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攻守、ピッチ内外でも「係る」。U-19日本代表候補がFW福田、CB石井ゴールなどで大学生に5発逆転勝ち

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1本目36分、FW福田師王(神村学園高)が右足で同点ゴール

[3.2 練習試合 U-19日本代表候補 5-1 桐蔭横浜大 高円宮記念JFA夢フィールド]

 U-19日本代表候補が高円宮記念JFA夢フィールド(千葉)合宿最終日の2日、桐蔭横浜大と練習試合(45分×2本)を行い、5-1で逆転勝ちした。

 U-19代表候補は、23年U-20ワールドカップを目指す世代。合宿最終日の練習試合を4-4-2システムでスタートした。GKはバーンズ・アントン(町田)で、4バックは右SB遠山悠希(沼津)、CBチェイス・アンリ(尚志高)、ゲームキャプテンのCB坂本稀吏也(山形)、左SB入江羚介(帝京高)。中盤は佐野航大(岡山)、吉田温紀(名古屋)のダブルボランチ、右SH阿野真拓(東京V)、左SH笠柳翼(長崎)、そして2トップは福田師王(神村学園高)と小林俊瑛(大津高)がコンビを組んだ。

 攻守ともにやや後手に回った立ち上がり、中盤でのロストから桐蔭大MF水野颯太(3年=常葉大橘高)に先制点を奪われてしまう。さらにアンリが身体を張って何とか守るようなシーンのあったU-19代表候補だが、遠山がインターセプトから一気に攻め上がり、笠柳が左サイドで積極的にボールに絡むなど反撃する。14分には坂本のインターセプトから笠柳が粘って前進。前線で強さを見せた福田が強引に持ち込んで右足を振り抜く。

 一方、桐蔭大はポゼッションで相手を大きく上回り、DFラインの背後を突くシーンを増やしていた。16分には、右クロスからFW山田新(3年=川崎U-18)が決定的なヘッド。だが、U-19代表候補はGKバーンズが至近距離から一撃をビッグセーブではじき出す。17分、U-19代表候補はアンリに代えてCB高井幸大(川崎U-18)を投入。20分にはDFライン背後へ抜け出した福田の右足シュートがGK横を抜けたが、カバーのDFにクリアされて同点とはならない。

 1本目、U-19代表候補は桐蔭大に寄せ切れず、球際で苦戦するなど劣勢の時間帯も長かった。だが、徐々に守備から修正し、攻撃面でも中盤の選手が前向きの回数を増やす。そして、佐野と吉田が連係しながら前進、縦にボールを入れて押し返した。バーンズの好守もあって1点差のまま食らいつくと36分、左SB入江が前線の小林へ斜めのパス。小林が厳しいチェックを受けながらも粘ってPAへ繋ぐと、最後は鋭く反応した福田が右足で同点ゴールを流し込んだ。

 37分には遠山に代えて藤井海和(流通経済大)を右SBへ。直後には藤井の折り返しのこぼれを阿野が右足で狙う。1本目はこのまま1-1で終了。U-19代表候補は徐々にボールを動かす、守備の良いポジショニングを“繋げる”という部分をグループ、チームで高め、個の勝負でも良く戦って45分間を終えた。

 U-19代表の冨樫剛一監督がチームに求めていることは「ピッチの中だけじゃなくて、、ピッチ外でも係わっていく」ことだ。ハーフタイムには選手たちがその目指す姿を表現。指揮官は、「1本目戦った選手から2本目出る選手に色々なものを伝え、試合に出れていない選手が外から見たものを伝えているのを見た時に、みんなチームに係わってくれているな、後半(2本目)良いゲームができるんじゃないかなと」と振り返る。その期待通り、2本目は選手たちが攻守で係わり続けて大学生を上回った。

 4-3-3を組んだ2本目はGKが春名竜聖(C大阪U-18)、4バックは右SB藤井、CB高井、CB石井大生(湘南)、キャプテンの左SB松田隼風(水戸)。中盤は宇野禅斗(町田)がアンカーに入り、西谷亮(東京V)と木戸柊摩(大阪体育大)の2シャドー。右SH永長鷹虎(川崎F)、左SH山崎太新(横浜FCユース)、そして内藤大和(甲府U-18)が最前線に入った。

 同じくメンバーを入れ替えた桐蔭大に対し、U-19代表候補は永長の仕掛けやセットプレーでそのゴールへ迫る。12分にはDFラインで落ち着いてボールを動かしていた高井と土屋巧(柏)をチェンジ。そして15分、敵陣中央右寄りの位置で内藤がFKを獲得する。これを松田が左足で入れると、ファーの内藤が頭で折り返す。最後は石井が右足シュート。DFに当たったボールがゴールラインを越え、2-1となった。

 この後、U-19代表候補は勝ち越し点を決めて“乗った”石井が18分、22分と相手のカウンターを阻止。24分にはラストパスを土屋が身体を張ってクリアする。最後の際の部分で良く踏ん張っていたのに加え、2本目はより整理されていた守備。両SHが桐蔭大SBのパスコースを消すなど連動して守り、高い位置での奪い返しに成功していた。

 そして宇野や西谷、木戸がボールを散らしてサイドからの崩しへ結びつける。迎えた32分、左サイドからテンポ良く攻めて松田がクロス。逆サイドで攻撃を作り直すと、藤井の折り返しを受けた永長が左足シュートをニアへ突き刺した。

 U-19代表候補は33分にも松田の左クロスを内藤が頭で折り返す。中央の山崎は合わせ損なったものの、そこからすぐに立て直して反転しながらの左足シュートを決めた。そして40分には左サイドから仕掛け、木戸の折り返しを内藤が1タッチで決めて5-1。後半半ば以降はほとんどGK春名の守るゴールを脅かされることなく、快勝した。

 03年生まれ以降の選手たちによって構成されたU-19代表候補の目標は、今年9月開催予定のAFC U20アジアカップ予選、そして来年のAFC U20選手権、U-20ワールドカップだ。22年の始動合宿となった今回、富樫監督は選手たちへ向けて「僕らの目標はU-20で世界一を取ることなんだよ」と提示。そして「出たいんだよ、日の丸をつけてオレ、戦いたいんだよという選手じゃないと残っていけない」とメッセージを送ったという。

 この日は試合中、内田篤人ロールモデルコーチがベンチと逆側のサイドまで移動してSBの選手中心に細かなアドバイス。セットプレーではピッチ脇の船越優蔵コーチが大声でポジショニングを指示していた。この世代はコロナ禍で海外経験が不足。補いながら強化していかなければならない。その中で今回の合宿では、過去の海外遠征でU-18代表がスペインに完敗した映像を見せるなど世界上位の代表チームのレベルの高さ、強さを意識付けしたという。また、この日の試合中は川口能活GKコーチ含めて各スタッフがベンチを離れて選手に近い位置まで移動し、一つ一つのプレーにこだわって指導。選手たちもその言葉に全力で応えていた。

 今回の4日間は「ミーティングでも聞き逃さない、トレーニングでも一分一秒無駄にしないとこのキャンプを迎えた中で良いゲームをしてくれたんじゃないかなと思います。(3日間の)成長度は自分の中でも驚いています」(富樫監督)という合宿になった。今後も限られた環境、準備期間の中でも成長し続けるだけ。“03ジャパン”の選手たちが個性を出し合いながら係わりを深め、目標へ前進する。

(取材・文 吉田太郎)
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