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“最終選考”でビッグセーブ連発!! 正GK争いにシュミット「序列は良くも悪くもどうにでもなる」

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GKシュミット・ダニエル(シントトロイデン)

[9.27 キリンチャレンジ杯 日本0-0エクアドル デュッセルドルフ]

 スコアレスドローに終わったカタールW杯メンバー発表前最後のテストマッチ。最も大きな輝きを放ったのは、長らく控えGKという序列に甘んじていたシュミット・ダニエル(シントトロイデン)だった。執拗に狙ってきた右CK、絶体絶命のPKを次々に阻んだ日本代表の守護神候補は「大きな仕事はできたかなと思う」と胸を張った。

 23日のアメリカ戦でGK権田修一(清水)が負傷交代し、後半から途中出場で出番を掴んだシュミット。ターンオーバーで臨んだエクアドル戦でもゴールマウスを任された。試合2日前での取材対応では「絶体絶命のピンチを止めるところはなかなかお見せできていないので、見せられるなら見せたい」と力強く宣言。まさに“有言実行”のパフォーマンスを発揮した。

 試合のハイライトは後半38分のPK。キッカーのFWエネル・バレンシアに対し、先手で駆け引きを試みた。「とりあえず相手が蹴る前にたくさん動いて、少しでも相手の気を逸らして、最後は自分が信じた方向に思い切り跳ぶふうにやろうと思っていた」。腕を広げながらゴールマウスを動き回り、プレミアリーグでの経験も持つストライカーにプレッシャーをかけた。

 そして相手が蹴る瞬間、迷わず右に向かって飛んだ。跳ぶ方向はデータではなく「なんとなくです」だったというが、この読みがピタリ。森保一監督も「彼だから止められたと思う。大きな仕事をしてくれた」と絶賛のスーパーセーブだった。

 また森保監督はPKの場面に加えて、前半終了間際のスーパーセーブも合わせて称えた。MFアンヘル・メナの右CKをニアサイドで相手に合わせられ、ゴールマウスに向かってふわりと飛んできたボールに対し、長い腕を生かして弾き出した場面。ところがシュミットにとって、これは課題まじりのプレーだったようだ。

「めちゃめちゃ嫌なエリアに蹴ってきていて、すごく対応が難しくて。パンチングする時も相手の頭ギリギリのところだったし、いつ先に触られてもおかしくないなと思っていた」。序盤から左利きのA・メナのインスイングキックはゴール前に襲いかかり、シュミット自身もゴール前に立ちはだかる相手の長身選手への対応に苦慮。「コーナーの守備でもうちょっと力強さが欲しかった」と振り返った。

 この日はDF伊藤洋輝(シュツットガルト)、DF谷口彰悟(川崎F)を除けばフィールドに180cm以下の選手が並んだこともセットプレーに苦戦した理由の一つ。それでもシュミットは自身に矢印を向けた。

「もっと空中戦はもう大丈夫だなという安心感を与えられるプレーをもうちょっとできたら。もっとパンチングするにしてもドカーンって飛ばすような、ゴール前は俺がいるというような存在感を出せれば」。持ち味の高さにさらなるレベルアップを求めていた。

 一方、課題とみられていたコーチングには手応えものぞかせた。

「前線のランニングが多かったので、そこに最終ラインが対応できるように声をできるだけ出して喋るようにしていた。そこで一発裏を取られるシーンはなかった。ディフェンスの対応が良かったのはもちろんあるけど、自分も手助けできたと思う」。

 そうした成長の跡も見せ、掴んだクリーンシート。「引き分けだったので満足とは言えないけど、間違いなく今までの代表の試合でプレーしてきた中で一番いいパフォーマンスだった。そこは自信として持っていいと思う」と胸を張った。

 もっとも、報道陣からの「これで序列を崩せるか」という問いには「そうは思わない」と首を振った。2010年の南アフリカW杯では、直前の親善試合でPKセーブなどハイパフォーマンスを見せたGK川島永嗣が本大会の正GKの座を獲得。今回のカタールW杯の前に十分な準備期間がないことを踏まえると、その再現が起きても不思議ではないにもかかわらず、だ。

「最終予選、2次予選で何試合も苦しい試合があった中、ゴンちゃんがチームを救っていたし、これは親善試合だし、そこの差というのはあると思う」。そう冷静に現状を見据えたシュミットは「まだW杯本番のことを考えるのはちょっと早い」とも指摘。ここから再び始まる所属クラブでの戦いに目を向けていた。

「ここからチームでどういうパフォーマンスをするかで、そこの序列は良くも悪くもどうにでもなる。まずはそこに集中してやる。その上で最後に決めるのは監督だと思うし、もちろん試合に出ることを目指してやっているけど、あまりそれを意識しすぎずチームに戻ってやりたい」。本大会まで残り2か月。“最終選考”を経てもなお、正GKをめぐる争いはギリギリまで続きそうだ。

(取材・文 竹内達也)
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