beacon

ロシアでは直前にスタメン奪取も「あの時とは状況が違う」柴崎岳が背負うカナダ戦での使命

このエントリーをはてなブックマークに追加

MF柴崎岳(レガネス)

 カタールW杯初戦を目前に控えた最後のテストマッチ、日本代表MF柴崎岳(レガネス)に大きな役目が巡ってきた。中盤の主力が揃って欠場という危機的な状況の中、ボランチの一角での先発出場が決定的。レギュラーを奪い取った前回大会と同じシチュエーションだが、「ここまで来たらチームとしてどう勢いを持って、いい波に乗って本大会に入っていけるか」と断言。自身の立場に固執するのではなく、あくまでも日本代表のために全てを捧げていくつもりだ。

 W杯本大会が行われるカタールのドーハからいったん離れ、隣国UAEのドバイで行われる国際親善試合。日本はMF遠藤航(シュツットガルト)が脳震盪で、MF守田英正を左ふくらはぎの違和感でそれぞれ帯同せず、ダブルボランチの主力が揃って出場できないことが決まった。そこで森保監督は柴崎、MF田中碧(デュッセルドルフ)の先発起用を明言。チーム発足当初から絶対的なレギュラーを担っていたものの、W杯最終予選の途中から序列を大きく下げていた背番号7に出番が託された。

 ロシアW杯で主力を担った柴崎にとって、こうしたシチュエーションが巡ってくるのは前回大会に続いて2度目となる。ロシアW杯直前では西野朗監督が急遽就任した後、日本で行ったガーナ戦(●0-2)、スイス・ルガーノに渡って行ったスイス戦(●0-2)に2連敗し、大会前最終戦となったパラグアイ戦に4-2で勝利。勢いを持って本大会に臨んだが、パラグアイ戦から先発に返り咲いたのが柴崎だった。

 その成功体験を決して忘れたわけではない。ドイツ遠征では当時を振り返りながら「(ドイツ遠征2試合も含めた)これからの3試合で、結果といいパフォーマンスを出した選手が本大会でも試合に絡んでくるのは間違いないと思う」と述べつつ、「個人的にはそういうところを見せていきたい」と自身の先発奪取に意気込んでいた柴崎。このカナダ戦も同様、現状の序列にインパクトを与えるような活躍に燃えていても不思議ではない。

 ところが、いまの柴崎の考えは違っていた。「あの時とは状況が違っていて、その前まであまり結果も内容もついてきてない状況でパラグアイ戦でメンバーが代わって、出た選手が結果を本大会に臨んだという経緯がある。でも今は違う。今は基本的にベースで出ている選手たちが非常にいいプレーをしている。それにプラスしていつも出ていない選手、ベンチから見ている選手が総合力を付け加えるようなプレーができればいい」。9月の遠征では主力組が出場したアメリカ戦では2-0で勝利し、柴崎を含むサブ組が出たエクアドル戦は0-0のドロー。4年前とは異なり、主力選手が積み上げてきたものに大きな手応えを感じているようだ。

 現状では、その「ベースで出ている選手たち」の中に柴崎の名前はない。しかし、そうした激しい競争自体は柴崎が4年前から強く望んできたものだった。

「日本代表チームとしての力、個人ではなくチームとしての力を高めていくこと、スタメンで出る11人だけではなくて、ベンチと、スタッフも含めてチームの総合力というのをこの4年間で高めていきたいなというふうに思っていた。もちろん自分が試合に出たい思いもあるけど、ただそれ以上に日本代表チームが勝つためにプレーする。そのために日々の行動だったり、日々の生活の中できることをやっていくという、そっちの思いのほうが強く持っている」

 だからこそ、柴崎は現状の序列に割って入ろうともがくことをせず、チームの一員として総合力を底上げする使命を担おうとしている。カナダ戦に向けても「ここまで来たらチームとしてどう本大会に勢いを持って、いい波に乗って入っていけるか」をテーマに掲げ、自身のパフォーマンスには言及せず。「勝利もそうだし、内容も含め、本大会に向かっていくにあたって難しいシチュエーションにならないように。簡単ではないけど良い緊張感を持って、それでも変なプレッシャーを感じないように。チーム全体としてやるべきことをやって、大会に向かう。そんな試合になるんじゃないかと思う」。本大会を見据えつつ、チーム全体の雰囲気に目を配っていく構えだ。

 またその先にW杯本大会での大きな目標がある。「前回ベスト16を勝ち取って、それでも悔しい思いをした分、今回は代表チームでもうたっていますし、“新しい景色”であるベスト8に行くというところを日本代表チームで達成していきたい。さらにその先を目指していきたいという思いもある」。加えて柴崎は日本代表の将来を見据えつつ、さらなる大きなミッションを掲げた。

「またこういったワールドカップという大会で、日本代表がコンスタントに力を発揮していくっていう部分。結果としては、もちろん勝つこともあれば負けることもあるけど、ただ同時に皆が落胆したりとか、失望するような戦いだけは試合はしてはいけない。次に向かって希望を持てるような戦い、結果にしないといけない大会だと思っている。そこの継続性は求めていくべきだと考えている」。カナダ戦はその目標につなげるための機会。柴崎岳は自身の立場に固執することなく、それでも大きなものを背負いながら、W杯前最後の一戦に臨もうとしている。

(取材・文 竹内達也)
★日本代表など参加32チームの最新情報をチェック!!
2022W杯カタール大会特集ページ
★全64試合の日程&テレビ放送をチェック!!
2022W杯カタール大会日程&TV放送

TOP