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「20分の2」はライバルであり仲間…GK小島亨介とGKオビ・パウエル・オビンナの“物語”

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U-21日本代表GK小島亨介(早稲田大=左)とGKオビ・パウエル・オビンナ(流経大)

 アジア大会に出場しているU-21日本代表メンバー20人の内、GKは2人。GK小島亨介(早稲田大)とGKオビ・パウエル・オビンナ(流経大)は、お互いに支え合いながらも切磋琢磨しながら、成長していこうとしている。

 この年代の第1GKは現時点では小島だ。16年のAFC U-19選手権、17年のU-20W杯、今年1月のAFC U-23選手権でゴールマウスを託されてきた。アジア大会でも初戦ネパール戦、第2戦パキスタン戦で先発出場を果たすが、パキスタン戦の後半33分にアクシデントに見舞われる。相手選手と接触し、「痛みが強かったので動けない状態だった」とオビとの交代を余儀なくされた。

 パキスタン戦翌日から別メニュー調整が続いたものの、21日から全体練習に復帰。至近距離からのシュートを横っ飛びで防ぐなど軽快な動きを披露しており、「感触としては良い感じ。あとはコンディションをしっかり上げていきたい」と、24日の決勝トーナメント1回戦マレーシア戦での完全復活を狙っている。

 その小島が欠場した第3戦ベトナム戦でゴールマウスに立ったのがオビだった。しかし前半3分、「テンポを作れればと思ってあのプレーを選んだ」とMF神谷優太(愛媛)へ縦パスを送る。しかし、相手選手に狙い撃ちにされた神谷がボールを失うと、決勝点となるゴールを叩き込まれた。試合後には「判断ミスかもしれない。結果的に失点になるのであれば、自分が大きく蹴れば良かった」と反省を口に。そして、2試合連続完封していた小島に代わってゴールを守ったからこそ、「2試合完封だったので、コジくん(小島)に申し訳ないし、チームにも申し訳ない」と悔しさを滲ませていた。

 だが、似たようなシーンを小島も経験していた。1月のAFC U-23選手権準々決勝ウズベキスタン戦の前半34分。PA外のMF井上潮音に縦パスを送ったものの、その背後から相手選手が寄せており、相手のプレッシャーを感じた井上がゴール中央の立田につなぎ、距離を詰められた立田のボールロストからゴールを奪われた。

 森保ジャパンには後ろからつなぐというのチームコンセプトがある。AFC U-23選手権ではチーム発足から間もないこともあり、より一層ボールをつなごうとする意識は強かった。小島は「自分としてはトライした結果の形だったのでネガティブには捉えていない」と当時を振り返り、「ああいう場面でもつなぐことは、これからも求められる」と話す一方で、「時間帯によって判断は変わると思うので、これからの試合で自分でしっかり判断していきたい」と柔軟な対応の必要性も説いた。

 そして、ベトナム戦をベンチから見守っていた小島には、オビのミスも「チャレンジする意識があった中でのミス」と映っており、「一人ひとりの判断を高め、チームとして共有していければ、全然改善できると思っている」とキッパリと語っている。

 今大会、2人しかいないGK。「外から見て、少しでもアドバイスできれば」と小島が語ったように、ライバルでもあり仲間でもある。それはオビも感じており、ベトナム戦前には自身よりも経験豊富な小島の元へと向かったという。「僕が意識していないことをコジくんは意識していると思ったし、自分が気付けないことがあると思うので聞こうと思った」。その内容を小島が明かし、「チームの代表として出るわけだから、しっかり責任や自覚を持ちながらも、落ち着いていつも通りのプレーを心がけてほしいと伝えた」とオビの背中を押していた。

「普段のGKは3人が多いけど、今回は2人。2人がお互いに支え合いながらもトレーニングの中で切磋琢磨し合える環境を作れれば、今後の練習や試合につながっていくと思うので、これからも意識したい」(小島)

 フィールドプレーヤーとは異なり、一つしかないポジションを巡る“物語”。2人は互いを高め合いながら、大会中のさらなる成長を誓う。

(取材・文 折戸岳彦)
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