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吉田麻也が今こそ鳴らす警鐘「慢心すれば足元をすくわれる」

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日本代表の次期キャプテンとしても期待されるDF吉田麻也

 日本代表DF吉田麻也(サウサンプトン)が7月20日、ブランドアンバサダー契約を結ぶミズノの大阪本社を訪問し、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を果たしたロシアW杯出場を報告した。同時に新スパイク開発に向けた足型測定や動作解析などを実施。4年後のカタールW杯を目指し、早くもリスタートを切った。ゲキサカでは次期キャプテン候補のディフェンスリーダーを単独インタビュー。ロシアでの戦いを終えた現在の心境、今後に向けた意気込みを聞いた。

―足型測定や動作解析など今日取ったデータは今後どう生かしていきたいですか。
「ミズノさんのほうで新しいスパイクの開発につなげていってもらえればと思いますし、僕が感じたことはこれまでも常々伝えてきました。ミズノさんの良さは自分たちの声、フィードバックが次のモデルにきちんと反映されること。そこがミズノさんの一番の魅力でもありますし、そのために来たかったというのもありました。前回測定した2年前から自分の足の状況も変わっていますし、今の足の状態、癖などを把握したいと思って来ました」

―ロシアW杯で着用した『レビュラ2』にも吉田選手の要望が反映されていたと聞きました。実際にW杯で着用してみて、『レビュラ2』の良さを感じた部分はありましたか。
「今回の『レビュラ2』に限らず、これまでのモデルでもその都度、フィット感や軽さ、アウトソールの補強など、自分からフィードバックさせていただいてきました。とはいえ、試合の中ではスパイクを“感じない”ことが一番だと思っています。感じるときというのは、どこか良くないときに感じるもの。足に意識が向かず、プレーに集中してゲームをこなせることが理想ですし、その意味では試合中、常にそういう状況を作り出せていました。そこは本当に感謝しています」

―プレーだけに集中できていたということですね。
「足の裏が痛い、かかとが痛い、つま先が痛いなど、どこかそういう部分があれば、ゲームの中でも必然的に意識がそこに向いてしまいます。何も感じない、まるで素足のような感覚でプレーに臨めることが、選手にとって一番良い状態だと思います」

―プロ入りした2007年からミズノと契約していますが、吉田選手にとってミズノの最大の魅力とは何でしょうか。
「一番は質ですね。他のブランドにはないクオリティーがあります。そのうえで、仮に何か感じることがあれば、そのフィードバックをしっかり還元してもらえる。海外ブランドでは、どうしてもその部分が難しくなります。そこは国内ブランドの最大の魅力だと思いますし、10数年一緒にやらせていただいてきて、吉田麻也という選手にとって、なくてはならないパーツの一つですね」

―ロシアW杯を終えて現在はオフ期間中ですが、普段のオフとは違いましたか。
「やっぱり反響は大きいなと思いますね。どこに行っても人目に付くといいますか、それだけW杯を見ていた人が多かったんだなと感じました。深夜にもかかわらず、視聴率は30%、40%を超えていたそうですし、それだけ影響力のある大会だったということだと思います。ここ最近では一番プライベートに支障をきたしました(笑)」

―日本に帰国してからも大会は続いていましたが、W杯の試合は見ていましたか。
「ニュースでは見ましたけど、ゲーム自体はまったく見ていないですね」

―そこはあえて見ないようにしていたのでしょうか。
「バタバタしていて見られなかったというのもありますし、もうサッカーはお腹いっぱいで(笑)。この1か月半、今までにないくらいサッカーの試合を見てきました。自分たちの試合、対戦相手の試合……。大会期間中は毎日、3試合ぐらい行われていたので、必ず1試合は見ていましたし、2試合見る日もありました。本当にサッカー漬けの2か月を過ごしてきて、もういいかなと(笑)。自分たちが敗退して、一回ちょっと休憩したいという気持ちでした」

―それだけこの1か月半に集中していたということですね。
「この1か月半、2か月だけでなく、この4年間のプロセスであり、もっと言えば僕が日本代表に入ってからの7年半の集大成でもありました。そういう意味でも、目標にしていたベスト8にたどり着けなかった悔しさが一番大きいですね」

―2大会ぶりの決勝トーナメント進出を果たした達成感よりも悔しさのほうが残った大会ですか。
「そうですね。グループリーグを突破したことに対する喜びというのはほとんどなくて、安堵感のほうが強かったです。とりあえずホッとしたなと。ここからが勝負というのは、僕だけでなく、選手みんなが分かっていました。次の殻を破れるかどうかに自分たちの真価が問われていると……。だからこそ、まだまだだなと思います。日本に帰ってきてからいろんな人に『感動した』『ありがとう』と言われました。たくさんの選手がメディアにも出ていて、周りのリアクションも大きいので、勘違いしがちですけど、物事をしっかり見極めて、自分たちの置かれている状況、立ち位置をちゃんと把握して、次の4年間に向かって進まないといけないと思っています」

―4年前のブラジル大会は1勝も挙げられず、グループリーグ敗退でした。この4年間で世界との距離は縮まったと思いますか?
「距離はずっと縮まってきていると思います。数多くの選手が今までになかったような舞台でプレーし、経験を積んでいます。とはいってもヨーロッパの選手や南米の選手はそれが当たり前の環境にいます。僕らはまだ、それが当たり前と言えるほどの数の選手がヨーロッパでプレーしているわけではありません。指導者を含めて、まだまだ世界との差はあるというのが僕の現実的な意見です」

―吉田選手個人としてはプレミアリーグで世界を代表するストライカー、アタッカーと日常的に対峙してきました。それでもやはりW杯は特別な大会でしたか?
「特別ですね。確かに要所要所で見れば、ルカクやデ・ブルイネといった選手たちと戦うというのは日常ではあります。でもW杯はお互いの国をかけての戦いで、これだけ経験を積んできても緊張しますし、周りが見えなくなることもありました。当たり前のことができないような状況に陥ったりする。それがW杯という舞台だと思います」

―五輪もオーバーエイジとして2度目の出場となったロンドン五輪で初勝利を挙げ、ベスト4まで躍進しました。W杯も個人としては2回目の出場で初勝利を挙げました。
「もちろん経験は必ず生かされますし、実際に生かされたと思っています。悔しさという意味でも、それがあったからこそ、その反骨心で4年間頑張ってこれたというのもあります。だからこそ、次の4年間もここで満足せず、前に突き進んでいかないといけません。みんなにチヤホヤされて、慢心してしまったら、次のアジア杯で簡単に足元をすくわれると思います。プロである以上、僕らは結果がすべての世界に身を置いています。常に勝ち続けないといけないですし、次のアジア杯が本当に大事になってくると思っています」

―ベルギー戦翌日の取材対応でも、長谷部選手の代表引退を受けて涙していたのと同時に、『アジア杯を奪い返しに行く』と話していたのが印象的でした。次のことはまだ考えられないという選手が多かった中、あのときの心境はどういったものだったのでしょうか。
「もちろん、W杯にすべてを捧げるつもりでやってきました。でも、W杯だけでなく、来年1月のアジア杯、来年夏のコパ・アメリカまでの1年間が日本サッカーにとって大きな意味を持ってくるというのは大会前から考えていました。2010年の南アフリカW杯のときも、W杯で決勝トーナメント進出を果たしたあとにアジア杯で優勝し、女子もW杯で優勝して、サッカー人気が一気に高まりました。僕たちもその恩恵を受けましたし、日本サッカー界全体にとって大きくプラスに働くことが8年前に起きました。それをまた再現したいと思っています。今回、もし僕らがW杯で負けて、次のアジア杯でも結果を出せないようなことがあれば、日本のサッカー人気は本当に大変なことになっていたと思います。もちろん、まだまだこれからが大事で、次はアジア杯を取るというのが、日本サッカーを盛り上げるために重要なミッションになると考えています。

 それから、長谷部さんの件で泣いていたという話ですが、あれは全部演技ですから。そこだけは太文字で書いておいてください(笑)」

(取材・文 西山紘平)

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