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厳しい“大会”の中で生まれた一体感、跳ね返す力…U-16日本代表候補が終盤2発で首位奪取!

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後半31分、FW貴田遼河(名古屋U-18)の決勝点を喜ぶU-16日本代表候補イレブン

[11.26 Jヴィレッジドリームカップ U-16日本代表候補 3-1 U-16福島県選抜 Jヴィレッジ]

 初の“大会”を経験し、新たな成長――。28年ロサンゼルス五輪世代のU-16日本代表候補が26日、大会を想定したトレーニングキャンプで実施している「Jヴィレッジドリームカップ」第2戦でU-16福島県選抜と対戦。3-1で競り勝ち、成績を1勝1分とした。

 05年生まれ以降の選手で構成されているU-16日本代表候補は昨年の発足後、コロナ禍によって一度も海外遠征や大会を経験していなかった世代。今回、非公式とは言え、“大会”を戦えていることは選手たちにとって貴重な、貴重な経験だ。

 森山佳郎監督は「この小さな大会でも『アジア1次予選だぞ』、くらいに煽ってやっている」という。横浜FCユースとの初戦(25日)は終盤に掛けて内容を向上させたものの、0-0。相手の方がベンチを含めた一体感、ムードの良さを表現していた。だが、指揮官からも指摘されて迎えたこの日は、サブに回った選手たちが良く声を出してチームを盛り上げるなど、文字通り「ONE TEAM(ワンチーム)」になっての戦い。得点を全員で喜び、特に1-1に追いつかれてから逆境を力強く乗り越え、最後は相手を圧倒するような見事な戦いで勝ち切った。

 U-16日本代表候補はこの日、初戦から先発9人をチェンジ。GKは中村圭佑(静岡学園高)で4バックは右からSB野田隼太郎(藤枝東高)、CB尾崎凱琉(大阪桐蔭高)、CB畑野優真(横浜FMユース)、そしてゲーム主将の左SB小杉啓太(湘南U-18)。中盤は佐々木奏太(札幌U-18)と幸喜祐心(琉球U-18)のダブルボランチで右MF橋本陸斗(東京V)、左MF中川育(広島ユース)。前線はやや引き気味に位置する松原史季(武南高)と小田晄平(昌平高)がコンビを組んだ。

 対する福島県選抜は前日、周囲が驚くような戦いによってU-17日本高校選抜を2-0で撃破。初戦からメンバー数人を入れ替えていたものの、前日も好守を見せていたMF神田拓人(尚志高1年)や189cmCB渡邉優空(尚志高1年)が相手の攻撃を食い止めるなど、この日も格上相手に食い下がっていた。

 序盤は互いに好守も見られた一方、パスがズレてロストが増えるなど落ち着かない展開。その中でU-16代表候補は幸喜が巧みなターンで抜け出したり、佐々木がミドルシュートにチャレンジする。また、徐々にビルドアップのリズムが向上したU-16代表候補は、突破口となっていた橋本の縦突破などからゴール前のシーンを増やしていく。そして45+1分、右中間でボールを持った橋本がPAへスルーパス。抜け出した松原がGKの頭上を抜くループシュートでゴールを破った。代表候補初選出の松原は初ゴール。選手たちは松原の下へ集まり、全員で喜んでいた。

 後半、U-16代表候補は開始からMF石渡ネルソン(C大阪U-18)とFW貴田遼河(名古屋U-18)を投入。ボールを保持し、相手を押し込むU-16代表候補に対し、福島県選抜も速攻からFW桜松駿(尚志高1年)らがゴールへ迫ろうとする。U-16代表候補は前半から寄せが甘い部分も見られたが、最後のところで決定打は打たせず。それでも22分、際のところでよく守って1点差を維持していた福島県選抜が1チャンスをゴールに結びつけた。

 中盤中央のMF若林来希(尚志高1年)から左サイドへ展開。ボールを受けたMF安斎悠人(尚志高1年)がカットインから右足を振り抜き、ファーサイドのネットを揺らす。福島県選抜は喜びを爆発。対するU-16代表候補は直後に貴田がPAへ切れ込んで倒されたようにも映ったが、判定はノーファウルでPKを得ることができなかった。

 ただし、ベンチも含めて勝利への強い執念を感じさせるU-16代表候補は31分、交代出場MF鈴木陽人(名古屋U-18)からのラストパスを受けた貴田が正確なコントロールから右足で勝ち越しゴール。ベンチも含め、各選手が大興奮の表情でゴールを喜び合った。

 この後、疲れの見える相手を攻守で上回り続けたU-16代表候補は45+1分、石渡からのパスを受けたMF石井久継(湘南U-18)が連続の切り返しでDF2人を鮮やかに抜き去り、右足でゴールを破る。“大会”は4チーム総当たりのリーグ戦で争われており、引き分けでも優勝が厳しくなる状況。その中、絶対に負けられないという思いをプレーで、声で表現したU-16代表候補が首位へ浮上した。

 貴田は普段の練習試合と異なる心構えで戦えたことを明かす。「自分としても、チームとしても(心の底から)絶対に負けないぞという気持ちが(代表チームで)初めて出た大会です。森山さんからもスタメンのメンバー、サブメンバーかかわらず、自分たちが声出して盛り上げてという話があったんですけれども、自分たちもその気持ちが強くて自然とできたと思います。日本を代表して来ている選手として、ここで絶対に負けちゃいけないと思いますし、負けていたらなぜ自分じゃないんだと思う選手が出てくると思うので自分たちが最後優勝して終われるように集中していきたい」。その姿勢が逆境を跳ね返す力に。相手は県選抜チームだったが、この大会へ向けて時間を掛けて準備し、強さを発揮していただけに大きな白星だった。

 森山監督は「あそこで追いつかれてガクンとなるところから1段階、2段階ギアを上げて、この子らに上げるスイッチがあったのは本当に嬉しい発見でした」と頷く。最終戦の対戦相手は勝ち点1差の2位・U-17日本高校選抜。指揮官は「向こうもかなり気合入ってくるんじゃないかと思う。トレーニングマッチでは味わえないようなゲームになるんじゃないかと思います」と語った。代表チームとしての国際経験を持たない彼らにとって貴重な年上との真剣勝負。U-16代表候補は1歳年上の才能たちとの戦いを勝ち切り、また成長して21年の活動を終える。

(取材・文 吉田太郎)

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