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W杯サバイバルに柴崎岳「期待も不安もない」…ブラジル戦終えて語った“誰が出ても同じレベル”への疑問

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日本代表のMF柴崎岳(レガネス)

 日本代表のMF柴崎岳(レガネス)が8日、報道陣のオンライン取材に応じた。後半36分からの出場だったキリンチャレンジカップ・ブラジル戦(●0-1)でのパフォーマンスについては「10分足らずだったので特に言うことはない」ときっぱり。カタールW杯へのサバイバルにも「メンバーに入るか入らないは気にしていない」と冷静に語った一方、チームの戦い方については仔細に展望を述べた。

 柴崎は4-3-3の新システムを採用した昨年10月のカタールW杯アジア最終予選オーストラリア戦(○2-1)以降、日本代表での出場機会が激減。ターンオーバーで臨んだ今年3月のベトナム戦(△1-1)ではアンカーで先発出場も61分間のプレータイムでアピールし切れず、ブラジル戦もアディショナルタイム含めて約10分間の出場にとどまっていた。

 前回のロシアW杯で大きく名を挙げた背番号7だが、カタールW杯に向けたサバイバルレースでは苦しい戦いが続いている。それでも「あまりそういうふうには考えていない」という。「自分が当落線上にいるかどうかは別にして、残るためにプレーしているのではなく、あくまでも自分がベストを尽くして、その時に思っていること、自分がピッチでできたことに対して周りがどう判断するか。日本代表が自分というキャラクターを必要とするのかしないのかだと思っている」。そう思いを語った柴崎は「メンバーに入る、入らないは気にしていない」と断言。「日本代表はW杯に向けていい準備をしないといけない時期で、個人のパフォーマンス、チームのパフォーマンスをより良くしていこうという時期でもある。そういった中で自分がいまできることをプレーして、オンザピッチでもオフザピッチですべきことをし、その行く末を見ている。期待も不安もない」と力を込めた。

 また4-3-3システムの中での生き残り方についても「あまりサッカーのポジション論争みたいなものに加担したくない」と冷静だ。「ブラジルも実質4-4-2という見方もできるけど、4-3-3というシチュエーションもあったし、同じ4-4-2でも誰がサイドに開くかというやり方で見方が全然変わってくる」と例に出し、「ブラジル戦に関して言えば、僕が入った時は4-2-3-1、その前は4-3-3とシステムで言えばそうなるが、相手を見てどのように立ち位置を取っていくかという部分で言えば、型にハメていく必要はないんじゃないかと思っている」と指摘。「チームがどういう戦いを選んでいくかの中で、アンカーでは僕と(遠藤)航ではプレースタイルが全く違うし、インサイドハーフというポジションについても(田中)碧とも守田(英正)とも(原口)元気くんとも(鎌田)大地とも違うキャラクターを持っている。そのシチュエーションにおいて、誰が何を与えていくかを選んでいくのが大事だと思っている。僕にできるプレーもあれば、できないプレーもあるし、自分が出た時にはそれを理解して、どのポジションでも置かれた場所で最大限の努力をしていこうと思っている」と意気込みを示した。

 自らの立場や役割については、一歩引いた言葉が目立った。その一方、チームが進むべき方向性については具体的な見解も繰り出した。ブラジル戦については「さまざまな評価軸、論調があるのは非常にいいことで、ポジティブな側面も、批判的な側面もあって、どちらもあるなという感覚なので、それ自体は悪いことではない。勝つという目標では限りない条件が揃っていたけど、それでも試合内容としては十分ではなかった」と総括。「彼らがどれほどの気持ち、モチベーションを持ってこの試合に臨んだかはわからないが、結果を彼らが手にしたのは間違いない」と振り返った。

 本大会まで残り5か月。ブラジル戦で感じた世界トップレベルとの差を埋められるのか。柴崎は「たった5か月で世界のトップレベルと伍していくことは不可能。日本の現状を考えても最適なアイデアではない」と語る。もっとも、ただただ諦めているわけではない。「何が起きるのがわからないのがサッカー。今の自分たちの力、日本が持っている力をどう引き出して、相手とどう戦っていくかの可能性を探していくこと。W杯の開幕戦、2戦目、3戦目と可能性を見出していくため、やっていくことが最適なのではないかと思っている」と展望した。

 そうした中で、チームの戦い方にも言及。「いまは代表チームとしてある程度の形を持って、守備も攻撃も自分たちの中でイメージを持ちながらできるようになっている反面、その形にハマりすぎてしまう危険もある。とりわけパターンみたいになってしまうと、相手もそれをわかりやすく対応できるわけで、ブラジル戦で言えば中での崩しは皆無に近いような状況で、外からでしか突破口を見出せなかった形だった」と現状に警鐘を鳴らしつつ、攻撃の糸口について一つの道標を示した。

「一つは選手のキャラクターを変えて、違う戦い方も模索していくのはありかなと思っている。たとえばいまだったら大迫選手がメインでやっているが、彼のキャラクターと、いまいる(古橋)亨梧、(前田)大然、(上田)綺世のキャラクターは全く違う。3者のキャラクターもある中、彼が出た時に同じサッカーが期待できるかというと、それは全く違うレベルの話になってくる。誰が出ても同じレベルの戦い方ができるということを追求するのはいいことだと思うが、“誰が出ても同じレベル”ということではなく、“誰かが出て違う戦い方ができる”という考え方にしないと変化は生まれない」

「いまは(三笘)薫が出たら彼の良さを引き出すのがアクセントになっていて、逆の(伊東)純也もしかり。またシステムを変えれば中のコンビネーションができるようになると思う。綺世、亨梧、大然はポストプレーよりは前線の抜け出しに強みを持っているので、そういった選手にどういったボールを配球していくか。それはブラジル戦を見ていても感じたし、キャラクターをもうちょっと考慮した戦い方もありなのではないかと感じた」

 ここではストライカー陣やサイドアタッカーの引き立て方にフォーカスしたが、代表活動期間中のトレーニング後にはロングキックやミドルシュートなど、自身のストロングポイントであるキックの感覚を磨く居残り練習にも精を出している柴崎。“キャラクターを考慮した戦い方”が実現した場合、そのスキルが必要になる場面も増えていくことになりそうだ。

(取材・文 竹内達也)
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