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パリ世代の初陣主将はMF藤田譲瑠チマ「みんな上手いプレー、強いプレーは当たり前」“プラス1”もたらせる存在へ

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MF藤田譲瑠チマ(横浜FM)

[3.9 練習試合 U-21日本代表候補 5-1 横浜FM]

 大岩剛監督の就任後初の対外試合。U-21日本代表候補のキャプテンマークを巻いたのはMF藤田譲瑠チマ(横浜FM)だった。「いい意味でも悪い意味でも、巻いていようが巻いていまいがやることは変わらない。できることを精一杯やるだけ」。負荷軽減のためプレータイムは23分間にとどまったが、その言葉どおりの振る舞いで“代表基準”を示した。

 大岩ジャパン初陣の対戦相手は、藤田にとっては所属先でもある横浜F・マリノス。練習生主体のため“紅白戦”という雰囲気ではなかったが、慣れ親しんだ相手にボランチの一角で前半23分までプレーした。今回のメンバーの中で出場時間が短かった藤田、MF鈴木唯人(清水)、MF田中聡(湘南)はいずれもJ1クラブの主力選手。藤田が「考慮してくれたのかなと思う」と振り返ったとおり、所属先での出場機会や負荷を踏まえての判断だったとみられる。

 ただ、そうした特別扱いは「短い時間でも存在感を示す」役割と表裏一体でもある。そのなかでも藤田は、持ち味である積極的なプレッシングを仕掛けたり、ビルドアップの案内役として周囲に声をかけたりと、チームに安定感をもたらすパフォーマンスを発揮。今季から横浜FMでプレーしている経験も活きたようで、「どんどん前から行くところは去年に比べたら増えたと思う」と実感を口にしていた。

 また藤田自身は2019年のU-17W杯以降、この世代の代表チームの常連。リーダーシップを発揮する試みはキャプテンになる前から続けてきており、その姿勢はカテゴリがU-21に移っても変わらなかった。「自分はこのチームに他の選手より長く参加しているほうなので、監督やスタッフのこともわかるし、選手にもずっと一緒にやっている人もいる。そういう選手とコミュニケーションを取りながらできればと思ってやっていた」。

 とりわけ今回はわずか3日間のトレーニングキャンプ。「試合前のミーティングでも監督から『練習は1回しかやっていないし、合わないこともたくさんあると思うから、近い選手と話しながらやってほしい』と言われていたので、特にそこを意識しながらやっていた。みんな上手いプレー、強いプレーができるのは当たり前。コミュニケーションの部分でも次の国際大会に向けてもう始まっているので、試合からすり合わせていければ良いなと話していた」とキャプテンらしい取り組みを行っていたようだ。

 もっとも、全体的な自己評価は「全部プレッシャーに行くのではなく使い分けたり、後ろでボールを持つのではなく、もう少し高い位置でボールを持ったりすれば良かった」と反省点先行。大岩監督が選手たちに「(自身の能力やベースの)プラス1」を求めるなか、藤田はU-21日本代表のレギュラー争いをリードしているということだけでは満足せず、さらに高みを見据えていく姿勢を強調していた。

 そんな思いの裏には今年の年初に味わった悔しさがあるという。今年1月のA代表国内組トレーニングキャンプでは同世代からMF荒木遼太郎(鹿島)、DF西尾隆矢(C大阪)、MF松岡大起(清水)、鈴木が選出されたなか、藤田は選外。「年始に遼太郎、唯人、西尾がA代表に選ばれているのを見てすごく悔しかったし、自分もそういうところで戦いたい気持ちが強くなった」と率直な気持ちを口にする。

 今回の活動では大岩監督からも「A代表経由のオリンピックであり、オリンピック経由のA代表じゃない」というテーマが掲げられていたが、藤田からも「A代表に選ばれてそっちで出ながら、五輪に助っ人で出るのが一番良い」と力強い言葉。「今はこの代表でレベルアップすることや、自チームで試合に出て圧倒的なボランチとして戦えるようになるのが最優先事項」と冷静さは保ちつつも、将来的な目線を高く保とうとしているようだ。

 今月末に組まれたドバイカップは、そうした“代表基準”を世界にぶつける絶好のチャンスとなる。「グループでクロアチアと当たり、久々にヨーロッパのチームとできるのでそういったところがすごく楽しみ。環境も全然違ってくるので、久々の海外遠征で難しさもあると思うけど、楽しみながらやれれば」。再び挑む国際舞台。藤田は「自分でも表現しながら周りにも要求しながら、一つ一つの球際、1対1にこだわりながらやっていきたい」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
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