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森保監督が語った2026年W杯への強化プラン「ゆるい空気、ぬるい空気にならないように」カタール以前とどう変わる?

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オンライン取材に応じた日本代表森保一監督

 日本代表森保一監督が8日、欧州視察先で報道陣のオンライン取材に応じた。カタールW杯ベスト16を経て、史上初のW杯後続投が決定。3月には2026年の北中米W杯に向けたチームの発足を控える中、注目が集まる初陣のメンバー選考をはじめ、今後の強化プランの一端を明かした。

 第二次森保ジャパンは3月下旬、東京と大阪で行われる国際親善試合で初陣を迎える。すでにコロンビア代表との対戦(28日・ヨドコウ)が決まった一方、24日の国立競技場での対戦相手は未定だが、宮本恒靖専務理事が「自分が選手だったらいい相手だと思う」という強豪国とのビッグマッチが見込まれている。

 そうした中、森保監督は1月28日からカタールW杯後初の欧州視察をスタート。今月中旬までと短期間のため、JFAオフィスがあるドイツ周辺のみの範囲にはなっているが、カタールW杯の出場メンバーを中心に選手と面会し、W杯の振り返りや今後の方針についてディスカッションしているという。

 森保監督によると、これまでに会ったのはDF吉田麻也(シャルケ)、MF原口元気、MF遠藤航、DF伊藤洋輝(以上シュツットガルト)、DF長谷部誠とMF鎌田大地(フランクフルト)、FW浅野拓磨(ボーフム)、MF田中碧(デュッセルドルフ)に加え、地理的に立ち寄ったGK川島永嗣とMF鈴木唯人(ストラスブール)の10人。その他、面会はできなかったものの、MF伊東純也(スタッド・ランス)やDF板倉滉(ボルシアMG)の試合を視察してきたようだ。

 選手たちとは「サッカー談義をしている中で、質問を投げかけてW杯の振り返りをしてもらい、同時に2026年のW杯に向けてどういうサッカーを日本が目指していけば勝てるのかということを質問させてもらっている」と明かした森保監督。するとどの選手からも、おおむね一致した見解が返ってきたという。

「振り返りとして総じて言っているのは、ドイツ戦、スペイン戦、コスタリカ戦、クロアチア戦と対戦相手によって戦い方が変わる中、攻勢に出るのか、ある程度受けるのかも含めて、いろんな戦いができたほうがいいということ。ドイツ戦、スペイン戦などでは試合中にシステムが変わったが、オプションを増やす、強化していくということを言っている選手がほとんどだった」(森保監督)

 その見解は「私自身も思っているところで、選手自身も同じような受け取り方をしてくれているなと思っている」といい、さらに選手からは「チームということももちろんだけど、個の部分ももっと上げていかないといけない。そのためには日常の所属クラブでどれだけ個の能力を上げていけるかを考えてトライしていかないといけない」という向上心あふれる言葉も聞かれたようだ。

 もっとも日本代表ではカタールW杯を半年後に控えた6月シリーズ以降、若手選手を中心に細部のコンセプトを詰めるような要求がコーチングスタッフに強まり、森保ジャパンのチームづくりに変化が起きたことも記憶に新しい。これから始まる第二次体制では、そうした反省点も活かしていけるかが問われるだろう。

 森保監督は「前回の活動の序盤はわれわれが何をやるかにフォーカスしてきたが、対戦相手の情報を伝えた上で自分たちがどうするかという面がちょっと薄かった部分がある。W杯に近づくにつれて、われわれがやることのベース1と、相手との噛み合わせの中で何をやるかのベース2を選手たちに伝えながらということで、より戦い方が明確になり、迷いなくプレーできることにつながっているという反応は見させてもらった」と当時を振り返りつつ、今後もそうした取り組みを続けていく姿勢を示唆した。

「選手たちがピッチに立った時のためにチーム戦術、個々の役割というベースを伝えながら、W杯でも状況によって時間帯によってどういう戦いをするかのオプション、プランというものをより持ちながら戦いに臨むことは活かしてきた。これからはさらにオプションと質を上げていかないといけない。全てが全て決めつけたことをやるだけでなく、ゲームプランのベースがあった上で選手たちが臨機応変に判断してもらえるように。そこはバランスを見て、選手たちが思い切りプレーできるようにしていきたい」(森保監督)。臨機応変さと明確なコンセプト。これらの両立ができるかどうかが、当面のチームづくりを見ていく上での大きなテーマとなりそうだ。

 また代表チームを作っていく上で欠かせないのは選手選考だ。森保監督は3月の活動について「まずはW杯で経験した選手たちを中心に、新戦力もたくさんリストアップできると思う。W杯メンバーには選ぶことのできなかった選手の中にも、入ってきてもおかしくない選手がたくさんいた。ベースはW杯の選手になるかもしれないが、より幅広く選手たちを見て、メンバー編成していきたい」と述べ、カタールW杯メンバーを土台に戦っていく意向を示している。

 2018年9月の第一次体制発足時は、ロシアW杯直後だったこともあり、DF長友佑都やDF吉田麻也をはじめとした中心メンバーの大半は招集外。MF南野拓実、MF堂安律、DF冨安健洋といったのちの中心メンバーを抜擢していた。しかし、今回はカタールW杯から3か月以上空くこともあり、異なる選考方針を敷くことになるようだ。

「ロシアW杯に出ていたメンバーを見てみると、W杯を何度か経験している選手が多い中での新たなスタートだったが、今回の26人中19人が初出場だった。新たなスタートであっても違いがある」(森保監督)

 そう述べた一方で、森保監督は「同じところもある」と話を続けた。「次のW杯を見据えて、その時々の目の前の活動でベストなメンバー編成をしながら積み上げていく。アジア杯という大きな大会に向けて、目の前の活動でベストな招集をしていくということで考えていきたい」と来年1月に開催がずれ込んだアジア杯を意識しつつ、段階的に世代交代をしていく構えだ。

 第一次体制の発足時は“1チーム2カテゴリ”をテーマに東京五輪世代も兼任していた森保監督だが、今回はA代表専任。W杯を見据えたチームづくりにより多くのリソースをかけられるようになる一方で、選手選考という点では難しさが出てくることも懸念される。

 それでも森保監督は「スカウティングの幅はこれまでどおり幅広く見ながら、選手の招集につなげていく。情報は広くとりながら、その時々のベストなメンバー編成をしていくことに変わりはない」と断言する。

「これまでの1チーム2カテゴリとは、手元に置いてどれだけ見られるかという点で変わると思うが、スカウティングは海外にもたくさんの選手が出ているし、国内の可能性がある選手も常に探りながら見ていきたい。代表でも大岩監督、冨樫監督、森山監督などいろんな方々に情報をいただきながら見ていきたいし、Jリーグでも可能性のある日本の宝となる選手がいっぱいいる。常に追って見ていきたい」と抜擢に意欲を見せた。

 森保監督は世代交代の方向性について「これまでのコアメンバーが実際に変わっていくかもしれないし、変わらないかもしれない。選手たちが所属クラブでパフォーマンスを示している中、選手たちが掴み取っていくということで形が変わっていくのか、それとも継続していくかというところだと思う」と選手の奮起に期待。「総合的に見ることで全てがフラット、ニュートラルではないかもしれないが、常に競争の中でチーム編成をできるようにということをしていきたい」と競争の活性化を求めた。

 また自身の目線も注意深く律していく構えだ。「注意しなければいけないところは、常に発見、発掘はあるということ。広く見てより高い頂点を作っていく、その時々のベストなチーム編成をするということを考えてきた中、自分自身が凝り固まったチーム編成をしないということ。選手たちも覚悟はしていると思うが、常に競争の中で代表は選ばれていくんだということで、馴れ合いにならないよう、ゆるい空気、ぬるい空気にならないようにしていかなければならない。W杯で超えられなかった悔しさを持って、最高の景色を見ながら、新しい景色を見ていくということを厳しさを持ってやれるようにしなければいけないと思っている」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)

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