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有言実行の5か月間…森保Jの序列を変えた久保建英「まず選ばれないことはないだろうと楽観視できていた」

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MF久保建英(ソシエダ)

 カタールW杯でのブレイクに期待がかかる日本代表MF久保建英(ソシエダ)が13日、ドーハでの全体練習に合流した。10月下旬の左肩脱臼でコンディションが不安視された時期もあったが、「もう試合には出られるレベルになっているので、あとはこの期間でピークに持っていけたら」と不安はなし。21歳で迎える初めての夢舞台に向けて、万全のコンディションで準備を進めていく構えだ。

 今月1日のW杯メンバー発表、久保は落ち着いた気持ちで過ごしていたという。「ラ・リーガ3位のチームでレギュラーで試合に出る選手が代表に選ばれないってことはまずないだろうと、ある意味で楽観視はできていた」。当時はUEFAヨーロッパリーグの試合中に負った左肩脱臼で戦線離脱中だったが、「肩だったので別に痛くてもやればいいかなと思っていた。楽観視していた」と振り返った。

 そんな想定どおり、久保は14日に行われたラ・リーガ中断前最終節のセビージャ戦で戦線復帰を果たすと、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)1回戦の帯同を免除されて日本代表に合流。12日深夜にカタール・ドーハへ到着し、13日の練習から多くのメニューに参加した。「人通りも少ないしまだ実感はないけど、ここからはチームのことはいったん忘れて代表に集中したい」。久保にとっては初のW杯。それでも気持ちが昂りすぎることなく、平常心で挑もうとしている。

 とはいえ半年前の久保の姿を思い返せば、ここまで来た現状も驚くべきことのように思える。マジョルカで過ごした昨季終盤戦はレギュラーを掴むことができず、日本代表でのW杯最終予選も目立ったアピールは果たせず。6月4日の21歳の誕生日には「どんな立ち位置かというのを教えられた気がした。それは認めざるを得ない」と代表での序列が低いことをつらそうに受け止める姿も見せていた。

 それでも久保は続けて「人は3か月もあれば変われる」と力強く語り、「(W杯まで)これからの5か月頑張りたい。チーム探しもそういったことを加味して、幅広く視野を持っていいチームを決めたい」と宣言した。そして見事に有言実行を果たした。

 名門レアル・マドリーを離れて移籍先に選んだソシエダでは、ショートパスと個人の打開力で攻撃を組み立ていくチームの中で、シーズン序盤から定位置を獲得。MFダビド・シルバらと並んで攻撃の中心に君臨し、公式戦2ゴール4アシストと目に見える数字も残してきた。

 その良い流れは代表活動にもつながり、9月のドイツ遠征では主力組とみられるアメリカ戦の先発メンバーに入った。これまであまりプレーしてこなかった左サイドハーフのポジションながら、ミドルゾーンに守備ブロックを組んで戦う本大会仕様のスタイルでアピールに成功、3月に語っていた「W杯はサプライズがあって当たり前」という立ち位置どころか、本大会でファーストチョイスを狙えそうな地位に上り詰め、堂々のW杯メンバー入りを果たした。

 そうして今季前半戦で積み重ねてきた充実感は、ここからの戦いにもいい影響を及ぼすだろう。13日の合流初日の練習後、久保は「環境を変えたことによっていい方向に転んだというのが大きい。レアル・ソシエダというクラブが僕をいい選手にしてくれたと思う。いい監督、いいチームメートに恵まれたことに感謝したい」と謙虚に述べつつも、強敵の待ち構えるW杯の戦い方について前向きな展望を示した。

「今まで負け試合が濃厚だったような相手に対し、互角以上に戦えることが増えたことで、少し格上の相手と互角以上にやれる戦い方に自分の中で良い感触を得てきたつもり。ワールドカップというのを想定したときにも、そういったものを少し試してみたらいいかなと思う」

「防戦一方だった試合があまりなく、今季は毎試合自分のところ、自分のところ以外でもチャンスが生まれることが続いているので、その感じを出していければいい。いまの代表のメンツならチャンスがない試合はない」

 力強く語ったのはドイツ、コスタリカ、スペインという相手に対しても気後れしない姿勢。「僕たちも何試合か決め切れずに悔しい思いした試合もあったので、取りこぼしとかそういうのがないように。決定力っていうとちょっとありきたりになっちゃうけど、決め切る、終わらせることを大事にしていきたい」。あくまでもフィニッシュの局面にフォーカスを当てつつ、強気で挑んでいく気概を見せた。

 そうした言葉の端々からは、弱音を断ち切りながら停滞感を打ち破った6月の活動時の勢いを感じさせる。久保は「人は3か月もあれば変われる」と宣言した6日後、キリンカップ初戦のガーナ戦でA代表17試合目で初ゴールを記録。ならばW杯本大会でも——。幼少期から将来を嘱望されてきた“日本の宝”が、日本サッカーにとって因縁のドーハの地で飛躍を遂げる。

(取材・文 竹内達也)

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