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柿谷に徳島時代の恩師・美濃部監督がエール「もっとアピールしてええんちゃう?」

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 かつての愛弟子の活躍を、厳しくも優しい目で、今も見守っている。現在、JFLのAC長野パルセイロで指揮を執る美濃部直彦監督は、21日の代表デビュー戦となった中国戦(3-3)で、1ゴールを挙げたFW柿谷曜一朗の活躍について「メディアが大きく取り上げ過ぎです。デビュー戦でのゴールは、隣の工藤(壮人)も取っていた」と話す。そして「そういうことに踊らされず、足元を見てやってくれたら、今後ももっともっと良くなっていくと思う」と、言葉を続けた。

 柿谷は今季、セレッソ大阪のエースナンバーである8番を付け、17節を終えて10ゴールと、得点ランクでも5位に入り、注目を一身に集めている。その活躍を受けて美濃部監督も、柿谷を再生させた指揮官としての取材が増えているという。だが、すべては柿谷に才能があったからだと、美濃部監督は強調する。

「僕が育てたというよりも、彼がもともと持っていたものをコンスタントに発揮できるようになっただけ。才能はもともと持っている選手だったから、今、再び輝けている。プロになって7年が経つけど、曜一朗はまだ23歳。だから、もう一回サッカー人生をやり直せた。大卒で7年目となれば、もう28、29歳になっているけど、アイツは16歳でプロ契約していた。だから一回壁を知ってからも、自分のキャリアを取り戻せた。徳島での2年が生きていると言われるけど、もし、今29歳だったらパフォーマンスも下がり気味になってくる頃だし、代表入りは難しかっただろうからね。若いうちから才能があってプロ契約できて、壁にぶつかっても立ち直れた。早くデビューできたことはアイツの才能だし、悪かったところをプラスに変えられたことも、アイツの才能かもしれない。だから、また23歳で輝けている」

 日本代表デビュー戦で決めたヘディングでのゴールについては「あの点が入った形は、C大阪がやっているニアに入って行く形。クルピ監督が、ずっとやっているやり方。C大阪でやっている良さが出せたゴールだったね」。そう分析して「徳島ではFWに良い選手がいたからSHで使っていたけど、今はC大阪でFWでプレーして、より結果、数字を出しやすい状況になった。それによってストライカーの能力が表現できている」と、目を細めた。

 だが、「ストライカーなら」と、注文も忘れない。「工藤のゴールをアシストした場面、ひとつ前のタイミングで曜一朗にも打てるタイミングがあったでしょ。個人的にはあそこで打ってほしかった。もちろん、パスコースが見えているのも重要だけど、打てた。パスも悪くないですよ。けれど、もっとアピールしてもいいんちゃうかな。1点取ったら、2点目。2得点目取ったら3点目っていう、ストライカーのメンタリティでやってほしい」

「自分がかかわってきた選手の成長、代表のようなポジションでやってくれることは嬉しい」。柿谷がブラジルW杯の舞台に立つことを「もちろん、期待していますよ」と話すかつての指揮官。恩返しのためにも、柿谷は東アジア杯の残り2戦で、デビュー戦を越えるインパクトをアルベルト・ザッケローニ監督に残したいところだ。

(取材・文 河合拓)

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