴木唯人(フライブルク)の右CKで生んだ混戦から鈴木淳が押し込み、4本目にはDF冨安健洋(アヤックス)のロングフィードに抜け出した塩貝が得点を記録したというが、結果としては2-1の勝利にとどまった。
苦戦の背景には選手たちがあえて負荷をかけながらコンディションを調整していたこともあったようだ。森保監督は「1本目、2本目がすごく暑くて、3本目からは日が陰ってきたとはいえ、すごく暑い状態でプレーした。さらにU-19の選手たちが2日前、メキシコと対戦して、勝った自信もある中で我々A代表に挑んでくるという姿勢もあり、非常に強度の高い試合ができた」と前向きに振り返った。
試合中には明確な課題も出た。唯一の失点は191cmの長身ストライカーFW尾谷ディヴァインチネドゥ(FC東京)に決められたもの。森保監督は「彼が持っているフィジカルをターゲットとして、ラフなボールが来て、スクランブルになってDFが処理できず、シュートまで持ち込まれた。綺麗に崩された感じではないが、U-19側からするとタレントの良さを活かして、その特徴がよく出たと思う」と振り返り、次のように改善点を話した。
「多少は連係ミスがあったりとかもした。相手が綺麗に崩してくるだけとは限らないし、より一人ずつが局面で勝っていくということはこれまで通りにしっかりコンセプトとして選手たちにはプレーを考えてもらいながら、お互いチームとして水漏れがないように連係の部分は高めていかないといけない。綺麗に崩されるとか、個の突破・単独突破については対応できる部分がより明確になると思うが、ラフなボールがゴール前に送られてきた時には誰がボールにチャレンジするか、誰がカバーに行くのか等々、連係がうまくいかない可能性が出てくるところもある」
奇しくもこうした課題はグループリーグで対戦するオランダ、チュニジア、スウェーデンのいずれも警戒しなければならない要素。森保監督は「自分たちのミスでやられることがないように、ここからの合宿でさらに攻撃の仕掛けと連係を上げていきたい」と改善を誓い、攻撃面にも「フィジカル的にキツかった中、連係の部分で合わなかったり、ゴール前にいい形で攻撃してチャンスを作るという部分が少し少なかった。実際にシュートの本数も多くなかったし、暑いから少しゆっくりのテンポになったところはあったが、よりゴールに向かって迫力のある攻撃をしていければ」と伸びしろを見つめた。
とはいえ、本大会に向けての課題がここで明確に出たのはポジティブ要素。それどころかこの試合で新たなケガ人が出ることはなく、別調整が続くMF遠藤航以外の選手が全てピッチに立ったことで、本大会仕様のコンディション作りは順調の様子だ。
森保監督はベースキャンプも帯同するU-19日本代表の選手たちに「我々にとっても良い準備だし、代表ファミリー全体のレベルアップという意味でA代表の刺激、W杯の刺激をU-19の選手たちに身近に感じてもらえるのは彼らの成長にもすごくつながると思う」と期待を寄せつつ、充実の表情で最後の実戦を終えた。
(取材・文 竹内達也)
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