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「初めての海外でこれとは」と指揮官も驚き…ハイパフォーマンス披露のU-16日本代表DF吉永夢希「ずっとワクワクしていた」

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先制点となるオウンゴールを誘発してガッツポーズのU-16日本代表DF吉永夢希(神村学園高)

[10.9 U17アジアカップ予選 U-16日本代表 2-0 U-16ヨルダン代表 ヨルダン]

 急浮上してきた九州男児が、「期待以上」(森山佳郎監督)の仕事を見せ付けた。

 DF吉永夢希(神村学園高)にとって、このヨルダンが「初めての海外」だった。国際試合自体が初体験。「外国のチームはどんなプレーをするんだろう?」と思いながらの代表参加だったと言う。通例、U-16の予選が初めての海外になる選手などいないものだが、コロナ禍によってチームでも代表でも国際経験の消えていた世代だけに、やむを得ないところではある。

 今年7月に初めて代表候補合宿へ参加。スプリント能力の高さとアグレッシブな姿勢が評価されており、惨敗に終わったウズベキスタン遠征の反省を踏まえて進められた予選のメンバー選考でその名が急浮上した。

 本来のポジションは左SBだが、この予選では二人の左SBが他にいたこともあり、専らサイドハーフで起用された。タフに戦う姿勢と推進力、カウンター対応で守備に戻る速さなどを買われての起用だったが、攻撃面でも存在感は十分。アシストを重ねるなど「初めての国際大会」とは思えぬプレーを続けていた。

 シリア戦ではPKを外してしまうシーンもあったが、PKを奪うプレーをしたのも吉永で、蹴る勇気があったのもポジティブな材料。森山監督はヨルダンとの最終戦で、度胸抜群のこの男を本職の左SBで先発起用することを決断する。そして、その結果は吉と出る。

「(吉永)夢希を使って良かった。最後は得意なところでやらそうと起用したら、かなり良い仕事をしてくれた」(森山監督)

 前半28分の先制点はその左足から。佐藤龍之介(FC東京U-18)がプレスに行った時点で、「奪えるなと思った」と動き出して左サイドを疾駆。佐藤からパスを受けたFW道脇豊(熊本ユース)がサイドに流したボールを左足で蹴り込む。「ニアへ速いボールをと思った」という狙いで蹴ったクロスが相手DFに当たってのオウンゴールを誘い、試合の流れは大きく変わった。

 それ以外の場面でも「(吉永から)何本も良いボールが入っていた。中がちゃんと狙っていれば、もう1点くらいはいけたんじゃないかというくらい」(森山監督)のクロスで存在感をアピール。「初めての国際大会でこれとは」と熟練の指揮官も驚く仕事ぶりだった。

 本人は「代表に呼ばれて、ずっとワクワクしていた。やってみたら、意外とやれるな、という感じで」と笑いつつ、「森山さんから『誰が残る?』と言われていたので、この試合で示せてよかった」と安堵の表情も見せた。

 目標にしている選手はFC東京の日本代表SB長友佑都。「上手さより推進力とかで勝負するタイプ」という自身のスタイルと重ねている。海外未経験者が見せた怖いもの知らずのアグレッシブな姿勢は間違いなく今大会のU-16日本代表を後押ししたエネルギーとなっていたが、最後の試合ではそうしたカンフル剤の域を超えるハイパフォーマンスを披露。主力を狙えるポテンシャルがあることを、大いに示してみせた。

(取材・文 川端暁彦)
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