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欧州組15人中11人が週末プレーせず…ハリル「先発じゃないからサヨナラとは言えない」

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9月1日のUAE戦はFW本田圭佑のゴールで先制するも逆転負けを喫した

 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督は29日、都内のJFAハウスで記者会見を行い、10月6日のW杯アジア最終予選・イラク戦(埼玉)、11日の同オーストラリア戦(メルボルン)に臨む日本代表メンバー26人を発表した。

 苦渋の決断だった。26人のリストのうち欧州組は15人。9月のW杯アジア最終予選・UAE戦(1-2)、同タイ戦(2-0)で選出した14人全員を引き続き招集し、新たにGK川島永嗣(メス)も名を連ねた。「海外組がたくさんいて、12人ほどが先発で出ていない。今回のリストは本当に難しかった」。指揮官がそう認めるように、大多数の欧州組が所属クラブで苦しんでいる。

 今回招集された欧州組のうち、週末のリーグ戦に先発したのはFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)、FW浅野拓磨(シュツットガルト)、DF酒井宏樹(マルセイユ)、DF酒井高徳(ハンブルガーSV)の4人のみ。FW本田圭佑(ミラン)、FW岡崎慎司(レスター・シティ)、FW武藤嘉紀(マインツ)、MF香川真司(ドルトムント)、MF清武弘嗣(セビージャ)、MF長谷部誠(フランクフルト)、DF長友佑都(インテル)、DF吉田麻也(サウサンプトン)、DF太田宏介(フィテッセ)の9人はベンチ入りも出場機会がなく、FW宇佐美貴史(アウクスブルク)と川島はベンチ外だった。

 しかし、所属クラブで出場機会に恵まれていないからといって、日本代表チームからも外すわけにはいかなかった。「15人ほど海外組がいて、先発で出ていない選手がいる。普通の基準でいけば(代表には)呼べない。川島、長友、吉田、長谷部、香川、清武、本田、岡崎、宇佐美、武藤。そういう選手を外してしまうと、だれを代わりに呼ぶのか。かなり難しい。だからそのような選択はなかなかできない」。露呈した“欧州組依存”の現状。試合に出ていない欧州組より、試合に出ている国内組を選ぶ考えは――。そんな質問にも指揮官は頑なに首を振った。

「まだまだ海外で行われているフットボールと日本で行われているフットボールには歴然とした差がある。特にフィジカル面でそうだ。そこも考慮に入れないといけない」。ハリルホジッチ監督は手元の資料を掲げ、報道陣に向けて言った。「少しみなさんに紹介したい。これは私が就任してからのチームの走行距離だ」。資料は横に伸びた棒グラフが縦に並んでおり、その長さが試合ごとのチーム全体の走行距離だという。上から順に棒グラフは短くなっており、一番下の最も短い試合が昨年8月に行われた東アジア杯での試合だった。

「一番下を見てほしい。これが国内組だけで臨んだ東アジア杯の走行距離だ。最も良いチームの試合のときより、10kmほど短いのが東アジア杯だった」。欧州組を含めたフルメンバーで臨んだ試合と、国内組のみで臨んだ東アジア杯。そこにある明確な差を指揮官は強調した。「本来なら先発で出ていない選手は外さなければならない。だが、現状でだれが(彼らに)代わるのか。これは真実だ。日本のフットボールとヨーロッパのフットボールは違い過ぎる。まったく違い過ぎる」。その言葉には自然と力がこもった。

 試合に出ていないとはいえ、彼らへの信頼は揺るがない。「各選手のクオリティーはよく知っている。もちろん、理想としては常に先発で出続けてほしい。試合が一番のトレーニングだからだ。先発で出られなくても、補足トレーニングを積んで、高いレベルの試合に付いていけるようにしておいてほしい」。直接、欧州組の選手とコミュニケーションを取り、コンディションを保つための追加メニューも伝達しているようだ。

「香川真司の競争の状況を想像してみてほしい。ドルトムントは世界で有数のチームだ。だれと競争しているか想像してほしい。シュールレ、ゲッツェというブラジルW杯のファイナルのピッチに立った選手だ。清武も同じで、ナスリと競争しないといけない。ものすごい強豪クラブで、チャンピオンズリーグに出場しているクラブで競争している」

 もちろん、こうした状況が長く続くことは望んでいない。「ずっと先発を取れなかったらかなりの問題で、もっともっと大きな問題になる。3か月、4か月、ずっと出られなかったらまったく違う問題が起こる。それが起きてほしくはない」としたうえで、「本田に関しても、オカ(岡崎)に関しても、香川に関しても、清武に関しても、先発じゃないからサヨナラと言えるのか。7年、8年と日本に多くのものをもたらしてくれた選手を簡単に排除することはできない。メンタル的にチームが壊れてしまう。『試合には出ていないが、信頼しているよ』という私からのメッセージだ。グラウンドで返答を待つ。それが私のやり方だ」と力説した。

(取材・文 西山紘平)

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