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「ぶっつけ本番」を連呼した本田の葛藤…4年ぶり1トップの自己採点は「50点」

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4年ぶりの1トップに「50点」と自己採点したFW本田圭佑

[10.11 W杯アジア最終予選 日本1-1オーストラリア メルボルン]

 表情は浮かなかった。約4年ぶりに1トップで先発した日本代表FW本田圭佑(ミラン)は「50点ぐらいの採点になるかな」と明らかに不満げだった。

 ザックジャパン時代の12年10月16日にポーランドで行われた国際親善試合ブラジル戦(0-4)以来、約4年ぶりとなる1トップでの先発。「ザッケローニのときはやってないと思う」と、記憶にないほど遠い過去の試合だった。報道陣からブラジル戦のことを指摘されると、「あのときやってましたっけ」と驚いた表情を見せた。

「FWをやるときは特にぶっつけ本番感が強い。その想定をしておいたほうがいいのかな」。冗談交じりに苦笑いを浮かべた。「腹をくくって、右サイドで気張ってやってきている。スピードがなくても点が取れるんだというのを見せようと思ってやってきて、ぶっつけ本番でFWになったりする。求められる役割がまったく違うので、悔しいけど、50点ぐらいにしかならない」。突然の“コンバート”の難しさを説いた。

 それでも前半5分、MF長谷部誠からの縦パスに対して体を半身にしながらワンタッチで前線にスルーパスを通し、FW原口元気の先制点をアシスト。「幼少期からああいうふうにプレーしていたから。右サイドのプレーは2年ぐらい。20年ぐらいはあの感覚でプレーしていた」とおどける。

 事前に原口とコミュニケーションを取っていたことも功を奏した。「前々日だったかな。俺が持ったとき、(原口)元気は早く動き出しすぎる傾向があった。(香川)真司やキヨ(清武)はそのタイミングで出すけど、俺は一個タメて出したい。『一個遅れて出てくれ』と言っていたのを元気が理解して、一個遅れて出ることでオフサイドにならず、DFの逆も取れた。あんなすぐに結果として表れるのはめずらしい」と自画自賛した。

「ぶっつけ本番でもあの1本を出せたことには自分自身、ホッとしている。サイドをやっていると、自分が下手になっているんじゃないかと思う。年が経つごとに下手になっているんじゃないかと不安になるのを安心させる真ん中のプレーだった」

 この日のように守備から入るゲームプランのときには“本田1トップ”がオプションになるのだろうか。「自分がストライカーになるわけじゃない。ゼロトップ風。僕がFWをやることで周りが点を取る可能性が高まる。それはいいところ」。チームの狙いとしては理解しつつも、本田自身の中には依然、葛藤があるようだ。

「オプションの一つとして、もう少し心の準備をしておいたほうがいいのかな。サイドとFWでは練習方法も全然変わってくる。(ポジションが)コロコロ変わって活躍するのは難易度が高い」

 ミランに戻れば、またベンチ生活が待っている。「チームではなかなか試合に出ていないので、プラスアルファのトレーニングをして、試合に出ているとき以上のコンディションで次を迎えられるように準備したい」。11月15日にホームで行われるサウジアラビア戦に向け、再び所属クラブで難しい調整を余儀なくされそうだ。

(取材・文 西山紘平)

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