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手倉森マジック炸裂!! 「ひらめき」の先発変更で“鬼門”突破

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[1.22 リオデジャネイロ五輪アジア最終予選準々決勝 U-23日本 3-0(延長) U-23イラン アブドゥッラー・ビン・ハリーファ・スタジアム]

 ひらめきだと言う。イラン戦で途中出場ながらも決勝点を奪ったMF豊川雄太(岡山)は、前日練習で主力組で調整して「セットプレーも僕しか蹴っていなかった」と話したように、手倉森誠監督も先発でピッチに送り込もうとしていたようだ。しかし、彼の持ち場となる左サイドハーフにはMF中島翔哉(F東京)がスタメンで起用された。

 イラン戦に送り込んだスタメンは「相手の高さが怖かったので、ヘディングが強い方」。164センチの中島と173センチの豊川。当然、後者の方が「ヘディングが強い方」になるが、指揮官は考えた。「あまりにも高さを怖がって相手に合わせ過ぎたら、勝ち運にも見放されるのではないか」と。結果、「一瞬のひらめき」で豊川には「後半途中から行くぞ」と伝え、中島が先発出場することになった。

 そして、イラン戦で得点を奪ったのは、その2選手。後半43分からピッチに送り込まれた豊川は延長前半5分、指揮官の期待に応えるように先制点を叩き込み、延長後半3分と5分には中島が立て続けにネットを揺らしてチームは3-0の勝利を収めた。14年1月のAFC U-22選手権でイラク(●0-1)、同年9月のアジア大会で韓国(●0-1)に敗れ準々決勝敗退を味わっていたチームは、ついに“鬼門”を突破した。

 あまりにもハマった采配に、豊川も試合後に「うまく乗せられたという感じでしたね。本当にテグさん(手倉森監督)はすごいと思いました。僕は先発かなと思っていましたが、今になって見れば、ベンチスタートで良かったと思います」と脱帽する。

 毎試合のようにスタメンが大幅に入れ替わる点も見逃せない。グループリーグ第1戦北朝鮮戦から第2戦タイ戦は「相手をスカウティングして」6人、タイ戦から第3戦サウジアラビア戦は「違う組のチームを戸惑わせるために」10人、そしてサウジアラビア戦から準々決勝イラン戦は「これからの戦いを考えて、今日戦う上でのベストメンバー」と8人を入れ替えた。第3GKの牲川歩見(鳥栖)こそ出場機会はないものの、登録23名中22名がピッチに立って快進撃を続けている。自身が選んだ23名のメンバー全員を信頼している証だろう。

 特出した選手に頼るのではなく23名のグループによる「総合力」、そして指揮官の選手への「信頼」とマジックとも呼べる「采配」で、下馬評が決して高くなかったチームはリオ五輪出場権獲得まで、あと1勝に迫った。

(取材・文 折戸岳彦)

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