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闘将・麻也が熱い思いを伝えたミーティング「あの思いはしたくないし、若い選手にしてほしくない」

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U-24日本代表DF吉田麻也(サンプドリア)

 目標の金メダルには届かなかった。ショックは残っているだろう。しかし、すぐさま大事な一戦が訪れる。気持ちを切り替えなければいけない。そこで動いたのが、キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)だった。

 3日の準決勝スペイン戦。2試合連続で延長戦までもつれ込む死闘となった。ボールを保持され、押し込まれる展開となりながらも粘り強く戦う。ゴールこそ奪えないが、相手にもゴールを許さずに試合を進めた。しかし、試合終了間際、延長後半10分にMFマルコ・アセンシオに決勝点を奪われて万事休す。0-1の完封負けを喫して、決勝への道を断たれることになった。

 試合後、吉田は言った。「まだ倒れるわけにはいかない」と――。

 12年ロンドン五輪と状況は似ている。当時、準決勝メキシコ戦を1-3で落としたチームは、3位決定戦の韓国戦で0-2の完封負けを喫し、あと一歩のところでメダルを逃した。だからこそ、「ロンドンの時は、ここでメキシコに負けて、燃え尽きてしまった感があった。そうじゃなくて、やっぱりメダリストになりたい。最後はメダリストとして笑って終わりたい」と熱い思いを口にした。

 しかし、周りには「みんなの顔がね…、もう…。みんなの顔がまずいなと思った」となかなか気持ちを切り替えられない若い選手たちがいた。「気持ちはすごい分かる。本当にギリギリのとこだと思うので。でも、僕も(酒井)宏樹もあの思いはしたくないし、若い選手にしてほしくない」。その思いが行動へと移った。

 ロンドン五輪の3位決定戦の映像を使い、チームミーティングを開催。「準備する時間が短いのでやれることは限られている。でも、精神的な準備をしないといけないので、その準備を少しでも手助けしないといけない」。思いの丈を伝えたものの、「本当にみんなに伝わっているのか不安になる」と笑う。

「少し、森保(一監督)さんとも話したけど、伝える側になって、本当にみんなに伝わっているのか不安になりますね(笑)。『みんなに響いてるのか、届いているのか不安になりますね』と森保さんに話したら、『いや毎回そうだよ』と言ってました」

 キャプテンは苦笑したが、その思いは確実に仲間へと届いている。「下を向いていないで上を向いてやろうっていう気持ちになった」(FW前田大然)、「映像を見て麻也さんが言ったこと全てが心に残っている」(DF旗手怜央)、「悔しい思いをして終わりたくないし、またその経験を麻也さんや宏樹さんにさせたくない」(GK谷晃生)と明日の大一番に向けて気持ちを切り替え、高めている選手たちがいた。

 同じ轍を踏まない。次こそは勝って、笑顔で終われるように。「自分の国を背負って仕事ができるなんて本当に恵まれているし、一握りの選手、一握りの人間にしかできないような仕事をやっている。こんなに良い仕事はないと思うし、心の底から誇りと責任をもって、最後全部出し切りたい」と完全燃焼を誓った。

(取材・文 折戸岳彦)
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