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日本vsニュージーランド 試合後のハリルホジッチ監督会見要旨

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日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督

[10.6 キリンチャレンジ杯 日本2-1ニュージーランド 豊田ス]

 日本代表は6日、キリンチャレンジ杯でニュージーランド代表と対戦し、2-1で競り勝った。後半5分にFW大迫勇也のPKで先制すると、同14分に追いつかれたが、後半42分、途中出場のMF倉田秋がA代表初ゴールとなる決勝点を奪った。

以下、試合後のハリルホジッチ監督会見要旨

バヒド・ハリルホジッチ監督
「勝利したが、楽なゲームではなかった。非常に面白い時間帯もあった。しかし、おかしなことに得点を取ったあと、相手にイニシアチブを与えてしまった。特にスローインやFKからロングボールをゴール前に入れさせてしまった。そのようなことを許してしまうと、失点して同点に追いつかれるのも自然だと思う。しかし、そのあともう一度スピードを使って動きが出てきた。前半も後半も得点の機会をたくさんつくったと思う。今夜のゲームではたくさんのシュートを打ったが、枠にいくシュートが少なかった。そして素晴らしいプレーから、そのプレーに値する2点目が生まれた」

─香川はどうして代表に来るとパッとしないのか?
「香川は長い間、ケガをしていた。もちろん彼のトップフォームではない。本人にも本来のレベルを取り戻してほしいと要求した。プレーをしながら、どんどん良くなっていくと思う。もちろん、他の選手との競争もあるが、より良いプレーができるようになるだろうし、確実に良くなると思う。例えば、代表に合流する直前のドルトムントでのゲームは素晴らしいものだった。しかし、もちろん我々が知っている香川のレベルではない。ボールを持っていないときのプレーをより速くして、どんどんチームメイトに絡んでいくことを要求している。トレーニングをしっかり続けて、できるだけ高いレベルを取り戻すことが必要だと思う」

─前半20分までは良かったが、その後、ペースが落ちた。後半も得点してから相手にペースを握られたが、なぜだと思うか?
「このような形になるのは初めてではない。毎回ではないが、得点を取ったあと、止まってしまうことがたまにある。そのような時間帯で相手のCKやスローインが増えるのは偶然ではない。それが機会につながり、我々のペナルティーエリアに入ってくる姿があった。日本の選手が少し焦る場面もあった。つまりゲームをコントロールできず、相手にそこを突かれたということだ。失点の場面も2対1の形から簡単にクロスを上げられてしまった。そして9番の選手(ウッド)がイングランドのチャンピオンシップで得点王になったのが偶然ではないという素晴らしいプレーも見せた。

 ただ、新しい選手がたくさんいることも考えなければならない。私もいろいろと試した。チームとしてのトップフォームからまだ程遠いことも分かっている。今後の数か月を利用して、しっかりチームの状態を良くしていきたい。その中で自らのレベルを上げないといけない選手も何人かいる。全員がトップフォームでいるわけではない。次の2試合目(ハイチ戦)も新しい選手が何人か出る。このような形で戦うと、ハイレベルでプレーすることは難しくなる。失点したあと、もう一度プレーして、形をつくって、スペースを使うという姿が見られたことは評価したい。新たに入った選手たちがプレーにクイックネスやスピードを与えたと思う。私も今、いろいろと探している。完璧なゲームではなかったことも認識している。しかし、いずれにしても勝利したので称えたいと思う。

 対戦相手がフィジカル的に強く、いいチームだったことも考慮しなければならない。コンフェデレーションズ杯ではロシア、ポルトガル、メキシコが彼らに勝った。大きな点差で勝った試合もあったが、どのチームも勝つのに苦しんだ。ただ、我々もボールをもう少ししっかり使ってゲームをコントロールしないといけない。スピードアップのところはしっかりと上げ、ペースを落としてボールをもう少し持つというときは時間をしっかり使うこともしないといけない。そこまで正確にできない、相手に読まれやすいプレーになってしまったかもしれない。相手はマンツーマンの形でマークしていたが、その激しさでボールを奪われてしまった。このようなスリッピーなグラウンドの場合、テクニックのクオリティーも上げていかないといかない。修正点はたくさんある。これからしっかりトレーニングしないといけない。しかし、勝利をおさめられたことはうれしいこと。精神的な部分でいい影響があると思う。何度も攻撃を仕掛け、形をつくり、シュートを打ったというその姿も良かった。あのような素晴らしいプレーから得点が生まれたことは、このチームにとっての報酬にもなる」

─前半にベンチ前でボールを蹴り返していたが、判定に怒ったのか、チームに喝を入れたかったのか?
「テクニックを見せたいと思った(笑)。いいテクニックだった。我々の選手がケガをしているかもしれないと思って見ていたので、そこでレフェリーが止めなかったことに少しフラストレーションがあった。ただ、グラウンダーのいいボールが蹴れるということを見せたいと思い、あのように蹴った。監督というのはたまにフラストレーションを感じるものだ。良くないと思われるジェスチャーをしてしまうこともある。その後、第4の審判にしっかり謝った」

─シュートを18本打って2ゴールだったが、W杯に向けての解決策は?
「得点の機会は10回はあったかなと思う。ミドルシュート、ロングシュートも選手には強調して言った。ただ、不運なことに枠にいかないシュートがいくつかあった。(香川)真司のポストに当たったシュートもあった。相手のペナルティーエリア付近でFKをゲットしようという話もした。ここ最近、20試合くらいで相手のペナルティーエリア付近でのFKがまったくなかった。それは受け入れられないことだ。W杯ではそういうところからのFKでいいボールを蹴り、それが決まれば、勝利にもつながる。南アフリカW杯のデンマーク戦では日本がFKで2得点を取ったからこそ、グループリーグを突破できたと思う。我々がそうした直接FKを決めることができていないのは、FKを得ることができていないからだ。今が最高の状態と言えないことも分かっている。ただ、修正点は把握している。10回ゴールチャンスをつくれば、少なくともそういった形をつくるプレーがその前にあったことが分かる。試合前の2つの練習セッションはフィニッシュで終わらせていた。これからもしっかりトレーニングしていかないといけないし、もちろんチームを成長させないといけない」

─シュートが枠にいくにはどんな技術が必要なのか。
「W杯予選でドイツがアウェーゲームで勝った。美しいゴールではなかったが、25mからの得点が2つあった。それはトレーニングから生まれるものだ。今日は焦る姿、慌てる姿があった。最後のシュートのところで集中が少し足りなかったかなと思う。軸足、体の向き、シュートを打つ足の向き。そういった最後のところでコントロールしないといけない。最後のところでフッと息を吐き、息を止めて蹴れば落ち着いて蹴れる。早くそういうところまでいかないといけない。しっかりコントロールしないといけない。それはトレーニングだ。クラブでもたくさんやってもらいたいと要求している。先ほども言ったが、試合前の2つのトレーニングでは最後のところでフィニッシュの練習をした。中盤の選手が一つのゴールで、FWの選手が私とともにもう一つのゴールでトレーニングした。不運なことに代表でのトレーニングの時間は限られている。個人トレーニング、個別トレーニングをクラブでも行ってほしいと伝えた。トレーニングでどんどんシュートを打てば、先ほど言ったようなシュートが打てるようになる。

 特に井手口や(山口)蛍のような選手。たまに憤りを感じてしまう蛍だが、彼はクラブの試合でそういったトライがまったく見られない。だから私は彼にプレッシャーをかけている。正確で良いシュートを持っているからもっとトライしてもらいたいし、さらにその精度を上げるためにトレーニングしてほしいと思っている。25m、30mからのシュートを決められるようにするにはトレーニングが必要だ。決まらなかったが、少なくともそういったシュートが見られたということで一歩目は踏み出せたかなと思う。(長友)佑都も2回、シュートを打った。彼のボールがどこに行ったのか分からないので、まだ探しているみたいだが(笑)」

─日本は以前と比べてFKのうまい選手が減っているが、それも練習で改善していけるのか。
「中村(俊輔)を含め、いいFKを蹴れる選手がたくさん点を取っていた時代があったことは聞いている。ただその前にFKを得ることができていない。だから選手たちにFKをもっと得ないといけないと強く求めている。オーストラリアはCK、FKから得点の6割を生んでいる。強豪と呼ばれるチームもそのようにセットプレーから点を取っている。今の日本に中村のようなキッカーがいないのは事実かもしれない。しかし、キッカーがいたとしてもFKがなければ点を取ることはできない。今日はCKのキックも良くなかった。もちろん、トレーニングをしていないということも事実としてあるが、ボールが少し遠いところに行ってしまい、高いレベルのものを見せることができなかった。選手たちと話をして準備をし、全員で自分たちがこういうところも向上できるというビジョンを持つようにしたい。以前、私は現状ではW杯で通用しないという話をした。オーストラリア戦、UAE戦、サウジアラビア戦などで非常に高いレベルのゲームができることも見せたが、まだまだ選手たちそれぞれが修正できる点もたくさんある。選手たちもそれを意識している。それはいいことだ。選手たちも自分たちで修正、向上しようとしている。そのような姿勢の選手がいれば成長しやすくなる」

─倉田の得点のように、押し込んだときにボックスに遅れて入ってくる選手が少ないように思うが。
「倉田の話もあったが、交代のとき彼には『フィニッシュまで行け』と言った。杉本が孤立していたので、2列目から前に行けという指示をした。(小林)祐希にもそれを要求した。乾が入ることによって、(長友)佑都らが絡んでチャンスがあると思ったし、逆サイドからも飛び込んできた。25m、30mぐらいの距離からのシュートでは個人として少し焦るような場面もあった。少しスピードアップして打つことが必要だった。井手口はまだまだ若い選手で、これから成長していくと思う。前半も久保と武藤が開きすぎていた。久保や武藤にボールを出して、彼らが内側に向かって走り出せば、フリーで相手ゴール前に入れた。もう少しテクニックがしっかり使えたり、ボールをプロテクトできたりしていれば、より良い場面につながっていた。もっと一緒にプレーすれば、連動もしてくると思う。

 次の2試合目では、特徴のまったく異なるチームと試合をする。我々も形を変えていくので、自動的に連動する部分は減るかもしれない。今年はたくさんの選手を見て、それぞれに何ができるのかを見極めていきたいと思っている。3月以降はメンバーやプレーの仕方がより固定されていくと思う。今のところはより多くの人数を見て、最終的にだれがこのチームに残るかを見ている。それを見たあと、しっかり分析をして、だれがW杯に行けるのかを選択しないといけない。その道のりの中で選手たちもレベルを上げていく。つまり、このチームが見せられる最高のレベルからはまだ遠いということだ。この期間中はできるだけ多くの選手にプレーする機会を与えたいと思っている。クラブと代表で役割が違う選手も少なくない。私が行おうとしているのは、日本人の特徴を生かした日本式のサッカーをプレーすることだ。毎回、良いパフォーマンスを見せられるかどうかは分からないが、それに向けた準備をしていきたい。我々が見せられる最高のレベル、W杯のレベルからは程遠いと思う」

(取材・文 西山紘平)

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