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森保監督は知っている…金メダル逃すも、選手の変化に「感謝したい」

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座り込むMF松本泰志(広島)に言葉をかける森保一監督

[9.1 アジア大会決勝 U-21日本1-2(延長)U-23韓国 ボゴール]

 決勝で敗れて金メダルを逃した。しかし、指揮官は知っている。選手たちが毎試合ごとに成長してきたことを――。

『球際で戦えない』『ボールを持った際の判断が悪い』等々、グループリーグでは明らかな課題が見え、第3戦のベトナム戦のハーフタイムには森保一監督から激しい檄が飛んだ。さらにピッチ外でも苦しめられた。練習で使用するグラウンド状況は劣悪で戦術練習や対人練習は行えず、練習場との往復に2時間かかることもあった。その上、中1日が2度行われる過密日程も重なり、大会が進むごとに選手の心身のダメージは相当なものだったはずだ。だが、U-21日本代表は目標としたベスト4進出を果たすだけでなく、決勝までたどり着いて“宿敵”韓国とのガチンコ勝負に挑んだ。

 韓国は大会規定上限のU-23チームで臨むだけでなく、FWソン・フンミン、FWファン・ウィジョとオーバーエイジ3人を起用。さらに優勝すれば兵役が免除されることもあり、より高いモチベーションで決勝に臨んできた。試合開始から押し込まれるが、ここで選手たちが戦った。相手に激しく寄せて自由を奪い、たとえ突破を許してもカバーに入った選手が体を投げ出してフィニッシュまで持ち込ませない。

 大会序盤は後方からつなぐというチームコンセプトにとらわれ、ベトナム戦ではミスから失点したが、この日は違う。もちろん、やみくもにロングボールを蹴るわけではない。つなぐところはつなぎ、相手が押し込んでいるからこそ生まれる裏のスペースも有効に使おうとする。ダイナミックなサイドチェンジを織り交ぜるなど、“言われたことをやる”だけではなく、状況に応じたプレーを選択して韓国ゴールに迫ろうとした。

 主導権を握られながらも「辛抱強く、我慢強く、集中力を切らさずに続けてくれた」と、魂の守備で簡単にはゴールを許さず。しかし、前後半の90分をスコアレスで終えて迎えた延長前半3分、同11分に失点して2点のリードを奪われてしまう。だが、それでもあきらめることはない。「選手たちは0-2のまま終わるのではなく、最後に1点を取り返してくれた」と延長後半10分にMF初瀬亮(G大阪)のCKをFW上田綺世(法政大)がヘディングで叩き込み、1点差に詰め寄った。その後、同点に追い付くことこそなかったが、「最後まで諦めることなく、戦い続ける姿勢を見せてくれたことは今後につながること」と選手の戦う姿勢を評価した。

 当然、この試合でも課題は出た。「守備から攻撃につなげる部分」「カウンターの精度」「ボールを握って攻撃の時間を作る」と特に90分間でノーゴールに終わった攻撃面の修正点はまだまだあり、優勝に手が届かなかったことで「力が足りなかったところを真摯に受け止めたい」とも口にする。だが、決勝の舞台で「これまでの戦いになかったタフさを出してくれた」と語ったように、チームは成長の途中で、どこかのタイミングで“化ける”可能性は十分。今後は決勝で敗れた悔しさを糧に、課題を一つずつ克服しながら、さらなる高みを目指すことになる。

 しかし、試合ごとに成長した姿を見せてきたのは紛れもない事実。「選手たちは今大会を通して、毎試合ごとに成長する姿を見せてくれたのは監督として嬉しかった。選手に感謝したい」とタフな状況の中、7試合を戦い抜いた選手たちに労いの言葉を贈った。

(取材・文 折戸岳彦)
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