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豪雨による開始遅延、アウェーの大歓声も「動じていなかった」U-19日本代表、4-0でU-20W杯への第一歩

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後半18分、MF北野颯太(C大阪)のゴールを喜ぶU-19日本代表の選手たち

[9.12 U20アジアカップ予選 U-19日本代表 4-0 U-19ラオス代表 ラオス]

 U-19日本代表が世界への第一歩を白星で刻んだ。「AFC U20アジアカップウズベキスタン2023予選」(ラオス)グループCにおいて、日本は初戦で開催国のU-19ラオス代表と対戦。試合前から激しく降り注いだ雨の影響で劣悪になってピッチコンディションに苦しみつつも、FW坂本一彩(G大阪)の先制点から計4得点を挙げ、4-0の快勝となった。

「左右されない」というコンセプトを掲げるU-19日本代表・冨樫剛一監督だが、ピッチのあちこちに水たまりが出来上がるほどの豪雨と、それに伴って試合開始が30分も遅れるにあたって、「さすがにここまでは考えていない」と苦笑いを浮かべるほかなかった。1万人近い観衆が詰め掛けたことで生まれた独特の雰囲気もあって、最大の懸念材料は選手たちの心理面だったのは間違いない。

 だが、蓋を開けてみれば、「思っていた以上に選手たちは動じていなかった」(冨樫監督)。雰囲気に飲まれることなく、「まずはセーフティーにやることを考えた。ボールを落としたらやられるのは分かっていたので」とDF菊地脩太(長崎)が振り返ったように、無駄なリスクを冒すことなく冷静に対応。普段なら繋ぐ場面でもボールを蹴り出すなど、このピッチならではのプレー選択を継続しながら試合を運んだ。

 序盤は相手の勢いに押される時間帯もある中、勝負の流れを引き寄せたのは冨樫監督の用兵だった。

「利き足と逆の位置に配置していた選手たちを利き足と同じサイドにした。内に入っていくのではなく、奥に入っていくようにする狙いだった」

 左サイドに配置されていた右利きの山崎太新(筑波大)を右へ、そして右サイドに入っていた左利きの永長鷹虎(川崎F)を左サイドへと移す。中へ切れ込んで崩すのは現実的ではないピッチ状態を加味し、シンプルに外から縦を狙った上でのクロス勝負。この判断が吉と出る。

 21分、左サイドを得意のドリブルで破ったのは、「自分が左に行くということはクロスを上げろということだと思った」と振り返る永長だ。「良いタイミングで上げられた」と言うクロスを受けたのは、「自分が決めるしかないと思っていた」と語るFW坂本だった。決して「得意ではない」と言うヘディングをしっかり頭に当てて、見事にゴールネットを揺らす。そしてこの1点が試合の流れを大きく動かした。

「あのままズルズルいったら分からなかった」と指揮官が振り返ったように、最初の決定的なチャンスをモノにした意味は大きかった。44分には再び永長のクロスから、今度はMF山根陸(横浜FM)が「行けるかなと思った」とペナルティーエリア内に入り込み、2点目をヘディングシュートで奪い取る。さらに後半18分にはMF北野颯太(C大阪)のミドルシュートによる追加点、同24分には交代出場のFW熊取谷一星(明治大)のダメ押しゴールも生まれ、差は4点に広がった。

 その後も「一つのミスでやられると思っていた」と言う菊地と、その相棒のCB田中隼人(柏)を軸にした冷静な守りで、セットプレーを含めてしっかりと対応。ゼロ封で締めて、4-0の快勝となった。

 来年のU-20ワールドカップに向けた最初の試合を白星で飾った日本は、中1日の次戦でグアムと対戦する。冨樫監督は「一つずつ勝っていくことを4試合積み重ねるつもりで来ているので、まずはそこに勝つことに集中したい」と勝って兜の緒を締めて、会場を後にした。

(取材・文 川端暁彦)
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