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38歳GK川島が語る「取り返しがつかない」最終予選との向き合い方

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GK川島永嗣(ストラスブール)

 カタールW杯アジア最終予選のオマーン戦で、まさかの黒星スタートを切った日本代表。それでも、最年長38歳の守護神はどっしりと構えていた。

 GK川島永嗣(ストラスブール)は4日、カタール・ドーハでオンライン取材に対応。「ゴンちゃんはGKとしてできることをやっていた。要所で抑えていたし、チームに勢いをつけるフィードもやれていた」とピッチに立っていたGK権田修一(清水)をフォローした上で、最終予選での心構えを説いた。

「自分たちは2次予選も含めて、そこまで困難な状況はチームとして経験していなかった。そういった意味で、最終予選が始まって、初戦で結果的に勝てなかったというところで、こういう時こそ本当の意味での力が求められると思う。ここで自分たちに集中して、どれだけ覚悟を持って進めるかが重要になる」。

 オマーン戦では立ち上がりから狙いを定めてプレーしてきた相手に対し、効果的な対応策を繰り出せなかった。その後も良い時間帯はあるのだが、長くは続かない。そして焦りがピークに達した後半43分、人数をかけたプレッシングの裏を突かれて失点。目の前の困難な状況に対し、チームとしてナイーブなところが出てしまった。

 ベンチから試合を見つめた川島は「6月から試合がなかったし、準備期間も2日しかなかったので、コンビネーションはうまくいかないのは当たり前」としながらも、「どうやって主導権を握っていくかという部分では、我慢の時間帯と、落ち着いたところとで90分間という全体を考えてプレーすることが大切だったと思う」と振り返った。

 我慢の時間帯をしっかりと耐え抜き、主導権を奪った時間帯にいかにして冷静に打ち手を繰り出せるか——。W杯をかけたプレッシャーに晒されるだけでなく、対戦相手のレベルも高まり、さらに日本対策も繰り出してくるという最終予選という舞台において、そうした心の準備は欠かせない。

 川島自身は5年前、UAEに敗れたロシアW杯最終予選初戦は招集外。折り返しとなった6試合目の敵地UAE戦から正GKを奪還し、W杯出場権獲得に大きく貢献した。そして今回は初戦黒星の重圧をベンチで味わった。「自分がチームにとってプラスになることをやろうとしか考えていなかった」と当時を振り返った川島は、重圧との向き合い方を次のように明かした。

「最終予選は取り返しがつかないゲームしかないし、一つ一つのプレーが取り返しがつかない。ただ、そういうところで消極的ではいけないし、積極的になるところでも、どれだけリスクを背負って、どれだけリスクを考えるかという微妙な差が大きな結果につながる。そこをポジティブに捉えて、リスクを背負っていかないといけない。それを結果に繋げられるようにチームとしてどれだけやっていけるか。個人としてもどれだけチームの力になれるか。そこを犠牲とかそういう意味ではなく発揮していくのが大事だと思う」。

 消極的ではいけない。かといって、積極的に臨む中でもリスクを無視するわけにはいかない。そういった絶妙なメンタルコントロールこそ、経験のなせる業か——。大きな期待を背負って合流してきた五輪世代をはじめ、最終予選初経験の選手が並ぶチームにも、こうしたメンタリティを落とし込んでいくことが期待される。

「普段通りにプレーできないのが最終予選だし、そういう時にどういう態度で試合に臨めるかが一番。もちろんいつも通りに試合ができるのがベストだが、そういうゲームにならなかったのが僕の外から見ていた見方」

「そういう状況の中で、リスクを取る取らないではなく、うまくいかない状況をどれだけ修正していけるか、どう攻撃を活性化させるかという部分は理論的に考えられる部分もあると思うし、どれだけ積極的にやれるかという部分と、しっかりセーフティーにやれるかというバランスは常に保たないといけない。出てきた状況の中で、うまくいかない状況のリズムを取り戻すためにどういうふうにしていくかという部分は、次の試合に向けて修正していけたらいい」

 2次予選を46得点2失点という圧倒的な戦績で勝ち上がりながらも、最終予選の初陣から逆境に追い込まれてしまった森保ジャパン。それでも、どんな立場であれブレずに振る舞い続ける頼もしいベテランが、その土台を支えていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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