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イランGKはわざとキャッチしなかった…“野人”岡野氏が明かすジョホールバルの歓喜の真相

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日本をW杯初出場に導いた岡野雅行氏

 元日本代表の福西崇史氏が5日、自身のYouTubeチャンネル『福西崇史福ちゃんねる』を更新し、元日本代表FWの“野人”こと岡野雅行氏と対談を行った動画をアップした。その中で岡野氏があの得点シーンの舞台裏を語っている。

 対談のテーマは、日本代表がワールドカップ初出場を決めた1997年の「ジョホールバルの歓喜」。当時、最終予選のB組を2位で終えた日本は3番目の出場権を懸け、中立地のマレーシアでA組2位のイラン代表と対戦した。

 前半39分に中田英寿氏のスルーパスから中山雅史氏が決めて先制した日本は、ハーフタイム明け直後にイランのコダダド・アジジ氏にこぼれ球を押し込まれると、後半14分にはアリ・ダエイ氏のヘディング弾で逆転を許す。目前で出場を逃した「ドーハの悲劇」も頭をよぎる展開となったが、同31分に中田氏のクロスから途中出場の城彰二氏が頭で叩き込み、同点ゴールを奪取。2-2で90分間が終わり、得点が生まれた時点で試合終了となるゴールデンゴール方式の延長戦に突入した。

 それまで秘密兵器として温存され、延長前半から出番を得た岡野氏。最終予選は同試合が初出場だった。長髪をなびかせてピッチを駆け回り、何度もゴールに迫ったものの、再三のチャンスをものにできずに延長前半が終了。すでに精神的に追い込まれていたという岡野氏は、延長後半の開始前に味方選手たちが笑わせたり励ましたりしてくれたと明かし、背負い込んでいたものが「すーっと抜けた」と振り返る。

 そして「後半は自分のできることを全てやろう」と開き直ってボールを追い回すと、PK戦突入も見えてきた延長後半13分だった。中田氏がドリブルで持ち上がり、左足で低い弾道のシュート。GKのアハマド・レザ・アベドザデ氏が弾いたボールを岡野氏がスライディングしながら右足で蹴り込み、その瞬間に日本のW杯初出場が決まった。

 岡野氏によると、伝説となったゴールシーンで相手GKは意図的にボールをキャッチしなかったという。

「あれは今でも思い出すけど、GKが『あっ』って顔してた。俺と目が合って。あれ後から聞いたらわざと弾いたんだって。(PK戦への突入を狙って)わざと弾いて、取って痛たがろうとしたんだって。本当はキャッチできたらしい。だけど落としても誰もいないだろうと思って、チョンと落とした時に俺がいたの。だから『あっ』って顔したの」

「あれもスライディングしなくていいんだけど、多分本能でスライディングしてる。『もうふかせない』みたいな。それでバーンって入って真っ白。本当に何にも聞こえないし真っ白になって。本当にあれ入れた時は、もうW杯に出られるとかどうでもいい。『日本に帰れる!』っていう。『サッカー続けられる!』みたいな」

 極限状態で戦っていたという岡野氏は「あそこにいたメンバー全員そうだったと思う」と回想し、「あれ負けてたら俺は絶対サッカー辞めてるし、下手したら自殺してる可能性もある。本当に試合中思ったもん。あれから15年くらい経ってやっとこの話をしたけど、いつも予選になると出るじゃない? 『絶対に負けられない戦いがそこにはある』。あれ見るだけで体が震える」と、壮絶な体験だったことを強調した。

 対談の動画では、当時の試合前を含めた細かい心理状態や面白エピソード、出場を決めた後の変化など、さまざまな裏話が明かされている。


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