beacon

「相手のレベルが上がると通用しない」オナイウ阿道、A代表ハットも燃やした野心

このエントリーをはてなブックマークに追加

日本代表FWオナイウ阿道(横浜FM)

[6.15 W杯2次予選 日本5-1キルギス パナスタ]

 A代表でのハットトリックという偉業にも、満足した様子はなかった。日本代表FWオナイウ阿道(横浜FM)はカタールW杯アジア2次予選・キルギス戦(○5-1)の試合後、「個人として結果を残せたのは良かったけど、もう少し攻撃の起点になるような、スイッチを入れるボールに反応できる回数を増やせた」と課題を述べ、最終予選に向けてさらなるレベルアップを誓った。

 当初は招集メンバー外だったオナイウは今月6日、FW大迫勇也(ブレーメン)の負傷を受けて追加選出。2019年11月の活動に続いて2度目の代表活動に合流し、11日に行われたキリンチャレンジ杯・セルビア戦で待望のA代表デビューを果たした。後半からピッチに立ったセルビア戦では後半19分、MF伊東純也のクロスに反応してゴールを決めるも、誤審によるオフサイドで取り消し。それでも「ゴールにはならず数字には表れないけど、ゴールだと思って、できたこととできなかったことを明確にして次の試合に準備したい」と前向きに受け止め、次の出番を待っていた。

 そしてこの日のキルギス戦で、初先発のチャンスを獲得。立ち上がりから積極的にシュートを放つと前半27分、相手のハンドで獲得したPKを左に沈め、A代表初ゴールを奪取。同31分には右サイドを突破したMF川辺駿からのグラウンダークロスに反応して左足で2点目を奪い、さらに同33分、今度はDF小川諒也の左からのクロスを頭で決め、初ゴールからわずか7分間でハットトリックを記録した。それも右足、左足、頭と多様な得点パターンでの偉業達成となった。

 正智深谷高から2014年にジェフユナイテッド千葉へ加入し、今季でプロ生活は8年目。16年のリオ五輪はバックアップメンバーにとどまり、初のJ1挑戦を果たした17年の浦和レッズではリーグ戦で1試合の出場機会しか与えられないなど、さまざまな挫折も経験してきた。それでも18年のレノファ山口FC、19年の大分トリニータでの武者修行で大きく成長し、A代表に初選出。20年から所属している横浜F・マリノスでは控えの立場からしぶとくのし上がり、ようやくA代表初ゴールにたどり着いた。

「毎年レンタルで他のチームに出たり、色々な経験をしてきたからこそ、自分もいろんなものを得たと思う。それがなかったら、ここにいなかったかもしれない。そういった意味でいろんな人との出会い、それで得た経験が選手としての幅を広げてくれた。僕一人で勝ち取ったものではない」。

 そう感謝を語ったオナイウは、これまでのプロ生活での積み重ねを次のように明かした。

「いろんなチームでいろんな戦術を経験し、いろんな監督から、いろんなイメージの指導を受けて、感じるものがたくさんあった、自分が成長していくために、良くしていくためにというのを常に考えていた。僕は足も速くないと自分では思っているので、そういう選手とは同じ土俵では戦えない。自分のやれることでしっかり戦って、しっかり結果を残して、自分の良さをアピールすることが大事だと思ってやってきた。そういうところを常に意識して、一緒にプレーしている選手からいろんなイメージを盗んだりしながらやってきたし、それが結果につながってきたと思う」。

 自らの能力を客観視し、少しずつ幅を広げ、目の前のステージで結果を残してきた。その先に、A代表という舞台での初ゴール、ハットトリックの偉業が待っていた。だからこそ、アジア予選でのこの結果にも必要以上に満足した様子は見せない。

「他のところの部分、技術、判断、プレースピードの質を上げないと、相手のレベルが上がると通用しない」。

 そうきっぱり口にしたオナイウは、A代表で得た貴重な経験を刺激とし、さらなるレベルアップに向けて早くも野心を燃やしていた。

「僕より若い選手もいるし、オリンピック世代も含め、ここにいる選手たちは年齢にかかわらず、向上心、もっと上手くなりたいという思い、コミュニケーション能力、試合中の判断、ハーフタイムで修正するのではなく前半の中で…という部分、サッカーに対する熱というものは今までより高いものを感じた。だからこそ、みんなここにいるんだなと感じた」。

 そんなA代表での基準を胸に、横浜FMでの日常へ——。「そういったところを自分もより求めていって、チームに帰って還元できればいい。いない間に二つの大会を落としてしまったのであとはリーグ戦しかないが、リーグ戦をしっかりといい形で来ているので、みんなで次の試合に向けてやるというところでプラスになれれば」。そして9月、最終予選で再び日本代表の力になる。

(取材・文 竹内達也)

●カタールW杯アジア2次予選特集
●カタールW杯各大会予選一覧

TOP