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ポテンシャルに追い付いてきた自信。U-20日本代表候補FW佐藤恵允は想いを背負えるストライカーに

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抜群のスピードを誇るU-20日本代表候補FW佐藤恵允(明治大2年)

[6.3 練習試合 U-20日本代表候補 4-5 全日本大学選抜]

 周囲の想いを背負える男は強い。ここまで辿ってきた、決して平坦とは言えない道のりを支えてきてくれた人の分だけ、そのパワーの総量は自分の背中を力強く押してくれる。「高校時代の仲間からも、『おめでとう』という感じの連絡は結構来ました。それもすべてを背負ってこの代表合宿に参加して、結果を残そうとしてやってきたので、結果が出て良かったです」。U-20日本代表候補に初招集されたFW佐藤恵允(明治大2年)は、多くの人への感謝を胸に、代表のエンブレムとともにピッチを駆けた。

「本当にここを目指してやってきていたので、呼ばれた時には本当に嬉しかったですけど、ビックリしました(笑)」。今まで縁のなかった世代別代表の招集には、自身も驚きを隠せなかったが、今季は所属の明治大でもスタメン起用が増加。リーグ開幕戦でゴールを奪うなど、大学サッカー界屈指の強豪で残してきた結果が、今回の抜擢にそのまま繋がった。

 合宿最終日。全日本大学選抜との練習試合(45分×3本)には、2本目の途中からの出場に。「1本目と2本目であまり良い形で攻撃ができていなかったので、自分の得意なことだったりチームを助けるようなプレーをして、結果を残そうとしていました」と確かな狙いを持ってピッチに飛び出す。

「寛汰とは練習のゲームでも結構良い形のコンビネーションができて、やりやすい部分があったので、ベンチで2人で『チャンスですね』みたいに話していました」という佐藤とFW千葉寛汰(清水エスパルスユース3年)の連携は抜群。2人のパスを起点に1点を返すと、18分に獰猛な野性味がその顔を現わす。

 左サイドのルーズボール。明らかに相手DFの方が良い体勢だったにもかかわらず、「ちょっと相手の方が前にいたんですけど、スピードで行けるかなと思って」爆発的な加速力でボールをかっさらうと、そのまま高速ドリブルをスタート。明治大の先輩、GK遠藤雅己(3年)が守るゴールを強引にこじ開けてみせる。

「キーパーを見ていて、ディフェンスはワンタッチで横にずらして、ファーに蹴るというイメージで、それが上手くできたので良かったです」。驚異的な加速と、巧みなステップワークと、冷静なフィニッシュ。完璧な一撃に、会場に多数詰め掛けていたスカウト陣からも、感嘆の声が上がっていた。

 きっちりゴールという結果でアピールしてみせた佐藤。隠さない野心も頼もしい。「(関東大学)選抜に選んで戴いた時に自分が思っていたのが、『目の前のチャンスを掴めるかどうか』で、その目の前に転がっているチャンスを掴めば、次のステップにも繋がっていくと思うので、今回の合宿でもそういうことを考えて試合に臨みました」。チャンスを掴んだフォワードが踏むであろう、次のステップにも期待感が増す。

 実践学園高(東京)時代から、そのスピードと躍動感は群を抜いていた。基本的に3年生がメンバーのほとんどを占めるチームの中で、2年生から出場機会を掴み、チームのスタッフからも大きな期待を寄せられていた中で、率直に言ってそのポテンシャルを十全に解き放っていたとは言い難い。ただ、信じられないほど眩い光を放つ瞬間は、どの試合でも数度はあった。

 栗田大輔監督から高い評価を得て、進学した明治大で待っていたのは、サッカー以上に求められる豊かな人間性の醸成だった。「明治はただサッカーをやっていればいいという世界ではないので、そこで人間形成だったり、学生としてあるべき姿を追求していく中で、自分の人間の幅だったり、プレーの幅も広がったと思います」。ピッチ外での充実が、ピッチ内での充実に繋がることも日常から痛感する。

 さらに、“明治の三原則”が成長速度を加速させる。「明治大学に入って一番追及しているのは、チームとしても自分としても、『切り替えと球際と運動量』で、この3つを日々練習で追求していることで、その部分は高校時代から比べたら、飛躍的に成長できたかなと思っています」。シンプルがゆえに、効果もまた絶大。高いレベルの仲間と競い合うことで、サッカー選手としてのスタンダードが上がり続けている。

 おそらく、佐藤にとって最も必要なのは自信だった。それすらも手に入れ始めている19歳が、どこまでの選手になっていくのかは、ある意味で自分次第だ。「フォワードだったら結果、数字を残し続けるということで、今置かれている環境の中で目立つ存在になって、いろいろな方に注目されて、このような代表に選出されるということを繰り返して、生き残れればいいなと思っています」。

 恵允=ケイン。この名前、今から覚えておいて絶対に損はない。

(取材・文 土屋雅史)

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