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U-15日本代表候補は帝京高と渡り合うも2-6で逆転負け。成長する環境を手に入れてアジアの戦いへ

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1本目40分、U-15日本代表候補はMF佐藤龍之介(FC東京U-15むさし)が左足シュートを決めて先制

[12.2 練習試合 U-15日本代表候補 2-6 帝京高 高円宮記念 JFA夢フィールド]

 23年U-17ワールドカップを目指すU-15日本代表候補は高円宮記念 JFA夢フィールド(千葉)合宿最終日の2日、東京の名門・帝京高と練習試合(40分×3本)を行った。1本目終了間際にMF佐藤龍之介(FC東京U-15むさし)のゴールで先制したが、2本目、3本目にそれぞれ3失点して2-6で敗戦。前向きな部分と課題も感じて21年の活動を終えた。

 1本目、4-5-1システムを組んだU-15代表候補はGKがピサノアレクサンドレ幸冬堀尾(名古屋U-18)、4バックは右SB江口拓真(神戸伊丹U-15)、ゲーム主将のCB田所莉旺(川崎F U-15)、CB小沼蒼珠(三菱養和SC調布Jrユース)、左SB西川宙希(C大阪U-15)。中盤はボランチの位置にMF中島洋太朗(広島Jrユース)とMF矢田龍之介(1FC川越水上公園)が入り、右MFが佐藤、左MFがMF小竹知恩(プログレッソ佐野F.C.U-15)、トップ下が山本将太(磐田U-15)で1トップはFW徳田誉(鹿島つくばJrユース)が務めた。

 対する帝京はU-15代表候補歴を持つFW齊藤慈斗ら2年生中心のメンバー。互いに前からのプレッシングと相手を見ながらのパスワークを見せ合う中、U-15代表候補がより多くのチャンスを作り出す。8分、小竹の縦突破から西川が左足でフィニッシュ。10分には矢田のピンポイントクロスから山本のヘッドがクロスバーを叩く。

 11月30日の練習試合2試合はいずれも戦えていた時間を伸ばし、良さを発揮していた選手もいたが、無得点で敗戦。12月1日のオンライン取材対応で{{廣山望}監督は「ある程度手応えがある中で結局、点数を入れられてこっちが決められて負けたという意味では選手が課題と感じてくれるような試合でした」と分析していたが、この日はゴール前により人数を掛けるなど迫力のある攻撃を見せていた。

 また、DFリーダーの田所が声でチームを統率し、矢田や中島が積極的に縦へボールをつけながら攻撃。1本目半ばも徳田がシュートへ持ち込み、小竹がインターセプトからそのままドリブルシュートを打ち込んだ。

 ビルドアップを狙われ、ショートカウンターを受けるシーンも増えていたが、帝京MF押川優希(2年)の右足ミドルをGKピサノが横っ飛びで反応。0-0で食い下がると40分、前からプレッシングへ行った佐藤が相手DFからボールを奪い取り、左足シュートを決めて先制した。

 U-15代表候補は2本目、ピサノ、田所、西川、矢田、山本に代えてGK宮崎圭伸(長崎U-18)、キャプテンマークを巻いたCB松本遥翔(JFAアカデミー福島U-15WEST)、CB大場章太郎(鳥栖U-15)、MF石井陽(前橋FC)、FW道脇豊(熊本Jrユース)をピッチへ送り出す。だが、明らかに出力の上がった帝京に試合をひっくり返されてしまう。

 1分、2本目から出場の左SB入江羚介(2年、20年U-16日本代表候補)の左ロングスローが両CBの頭上を越えてファーサイドへ。MF橋本マリーク識史(2年)がコントロールから左足シュートを決めて1-1となった。帝京はさらに8分、DFラインから2本縦パスを通すと、齊藤のポストプレーからMF大口晴仁(2年)が抜け出し、左足で勝ち越しゴールを決める。

 U-15代表候補もチャンスを作り返したが、帝京は16分、右サイドへ抜け出したFW横山夢樹(1年)の折り返しを齊藤が右足で決めて3-1。U-15代表候補は“仮想・アジア”の帝京の強度、スピードに飲み込まれる形となった。直後の飲水タイムで帝京は6人をチェンジ。U-15代表候補も江口、小沼、中島、小竹、佐藤、徳田をCB土橋竜之介(鹿島つくばJrユース)、左SB柴田翔太郎(川崎F U-15)、MF立花圭吾(FC東京U-15むさし)、MF今富輝也(神戸U-15)、MF白須健斗(横浜FM Jrユース)、MF瀬山航生(浦和ユース)へ交代した。

 そのU-15代表候補は23分、左中間へ抜け出した道脇のラストパスを瀬山が決めて1点差。その後もショートカウンターやサイドチェンジを交えた攻撃から瀬山や道脇、そして松本がシュートへ持ち込んだ。互いにややバタバタした時間が続く中でチャンスを作ったものの、決めることができない。逆に帝京の横山やMF山崎湘太、MF土本瑶留といった個人技に長けた1年生たちからなかなかボールを奪い返すことができず、押し返されてしまう。

 3本目、帝京は1年生11人のメンバーへ。一方のU-15代表候補は宮崎、松本、大場、石井、道脇に代えてGK濱崎史揮(FCフェルボール愛知)、キャプテンマークを巻いたCB本多康太郎(湘南U-15)、MF杉浦駿吾(名古屋U-15)、MF石山青空(新潟U-18)、FW磯崎麻玖(大宮アルディージャU-15)を投入した。

 だが、2本目に続き、3本目も帝京が優位に立つ展開に。帝京は技術力高い1年生たちが相手を見ながら、余裕を持ってボールを動かし、奪い返しも速かった。6分、帝京はMF藤田隆之介(1年)が自ら獲得したFKを右足で鮮やかに決めて4-2。U-15代表候補も立花が決定的なヘッドを放ったが、ゴールラインのDFにクリアされると、石山を道脇に代えた後の22分には相手の跳ね返しから横山にドリブルシュートを決められてしまう。

 帝京はさらに32分、MF山下悠斗(1年)の右クロスをMF大貫慶斗(1年)が決めて6点目。相手にボールを握られる時間の続いたU-15代表候補も終盤、高い位置でのインターセプトなどからゴールへ迫ったものの、得点することはできず、2-6で敗れた。

 U-17ワールドカップのアジア予選は来年スタート。今回の合宿でU-15日本代表候補は自発的に宿舎の部屋を借りてミーティングをしたり、試合前後に選手同士で意見を出し合う姿が見られたという。海外遠征や大会を体感できなかった1年だったが、ここへ来て「代表チームの中で自分のチームが勝ち抜くのと同じ感覚で、『もっと良くしないといけない』とやってくれている」(廣山監督)。少しずつだが、本番をイメージしたピッチ内外を過ごす選手が増えてきている。

 今回の合宿では強度の高い年上相手に3試合行い、戦えている部分も多かった。だが、この日は劣勢の展開で跳ね返す力や守備の統率力などが欠けて敗戦。また課題を感じた選手たちが来年の活動再開までにどれだけ日常を変えて取り組み、成長して戻って来ることができるか。

 06年生まれ以降の選手たちで構成された“06ジャパン”の主力は中学3年生や、高校1年生の早生まれ選手だ。廣山監督は今回の合宿で「オリンピックの時に吉田(麻也)選手が『環境の厳しいところにいないと成長できない』という話をしていたことを紹介した」という。これから高校に進学する選手たちが高校3年生の中でレギュラーとして戦う「環境を手に入れて欲しい」(廣山監督)。“06ジャパン”の選手たちは、より厳しい戦いができる環境をつかみ取り、アジア、世界の大会へ向けて成長を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)

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