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U-18世代のエース候補FW貴田遼河が強い気持ち表現して2発。支えてくれた人たちのためにも、23年は「主役の年」に

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3本目19分、U-18日本代表候補FW貴田遼河(名古屋U-18)がヘディングシュートを決め、勝ち越し点

[3.3 練習試合 U-18日本代表候補 3-2 早稲田大JFA夢フィールド]

 世代のエース候補が2得点だ。U-18日本代表候補FW貴田遼河(名古屋U-18)は0-1の2本目24分から出場すると、その4分後に同点ゴール。GK小林将天(FC東京U-18)からのロングフィードで右中間へ抜け出すと、一気に仕掛けて右足を振り抜く。DFに寄せられていたものの、正確なシュートをゴールネットへ沈めた。

 今回のU-18日本代表候補の活動は、2年後のU-20ワールドカップへ向けて本格始動となる合宿だ。2日前の初陣で流通経済大に勝利したが、自身は無得点に終わっていた。貴田は逸材ストライカーとして早くから注目を集め、高校1年時には年上のU-17日本代表候補合宿も経験。同世代の代表チームでは各大会で10番をつけるなど、世代を引っ張る存在にとって、悔しい初戦となっていた。

「凄い悔しい気持ちで、今日の試合までずっとモヤモヤした気持ちがあって。本当に強いエネルギーと強い気持ちを持ってこの試合に挑みました」。その思いをぶつけるゴール。「打つ瞬間も色々な思いがあって、決めなきゃな、という不安もあったんですけれども、自分を信じて出してくれたボールだったので、絶対に決めなきゃ、という思いを持って、あとは意外と打ったら簡単に入ったなと思っています」

 噛みしめるようにゴールを喜んだ10番。これで気持ちが軽くなったところもあったか、貴田は躍動する。早稲田大は先発メンバーが退いていたが、前線で余裕のあるボールキープを見せるなど攻撃の中心に。3本目4分にはショートカウンターから右足シュートを打ち切り、直後にはMF林奏太朗(鳥栖U-18)から送られた対角のクロスボールを右足ダイレクトでゴールネットに沈めた。

 これは惜しくもオフサイドとなったが、貴田は19分に再び決める。クリアボールを収めて左サイドへ展開。ドリブルで一気に前進したMF岡崎寅太郎(川崎FU-18)からのパスを中央で受けると、今度は丁寧に角度をつけたパスを右サイドのMF永田滉太朗(横浜FCユース)へ送る。そして、ゴール前に走り込むと、永田のクロスをヘディングシュート。クロスバーを叩いたボールはゴールラインを越えたという判定で2点目となった。

「自分がすべきことは、一番は点を取ることだと思うんですけれども、他のところでボールキープするところやスルーパスも自分の武器でやっているんで、そこを最大限発揮するというところを意識してやっていました。(2点目については、)自分の得点を決めるところと、ボールキープも自分の武器なので、そこが2つ合わさって、自分の良いゴールでした。ああいうゴールをもっと増やしていかないいけない、と感じています」

 直後にはDF2、3人に囲まれた状況でボールキープ。だが、鮮やかな身のこなしで前を向くと、一気に複数のDFを振り切って右足を振り抜く。抜群の動きを見せた貴田は32分にも右タッチライン際で巧みにボールを収めて3点目の起点に。この後、GKとの1対1で決められず課題も残ったが、チームを勝たせる活躍だった。

 自分が主役になる年に、という決意を持っている。昨年は名古屋U-18の10番を背負い、7月の天皇杯でトップチームデビュー。U-17日本代表でも勝利に貢献したが、怪我や体調不良もあり、プレミアリーグWESTで4ゴールに終わるなど悔しい一年だった。その中でオフ・ザ・ボールの動きや体幹などの課題と向き合ってトレーニング。「(父親をはじめ)自分が苦しんだ分、支えてくれた人も多かったので、今年は絶対に自分が主役の年にするというか、そういう思いを持って今シーズンに入っています」

 今年の目標はU-18チームでゴールを量産し、トップチームでもゴールを決めることだ。「まず一番はJリーグで点を取るというところを目標に立てていて、この年代でジュビロの後藤(啓介)だったり、Jリーグで点を取って凄く刺激をもらっていますし、『本来、そこにいるべき人間は自分だと思っている』ので、まずJリーグを目標にするということと、ユースの結果イコールトップへの道だと思うので、そこはまずはユースで結果を残すこと。プレミアで得点王を狙っていきたいと思っています」と力を込めた。

 J2開幕戦で2ゴールを決めた磐田の17歳FW後藤啓介とは連絡を取り合っているという。「『たまたまだ』とか言っていたんですけれども、多分本当は凄く嬉しがっているんで、自分も早く追いついてやろうかなと思っています」。トップチームでの活躍ももちろんだが、U-18世代のレベルをライバルたちとともに上げて、「世界で勝つチームを作り上げる」こと、「その中心選手になる」ことも目指していく。

「11月にクロアチア遠征に行かせてもらって、(国際大会で優勝し、)自分たちは世界で戦えるなと実感したし、もっと世界で戦いたいという気持ちも増しました。結果を残して次選ばれるということと、チームとしてはさらなるレベルアップをしてまた集まれるということをやっていきたい。たくさんの人が自分に期待してくれているという実感はあるし、だからこそ、自分がこの世代のエースとして結果を残していかないといけないな、という気持ちも増して来ているので、あとは仲間が自分を信じて出してくれているんで、決めるところだけを考えています」。謙虚な口調で語った決意。日常から一つ一つ課題をクリアし、目標に近づく。

2本目28分、右足で1点目

拳を握りしめ、噛みしめるようにゴールを喜んだ

(取材・文 吉田太郎)

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