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先発5人変更で前半苦戦も…U-20日本代表は好機逃さず連勝成功、アジアの舞台で培われる“焦らずに勝ち切る強さ”

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U-20日本代表が連勝

 AFC U20アジアカップ、D組第2節・U-20キルギス代表戦に臨んだU-20日本代表は先発メンバーの約半数を入れ替えていた。

 初戦でU-20中国代表に2-1と逆転してからのハーフターンオーバーは、ちょうどカタールW杯における日本代表と同じような戦略だ。狙いも基本的には同じで、勝負になる第3戦への余力を残しつつ、グループステージを抜けた後の最初の試合に全力を出し切れるように、損耗をマネジメントすることである。

 ただ、まさにA代表にとってすらそうであったように、ややリスキーな戦略である。半数を入れ替えるということは、大会初先発が半数になるということ。「まずは普通に試合へ入れるかどうか」(冨樫剛一監督)が一つのテーマとなったが、やはり難しい部分もあったようだ。

「最初はナーバスだった。緊張し過ぎていた」

 苦笑交じりにそう振り返ったのはDF高橋仁胡(バルセロナ)。いきなり普段の彼では考えられないようなミスも飛び出して窮地を招くなど、なかなかリズムに乗れない。

 また同じく初先発だったDF菊地脩太(清水エスパルス)も「最初はどうも慣れなかった」と言うように、芝生の感覚や観客の雰囲気も含めて、「(慣れるまで)時間が掛かってしまった」(菊地)と言う。

 相手の戦い方が事前の想定とやや異なる形だったこともあり、連係面でもやや混乱が見られた。このあたりはトレーニング時間が少なく、一緒に真剣勝負を戦った機会にも乏しい代表チームでは宿命のようなものだが、中国との第1戦がそうであったように、修正はハーフタイムを待たなければいけなかった。

 日本がボールを持つ時間は長いものの、相手のハードなディフェンスからの速攻を受けるシーンも目立ち、「リスク管理しながら攻める難しさ」(MF佐野航大)を感じる内容となった。このあたりの構図もコスタリカ戦と似たものがあったかもしれない。

 ただ、決定的な違いは、最初にゴールネットを揺らしたのは日本だったということ。理想論で言えば、「前半の早い時間帯に決めてしまえれば良かった」(MF松木玖生=FC東京)のも確かだが、そううまくいかないのがサッカーというスポーツでもある。現実問題として、「(DF)5人で守ってくる相手に攻めるのは簡単じゃない」(髙橋)のである。

 最大の収穫は、そうした状況が続く中でも「焦らずに試合を運ぶことが大事」(松木)、「90分を終えたときに勝っていることを目指して試合をデザインする」(冨樫監督)ことができていたこと。中国戦では先制点を奪われる苦境から、そしてこのキルギス戦でも思うようにボールを動かせない、チャンスを作れない状況から徐々に持ち直して勝ち切ったことだろう。

「ここは最終予選。どのチームであっても気持ち良くサッカーをさせてはもらえない」(冨樫監督)

 その中で2試合ともに交代で出場した選手たちが仕事をしているのも好材料だ。「そこが日本の強みだと思っている」という指揮官によって投入される選手たちが試合の流れを引き寄せ、決定的な仕事をこなしているのは2試合を通じて起きていることで、偶然ではない。

 2連勝で迎える最終戦。まだ突破自体も決まったわけではないが、「23人全員を信頼している」と語る冨樫監督の選択肢は想像が付く。世界切符を懸けての決戦となる準々決勝を見据えながら、最善の準備を進めていく。

(取材・文 川端暁彦)
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